第百四十話 エドソン思い詰める?

 正直言ってやることは山積みだ。魔導列車の件もあるしね。だが、そっちの術式設定もアレクトにある程度任せることにした。


 悲鳴を上げていたが、そろそろアレクトにもこれぐらいの術式は組み込める頃だろう。勿論私のサポートは必要だろうがベースは任せることにしている。


 車体はベンツがしっかり現場監督をこなしてくれている。作業員の配置の振り分けはブタンが的確にやってくれているから問題ないか。

 

 ロールスには魔装具の面で世話になっている。プジョー男爵との取り引きも本格化するからだ。


 これらは午前中にメイと見に行って問題ないことを確認した。


 そして私は午後から孤児院に行くことを決める。


「アレクト、後は頼んだぞ」

「ふぁぁあ~い――」


 意識があるのかないのか、中々微妙な感じだな。一応作業は続けているようだが。


「ブラ。アレクトをしっかり見ていてくれ。電撃棒を置いておくから、あんまりサボるようならその電撃で」

「やります! やりますよ! 何密かに怖いことやってるのですかぁ~!」


 ガバっと起き上がり、泣きそうな顔で文句を言ってきた。私とメイがいないからな。鬼のいぬまにということになりかねない。


「御主人様はあぁいいましたが、本気ではないので。後、適度に休憩も紅茶やお菓子は――皆様の分も用意してありますので」

「は、はい! メイさんいつもありがとうございます!」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」


 みんなのお礼を背に受けて我々がギルドを出た。

 メイがなにかしてると思ったがお菓子をつくっていたんだな。


「メイはよく気が利くね」

「御主人様にそう言って頂けるとメイド冥利につきます」


 筈んだ声でメイが言った。最近はより感情表現が豊かになってきた気がするね。人里に出てきて様々な人と話すようになったことがよかったのかもしれない。


「しかしドイルの動きは気になりますね」

「確かにな……それに気になる点はまだある。イフリートが顕現することに関わった悪魔の存在――そもそも私はこの短期間で悪魔化した人間を三人も見ている。一人は未遂ですんだが、こんなにも悪魔化すること自体が異常とも言えるだろう」


 あれから三百年経っていることで世の中に何らかの変化が現れているという大局的な見方もできなくはないが、現状の世の中の流れを見る限りその可能性は低いと思う。


 そうなった場合、残る可能性は人工的な物――嫌な予感がする。あまり考えたくはないことだがな。


 だがそんなはずはない。奴はもうこの世にいないはずなのだからな――


「どうしましたか御主人様?」

「え? 何がだい?」

「……今、ものすごく怖い顔をしておりました」

「そ、そうだったか。はは、最近ちょっと忙しかったしドイルのこともあるからね。ちょっと深刻に考えすぎたかも」

「……もし、何かお悩みごとがありましたら私が聞きますよ」


 やれやれ、メイに心配されてしまったか。私もまだまだだな。

 

 ……メイは一番最初に作ったアンドメイドだが、それでも知らないことだ。寧ろ知らなくてもいいことか。


「大丈夫だよ。それより、孤児院に急ごうメイ」

「あ、はい! 御主人様」


 そして私はメイの手を取って孤児院に急いだ。






◇◆◇

side???


 ふふふ、僕が用意した悪魔が倒されたというから、様子を見に来てみれば、面白い物が見れたね。


 まさか、ここで彼が見れるなんて。忘れていないよエドソン。それにしても、あのメイド――君が作ったのかな?


 だとしたら素晴らしいよ。やっぱり君も本質的には僕と一緒なんだね。ずっとわかっていた。君がいくら否定しようが、僕らは同じ研究者。


 僕らの行く道は一見違えているようだけど、いずれは交差して求め合う。そういうふうに世の中は出来ているのさ。

 

 だってそうだろう? 君は僕が求めている物を知れば、必ず僕自身を求めるようになる。君はもう僕を無視できなくなる。


 だけど、それはまだ先の話さ。今はまだ君の前に姿は見せないよ。


 さて、今のうちに駒に会いに行っておこうかな。僕の忠実な信徒にね、ふふふ――






◇◆◇

sideドルド


「あんたが直接うちにやってくるなんて珍しいな。それで今日は何のようだ?」

「何、大したことないさ。裏ギルドの幹部に頼む程のことでもないかもしれないが、一つ暴れて欲しいのさ。派手にな」

「ほう? 暴れるかそれだけでいいのか? 前みたいに盗賊に襲撃させた振りして殺すみたいなことも出来るんだぜ?」

「あぁ、あの時は世話になったな。おかげであれから更にうちの商売は上手くいってるさ」

「だが、残されたガキが回ってこなかったのが惜しかったな。母親もまだ金になる筈だったのによ」

「……チッ、あれはフレンズが余計な真似をしたからだ。母親にジャニスとかいうのを紹介した上、その母親にも仕事まで紹介しやがったのさ。だから私は奴が気に入らないんだ偽善者め!」

「そんなに言うならフレンズもついでにやってやろうか? 貰えるもんさえ貰えればうちは何でもやるぜ?」

「いや、それはまだいい。いずれは頼むかもだけどな。とにかく先ずは魔導ギルドだ。ここをめちゃめちゃにしてくれ!」

「へいへい、なら報酬の話に入るか――」


 チッ、足元見てきおって。だが、これで奴らに目にもの見せてやる!


作者より

本日より本作のコミカライズ版7話がBookLiveにて先行配信されていますのでどうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m

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