第百三十八話 ドイルの屋敷に乗り込む
私はメイを連れてスロウが向かったというドイルの屋敷へ行った。屋敷の門の前にはしっかり門番が立っている。
「あん? 何だ坊主? ここはドイル商会会長ムーラン・ドイル様の屋敷だぞ?」
「そんなことは知っている。ここに一人、女が来ただろう? ぽやんとした抜けてそうな女だ」
「うん? あぁギルドの受付嬢やってるって女か。へへ、来たぜついさっきな」
「きっとドイル様と今頃いいことしてんだろうな。羨ましいぜ」
私が聞くと門番の二人があっさりと答えてくれた。場合によっては自白用魔導具も必要かと思ったがペラペラと迂闊な連中だな。
「それで、餓鬼がメイドなんてつれて何のようだよ?」
「私達はスロウの知り合いだ。至急な用事があるんだ。ここを通らせてもらおう」
「おっと、何いってんだお前? 通すわけ無いだろう?」
私が門を抜けようとすると門番に止められた。ま、予想はしていたが。
「ま、とは言えだ。へへ、そっちのいかすメイドだけは通してやってもいいぜ?」
「あんた随分とエロい体してるよなぁ。俺らもドイル様にやられる受付嬢のことを考えたらムラムラしてきっちまってよぉ」
「ちょっとこっち来て俺らの相手してくれや」
すると門番の二人が下卑た顔でメイに手を伸ばした。
うむ。これは想定外だな。まさかこの状況でメイに手を出そうとするとは。もっとも。
「グェっ!」
「ヒギィ!」
手を伸ばそうとしたバカどものはあっさりメイに返り討ちにあった。どちらも一撃で倒したメイがパンパンッと両手の埃を払う。
「お掃除完了ですご主人さま」
「あぁ、そうだね。じゃあ行こうか」
おかげで正当防衛成立と。さてと門の中に入るがなるほど、庭はそれなりに広いな。
そして進もうとする私達の前に立ちはだかるは黒服姿の男たち。
「何だ? 子どもとメイドだと?」
「門番はどうした!」
「門の二人ならメイに手を出そうとしたから眠ってもらっているよ。全くこの屋敷の主人は一体どんな教育をしているのか。いきなり人のメイドに手を出すのだからな」
両腕を広げて呆れてみせる。まぁ挑発みたいなもんだが。
「だから勝手にズカズカ入ってきたってのかふざけやがって!」
「手を出されたのから話ぐらいつけさせてもらわないとね」
「なめんなメイドだけ置いてとっとと消えやがれ!」
消えろといいながら全員が武器を片手に襲ってきた。全く仕方のない連中だ。
まぁこれで再び正当防衛は成立だけどね。私はすぐに用意しておいた腰の
もっとも弾丸の殺傷力は大分抑えているから私の銃にやられたものは気を失うに留まっているがね。
そしてメイはメイで近づいてきた黒服をあっさりと蹴散らした。
さてと、このまま屋敷に向かう。扉の前にはノッカーがあった。さっきの話だとスロウはまだきたばかりなようだな。
全く方向音痴のおかげで助かったな。後はあいつを派手に呼ぶか。
私は
「く、くそ! うるさいうるさいうるさい! 何者だこの馬鹿が!」
ふむ、何者かと誰何されたので遠慮なくドアを開けて屋敷に入らせてもらった。
「久しぶりだなドイル「
「な! き、貴様あの魔道具師の餓鬼! それにエロいメイド!」
「御主人様。大変です化物がいます。駆除しますか?」
「そうだねメイ。それもいいかもだけど、さて、おいドイル、この屋敷にスロウがやってきてると思うが、どこにいる?」
私がメイの言うところの化け物に問いかけるとぬぐぐ、とドイルが歯牙を噛み締めた。
「知るか! おい! 出会え出会え! 誰かいないのか!」
「屋敷には誰もいないだろう。どうせスロウのことがあったから外に集中させていたんだろうが、あの黒服連中なら全員仲良くおねんね中だぞ?」
「な、貴様ら自分で何してるのかわかってるのか! 不法侵入に傷害だぞ!」
「やれやれ――」
私は
「言っておくが先にメイに手を出したのはあいつらだぞ。これを聞けば一目瞭然だろうがな」
「う、ぐ、またわけのわからない道具を!」
ドイルが歯をむき出しに悔しがる。わけのわからないってどこにでもありそうな簡単な魔導具なんだがな。
「あ、あの、一体何がぁ?」
「な、馬鹿出てくるな!」
おっとスロウが出てきたな。ふむ、良かったまだ無事みたいだな。
「スロウ。帰るぞ。孤児院の子どもたちも心配している」
「あれ? 君は確かぁ、え? どうして、で、でもぉ……」
「くっ、お前らいいかげんにしろよ! いいか? こいつはギルドに言われて自分の意思でここまで来たんだ! そうだろ貴様! 何とか言ってやれ!」
全く見苦しいやつだ。しかしスロウに対して恫喝まがいな言動で無理やり自分に都合の言いようなことを言わせようとしている。
「え、あ、あの、私」
「おい、わかってるんだろうな?」
「え?」
更にドイルがスロウに対して訴えかけるとスロウが顔を俯かせ、何も言わなくなってしまう。
「わ、私は、自分の意思で……」
「もしそいつが、孤児院について助けてやるとでも口にしたならそんなもの信じるだけ無駄だぞ」
「え?」
スロウが全てを語る前に私から言ってやった。孤児院は借金に苦しんでるらしいし、そうなったらこいつのやりそうなことなど私じゃなくても予想出来る。
「き、貴様何を勝手なことを! 大体孤児院のことは貴様らには関係ないだろう!」
「悪いがそうはいかんな。一応私は宿のオーナーも兼任している。その関係で孤児院の子と無関係ではないのさ」
「う、うるさい黙れ! とにかく、スロウは私に会いに来ている! これ以上お前らにどうこう言われる筋合いはない!」
「だそうだが、どうなんだスロウ?」
「えっと、えっと……」
「はっきり言ってやれスロウ! お前は今夜は私と付き合うとな!」
「はて? 何故今夜なのですか? ギルドに言われたとしても、こんな時間に連れてきて一体何をなさるつもりで?」
メイがドイルに語りかける。淡々としているが語気は厳しいものだ。
「くっ、この、貴様だって本来なら私の……」
「おい! 汚らわしい目であまりメイを見るな!」
ドイルの視線が明らかにメイの胸元に向いていた。こいつは本当にわかりやすいやつだ。
「だ、黙れ黙れ! 貴様らなどこの私にかかればどうとでもなるということを忘れるな! いますぐ冒険者ギルドのマスターを呼んだっていいんだぞ!」
アホ化こいつは? この場にあいつを呼んでどうなるというのか。まぁスロウを寄越したのは冒険者ギルドだとでも言うつもりなのかもしれないが、墓穴を掘るだけだろうに――
おしらせ
本作のコミカライズ版最新の6話がBOOKLIVEにて14日より先行配信されます。
どうぞ宜しくお願い致します!
また新作として『二度の人生をサムライとニンジャという理由で追放され殺された俺は三度転生し天職の『サムジャ』を得る~不遇職と馬鹿にされたが居合と忍法を組み合わせた全く新しいスキル『居合忍法』で向かうところ敵なし!~』という作品もこちらにて公開中です!あわせてどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m
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