6話〜それぞれの思い{改}

 その頃、ディクス村の村長の家では、数名の村の者が、ガルドの事で集まっていた。



 村長の名前はライド=クロイス、年齢は60歳。家族とメイドや執事などと暮らしている。



 そして1人の男が、


「村長!ガルドは、確かに村の為に、色々とやってくれている。だが、これ以上アイツを、この村に置いておくのは、どうかと思う」


「じゃがなぁ。ガルドの両親には恩がある」


「そうかもしれない。だがアイツは、よりにもよって、アレイス様の御子息様を死なせた」


 さらに興奮し、


「それが、どういう事か分かっているのですか!!」


 そう言われライドは、深い溜息をついた。


「……じゃがなぁ」


 そして1人の女が、


「先程ユリィナ様が、ガルドの家に入って行くのが見えました。何か甘い言葉をささやかれたのでは?ああ、何もなければいいのですが」


「ほぉ、あのガルドがのぉ。じゃがなぁ、お前たちも分かっているのではないのか。そういう事が出来る男ではないという事が」


「しかし、村長!あの男に甘すぎる。もう18なら、この村を出て行っても、問題ないはずだ!」


「そうですよねぇ。男1人、あの家に……。今は大人しくしていますが。もう揉め事をこれ以上、村に持ち込まれても困りますしね」


「分かった。じゃが少しガルドと、話をしてからにしたいと思う」


 そう言うとライドは、席を立ちガルドの家に向かった。




 その頃、ガルドは部屋で、明日の旅の準備をしていた。


 ユリィナは家内を、見て歩いていた。


 するとそこに、村長のライドが来て、ガルドは家の中に入れた。


「ガルド、申し訳ないのじゃがなぁ……」


 ライドが全て話す前に、


「村長、俺は明日、旅に出ようと思っていた。だが、その様子だと、今すぐこの村を、出た方が良さそうだな」


「旅に出るじゃと!?急にどうしたというのじゃ。やはり、村の者たちの目を気にしてなのか?」


「いや、それは違う。これは前から、思っていた事なんだ」


 そう言いながら目を細め、ガルドは一点を見つめていた。


「ガルド。それは本心なのか?そうで無いのなら……」


「これ以上、村の人たちに、迷惑をかけたくねぇ。だから、俺は今すぐにでも、ここを出て行く。それにもう、荷物の準備は出来ている」


 ガルドは、泣きたいような悔しい気持ちを、グッと堪えていた。


 ライドは思った。これ以上この村に、ガルドはいてはいけないと、


「ガルド。本当にすまない。これ以上お前が、ここにいれば、一層お前が辛くなるだけじゃな」


 そう言うと、ライドはバックの中から、お金が入った袋を取り出し、ガルドに渡した。


「ガルド。足りるとは思わんが。旅の資金に使って欲しい」


「村長!?ちょ、ちょっと待ってくれ!こんな大金……。俺には多すぎる。それに、迷惑かけたのにもらえねぇ」


 ガルドは、お金が入った袋を返そうとしたが、ライドは、受け取ろうとしなかった。


「ガルド。お前の両親に、どれだけ礼をしても、しつくせない程の恩がある。それを皆、忘れてはいないはずなのじゃがのぉ」


 少し間をおくと、


「その金は、お礼とお詫びとして、受け取って欲しいのじゃよ」


 そう言うとライドは、ガルドの家を出て行った。


 ガルドは、ライドの言葉が有り難く、そして嬉しくて、泣きそうになった。


 それから、すぐにでもここを出なければと、ガルドはユリィナに声をかけ、家の中の持っていける物と、持っていけない物の整理を始めた。

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