第334話 一方的な空中戦

 翼の生えた人型の魔物が、空から急降下してきたかと思うと、騎士の一人を槍のような物で突き、すぐさま上空へと戻って行く。

 相手が一体だけなら、注意深く見て居れば盾で防ぐなり、避けるなり出来るのだが、それを同時に複数の魔物が仕掛けて来る。

 かと思えば、別の魔物が宙に浮かんだまま炎を生み出し、それを騎士たちに向けて落としていく。

 魔法騎士隊は地上から上空に向かって魔法を放っているものの、簡単に防がれ、魔法を使えない騎士は、ただただ標的となっていた。


「これは……マーガレット! 急いで怪我人の手当を頼む!」

「悪しき者が居るから暴れたい所だけど……流石に、そうも言っていられないわね」


 目の前に大勢の怪我人が居るからか、マーガレットは戦闘スイッチを抑え込み、治癒に回ってくれるようだ。


「ジェーン。俺が上空の魔物を地面に叩き落すから、その聖剣で落ちて来た奴の止めを頼む」

「畏まりました」


 ジェーンを連れて、魔物たちの下へ進むと、


「俺は第三王女直属特別隊隊長のヘンリーだ! 今から反撃に転じる! 全員、上から落ちて来る物を避けるように!」


 大声で騎士たちに向かって叫び、剣を構える。

 そして、


「テレポート」


 適当な魔物の上に瞬間移動し、聖剣を一閃。翼を叩き斬る。

 翼を失い、落下していく魔物の背中を蹴って飛び上がると、再び剣を振るう。

 暫く魔物の翼を斬りまくっていると、魔物たちが足場にならないようにと、俺から離れて行く。

 だが、


「テレポート」


 足場が無ければ再び瞬間移動を行うだけだ。

 翼を斬り落とし、飛んでくる炎は氷魔法で相殺。地味だが、確実に魔物の数が減っていく。

 一方で、地上ではジェーンが落下した魔族に無慈悲な一撃を与え、反撃を許さない。

 暫くこれを繰り返し、


「最後の……一体っ!」


 空を飛ぶ魔物の翼を全て斬り、最後はそのまま魔物の身体に聖剣を突き刺し、地上へ。

 地面に着く直前、空中浮遊の魔法で落下のダメージを回避すると、


「主様、流石です」

「お兄さん。いつの間に、そんな戦い方を覚えたのさ。まぁそれはさておき、怪我人は全員治したよー」

「ジェーン、上から見ていたよ。マーガレットも、助かる。二人共ありがとう」


 ジェーンとマーガレットが駆け寄って来たので、感謝の言葉を伝える。

 その直後、


「ヘンリーさん! 感謝致しますの!」


 貧乳四天王の一人、コートニーが近寄って来た。

 これは、お礼にあんな事やこんな事をしてもらえるパターンだな。

 勝手にそんな事を考えて居ると、


「ヘンリーさん。お願いがありますの。王宮の中を……」

「えっ!? ちょ、ちょっと待った! 王宮の中にまで魔物が入り込んで居るのかっ!?」

「いいえ、少し違いますの。正確には……王宮の中から魔物が飛び出して来ましたの!」

「……は?」


 コートニーが意外過ぎる言葉を告げる。

 視界に映る魔物に集中し過ぎてしまい、慌てて索敵魔法を使うと、


「な……んだ、これは!? 王宮の中にとんでもなく巨大な魔力を持つ奴が居る。こいつらみたいな雑魚じゃなくて、間違いなく魔族だ。それも、かなり強い」

「雑魚……って、私たちはこの魔物に手も足も出なかった……それは良いですの。どうか、王や王妃、そして王女様を……」

「分かった。ジェーン、マーガレット。行くぞ」


 王宮の中に、凶悪な魔力を持つ何かが居る事が分かった。

 流石に、この魔力がある場所へテレポートで突撃する気になれない……それほどの魔力が溢れる場所に向かって、三人で廊下を駆けて行く。

 その間に、走りながら三人に身体強化魔法を使い、マーガレットが防御魔法を使う。


「はぁっ!」


 時折、空に居た魔物よりは強い魔物が廊下に居るが、一刀両断で進んで行き、謁見の間の前に着いた。

 一瞬、ジェーンとマーガレットと目を合わせて扉を開けると、王様や王妃様、大臣っぽい人に、近衛騎士など、謁見の間に居た人たちがことごとく倒れている。

 そして、


「来たわね。ヘンリー」

「ど……どういう事なんだ!?」


 その中で唯一立っていたのは、黒いオーラを纏うフローレンス様だった。

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