第235話 押し付けられる気持ち良い弾力

「さて、ドロシー。今日も特訓を頑張ろうか」

「はいッス! 今日こそは、師匠に胸を触られないように頑張るッス!」


 昨日は俺に胸を触られまくり、あたふたしていたドロシーだが、一晩経ってぐっすり寝たからかか、やる気に溢れている。

 うむ、この前向きなのは非常に良い事だ。

 ……昨日は調子に乗って触り過ぎたと思い、ジェーンみたいに添い寝してとは流石に言えなかったのだが、まぁ言わなくて正解だったと思っておこう。

 やり過ぎて、ドロシーがやる気を失って特訓を辞めると言い出したら、添い寝どころかこの胸が触れなくなってしまうからな。

 昨日と同じく、俺とドロシーとユーリヤの三人乗りで街道を走り、


「んんっ……」

「はぅっ……」

「し、師匠。ぁぅ……」


 昨日と同じ様にドロシーが可愛い声をあげる。

 やる気は溢れているものの、流石に一日で急激に成長する事はなく、今日も未だ一度も俺の手を防げていない。

 しかし、ドロシーの大きな胸のこの手触り……服の素材なのか、昨日と違っている。

 なんというか、昨日よりもより柔らかく感じるというか、服の生地が薄い気がするんだけど。


「ドロシー。この服って……」

「あ、えっと……師匠に触られた時の感触を、よりハッキリと感じる為に、昨日より薄い服にしてみたッス」

「それは、もっと触って欲しいって事なのか?」

「そ、そういう事じゃないッス。いや、もっと触って欲しいッスけど、べ、別に変な意味じゃ無くて、特訓って意味ッス! 早く気配を察知出来るようにする為ッス!」


 もっと沢山触って欲しくて、俺の手の感触をハッキリ感じたい。

 なるほど。ドロシーはM気質で、恥女っぽい一面があるという事か。

 やはり、夜に俺の部屋へ呼ぶべきだな。


『ヘンリーさん、どうして毎度毎度自分の都合の良いように解釈するんですかっ!』

(え? 何が? ドロシーの性癖の話だろ?)

『違いますよっ! 彼女は胸を触られたくないけれど、気配察知が早く出来るようになるため、あえて嫌な事――触られた時のダメージを大きくする事で、早く修得出来るようにと自らを戒めたんですっ!』

(ダメージを大きく……激しいのが好きって事か)

『だから、違いますってば!』


 アオイに怒られながらも、ドロシーに特訓しながら移動を続け、昼頃に立ち寄った村で食事を済ませると、


「師匠。午後からも、特訓をお願いするッス!」

「ヘンリー隊長、ちょっと待って欲しいのです。ドロシーへの特訓ですが、手本を見せて欲しいのです」

「え? プリシラ? 何を言っているッス!?」


 やる気満々のドロシーを遮るようにして、プリシラがジト目で話しかけてきた。

 やっべ……アオイに警告されていた、プリシラのフォローをすっかり忘れてたよ。


「ちょ、ちょっとプリシラ……」

「クレアは黙っているです。私はヘンリー隊長にお願いしているのです」

「そうじゃなくて……」

「さぁヘンリー隊長、手本をお願いするのです」


 止めようとするクレアを振り切り、プリシラが詰めよって来る。

 仕方が無い。ここはプリシラの言う通りにしておこう。


「わかった。じゃあ、ドロシーと全く同じ条件で、同じ事をする……で良いか?」

「構わないのです。では失礼ながら、暫く私がヘンリー隊長と同じ馬に乗るのです」

「つまり、プリシラが俺の胸を触るという事だな?」

「へ……? は、はい……なのです」


 特訓の時間が減るからか、少し不服そうにドロシーが自分の馬に乗り、代わりにプリシラが俺の馬に乗る。

 ただし、ユーリヤが俺と離れたがらないので、前からユーリヤ、俺、プリシラという順番になっているが、これくらいの違いは構わないだろう。


――むにゅぅ


 こ、これは……前にユーリヤが移動した事により、プリシラのEランクの大きな胸が背中に押し付けられているのかっ!

 ドロシーと密着すべく、俺も鎧を脱いでいた事で、こんな素晴らしい状況になるとは。

 いつも俺におんぶを強請るユーリヤも可愛いが、こういうのも悪くないな。


「よし。じゃあ、出発だ」


 いざ馬を走らせると、


――むにゅん、むにゅん、むにゅん


 俺に押し付けられたプリシラの胸が上下に揺れ、心地良い振動が背中に広がる。

 これは……イイッ! 何て素晴らしい移動時間なんだっ!

 暫く馬を走らせながら、プリシラの胸の感触を堪能していると、何かをしようとする気配が伝わってきた。

 ……これ、特訓と呼ぶには簡単過ぎるな。


――パシッ


「え? ヘンリー隊長、不正はダメなのです」

「不正って?」

「だって、ドロシーには真っ直ぐ前を向くように言っていたのです」

「いや、俺はずっと前を向いていたよ?」

「だったら、どうして私の手が止められたのです?」

「だから、気配を察したんだってば。そんなの目を瞑っていても出来るけど」

「……ほ、本当なのです?」


 プリシラが、俺ではなく周囲のドロシーやクレアに聞くと、全員俺が前を見ていたと言い、


「プリシラ。私、ヘンリー様が目を瞑ったまま、ダークエルフの動きを察知している所を見てるんだけど」

「え……ちょ、ちょっとクレア! そういう事は、もっと早く教えるのです!」

「言おうとしたら、プリシラが黙ってって言ったんでしょっ!」

「……えぇぇぇっ! じゃあ、私がヘンリー隊長の気を逸らそうと、ずっと胸を押し付けていたのも無意味なのですっ!?」


 クレアがダメ押しとも言える話を出す。

 まぁダークエルフ――カティの動きを察したのは、父さんの気配を探っていて、間違えた事故なんだけどさ。

 しかし、随分プリシラと密着していると思ったら、意図的に押し付けてくれていたのか。

 プリシラもドロシーも、ありがとうっ!

 感謝の気持ちで一杯になりながらも、「俺は無意味な事はしないぞ」とか、「こう見えて俺は紳士だから」と、プリシラに精一杯の言い訳をしておいた。

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