第219話 二人目の出禁

「じゃあ、エルフの代表者を招いて、就任パーティを開こう。エルフの村には後で俺が行くとして……先ずはノーマとメリッサだな」


 ノーマに来賓を招いてのパーティを開く旨を伝え、メリッサに料理の準備を依頼する。


「あ、あの、御主人様。いつ頃、何人くらい来られるのですか?」

「んー、訳あって、大勢招くつもりはないんだ。最低三人、多くても五人くらいじゃないかな」

「なるほど。じゃあ、私一人でも大丈夫そうですね」

「あぁ。だけど、来賓が全員エルフだから、出す料理はイロナに相談した方が良いかもな」

「え? そうなんですか!? そ、そのパーティはいつ頃開かれるんですか?」

「これからエルフの村へ話に行くんだけど、今日明日って事はないから大丈夫だ。日程が決まったら、また一緒に街へ食材を仕入れに行こう。あと、料理についてはエリザベスがサポートしてくれるはずだ」


 それからイロナとエリザベスに、メリッサのサポートをするように伝えて、再び領主代行の部屋へと戻ってきた。


「ヘンリー! パーティの件だが、可愛い女の子を連れてくるように、先方へ伝えてくれよ」

「ヘンリー君。パーティだけど、若い男性を連れてきてね。先生からの、お、ね、が、いっ!」


 エリザベスがメリッサの所へ行くため部屋を出た途端、父さんとパメラのコンビからイラっとさせられたけど、


「誰を連れて来るかは先方次第だけど、それより子育て支援施策について話をしよう」


 努めて平静を装い、二人と本来議論すべき話に持っていく。

 すると、待ってましたと言わんばかりに、二人が息を合わせて喋り出す。


「ヘンリー、待っていたぞ。その件についてはパメラさんと熱い議論を交わしてな」

「そうねー。というわけで、これを見て頂戴」

「ふっふっふ。きっとヘンリーも気にいるはずだ」


 そう言って、パメラが何かを取り出し……って、それは!


「にーに。にゃーにゃ!」

「そう。ユーリヤちゃんの言う通り、にゃーにゃ……猫耳カチューシャの茶色バージョンだよ」

「暇だったから、先生がヘンリー君の部屋を物色していたら、これと同じ黒色の物を見つけたの。だから、ヘンリー君も猫耳が好きみたいだし、お父様に茶色の猫耳を作ってもらったの」


 そう言って、猫耳カチューシャを頭に着けたパメラが両腕で胸を挟むようにして、変なポーズを作る。


「というか、勝手に俺の部屋へ入って何してんだよっ! だいたい、俺はそんな物……あ!」


 思い出したっ!

 かなり前に、猫と意思疎通出来るようにする魔法を教えてもらった時だ。

 魔術師ギルドの講師が猫耳幼女最高って叫びながら、ユーリヤに猫耳カチューシャをプレゼントしていた。

 まさか、そんな物が出てくるなんてっ!

 俺も既に忘れていたカチューシャを、ユーリヤがちゃんと持っていて、しかもこの屋敷の部屋にしまって居たとは。


「ヘンリーも気に入ったみたいだし、じゃあ、早速量産するか」


 そう言って一方的に父さんが立ち上がったので、慌てて止める。


「待った! 俺は気に入った訳じゃないぞ。ただ、そういうのもあったなって思い出していただけ……というか、そもそも人の部屋を勝手に漁るなよっ!」

「違うわ。先生は、一教師として生徒であるヘンリー君がエッチな物を持っていないか、不純異性交遊をしていないか、風紀チェックをしたのよ」

「アンタ、さっき暇だったからって、自分で言っただろうがっ!」


 後でマーガレットとクレアに言って、父さんだけではなく、パメラも三階に入れないようにしてもらおう。

 父さんは女性陣を守る為だけど、俺自身を守る為にパメラを防いだ方が良さそうだ。


「それよりも、俺から案があるんだけど……この村に学校を作ろうと思うんだが、どうだろう」

「学校? ヘンリー、どういう事だ?」

「そうよー。先生は、せっかく学校を離れてグータラ――じゃなくて、子作りに専念出来そうなのに」


 パメラ……子作りを目的にされても困るんだが。


「二人とも聞いてくれ。先ずは、この村に基礎学校を作ろうと思うんだ。父さん……基礎学校と言えば、何歳の子供が通う学校だ?」

「六歳から十二歳……な、何だと!? 学校を作れば、ユーリヤちゃんみたいに、天使のような幼女が集まってくるのか!?」

「更に言うと、この村の周辺にも学校が無いらしいから、村の外からも子供が集まってくるぞ」

「――っ! す、素晴らしいっ! ふふふ、これで幼女が、幼女が……」


 一先ず、父さんの熱意を向けられた。

 ただ俺は、子供と言っただけで、女の子とは言っていないけど。


「ヘンリー君。先生はショタじゃないから、子供に興味は無いんだけど」

「パメラ、よく考えてみてくれ。基礎学校には、授業参観に運動大会、発表会と父兄が見に来る事も多々あるだろう。そこにはイケメンの父兄も来るだろうし、諸事情で母親が居ない家庭もあったりすると思うんだが」

「――やるっ! やるわっ! 先生はこの村で基礎学校の教師をするのよっ! うへへっ、男。男よ……」


 一先ず父さんとパメラを説得したので、子育て支援施策として学校作りを進める事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る