第57話 エロエルフさん

 二人が大量に買い、店主に運んで貰ったと言う食料や衣類やらを、人目の無い時を見計らって空間収納魔法で取り込むと、ワープ・ドアでフィオンの洞窟へ。


「洞窟の中で魔法が使えない事もあって、この洞窟の攻略は長期戦になると思われる。一先ず、ここに拠点となる小屋を作ろう」

「私と貴方の愛の巣だね?」

「愛の巣……あー、うん。まぁそうなんだけど、今回は二人っきりじゃないから」


 チャンスがあれば、またアタランテと一緒にお風呂へ入りたいけれど、今回は難しいだろう。

 というか、洞窟の中ではお風呂も難しいと思うのだが。


「ねぇねぇ。今言っていた愛の巣ってどういう事? 二人っきりだと何が起こるの? ねぇ、ちょっと私も混ぜてよー」

「え? 三人では未だ早いというか、先ずはノーマルが先というか……」

「そ、そうだね。マーガレットさんの参加は出来れば控えて欲しいかな」


 何の話かも分からずにマーガレットが混ざろうとしてきたが、俺とアタランテが断ってしまったので、ちょっとへこみだした。


「あー、いいんだー。どうせ私なんて何の特徴も無いもんねー。アタランテちゃんみたいに猫耳でもないしー、エルフの子みたいにロリでもないしー。あーあー、私は仲間外れなんだー」


 マーガレット……ちょっと面倒臭いんだけど。

 だけど、これから洞窟を攻略しようというのに、メンバーがバラバラでは不味い。

 俺は小さく溜息を吐くと、マーガレットに耳打ちする。


「あのな。今から俺が魔法で小屋を作るんだけど、以前そこでアタランテと……その、いろいろあったんだよ。察してくれ」

「なるほどねー。じゃあ、今回は私も混ぜてねー」

「いやそこは普通、引く所じゃないのか!?」

「なんで? 男と女が一緒に居るんだから、いろいろ起こって当たり前でしょ? あ、お兄さんが希望するなら妊娠の加護をあげるから、遠慮なく言ってねー」


 混ざりたがってきたー!

 というか、妊娠の加護とか怖いよ! まだ学生だよ! 責任とか取れないよ!

 いや、そもそも妊娠するような事なんてしないけどさ。


『ヘタレですもんね』

(ヘタレじゃないっての! 俺は紳士なだけなんだ。そういう事は、ちゃんと恋人同士になってからするべきなんだ)

『胸を触ったり、パンツは覗いたりするのにですか?』


「さぁ、小屋を作るぞ。希望があったら言ってくれ。出来る限り応じるから」


『逃げたっ! 胸を触った事を指摘したら、話を一方的に終わらせるんなんて」


「ふむ。個室か。確かに、洞窟内で一緒に居るのだから、休憩時くらいはプライベートな空間が欲しいよな。分かった。他には?」

「ほぅ。大きなお風呂か。了解した。もう無いか?」


『えーん。ヘンリーさんが苛めるー』

(……はいはい。俺が悪かったかよ。とりあえず、小屋を作るから魔法を頼むよ)

『はーい』


 一先ずアオイを宥め、前と同じ要領でマテリアライズの魔法を使い、少し広めの小屋を作成した。


「いやー、お兄さん。凄いんだねー。流石、何人も女の子をはべらせているだけはあるねー」

「まぁな……って、ちょっと待った。何だよ、女の子をはべらせているって」

「え? お兄さんはハーレムを作ろうとしているんじゃないの?」

「違うよっ! 魔王や魔族を倒そうとしているんだよっ!」


 マーガレットに褒められたかと思ったら、ハーレムって。

 漢のロマンではあるものの、そんなの実現出来ないっての。


『実現してると思うんですが……』


 何をだよっ! アオイにツッコミつつ、今度は空間収納魔法でアタランテたちが買った木箱を取り出す。


「二人とも、四部屋作ったから好きな場所を選んでおいて。あと買った物のうち、持って行く分だけ別に分けておいて。洞窟の中では空間収納魔法が使えないから、自分たちで運ばないといけないからな」

「了解だよ。貴方は、どうするの?」

「一先ず拠点作りが終わったからルミを迎えに行ってくる。エルフが居ないと聖銀が採れないらしいしさ」

「……まぁ仕方ないね。いってらっしゃい」


 一人ファッションショーを始め出したマーガレットはさておき、アタランテに見送られながら、テレポートの魔法でエルフの村へ。

 ……って、来たけどルミの家ってどこなんだ? 長老サロモンの家に行けば良いのだろうか。

 初めてこの村へ来た時は、見張りみたいな人が居たはずだけど……っと、居たな。あの女性に聞いてみようか。


「すみません。ルミ……ちゃん、というかルミ=リーカネンの家って、どちらなんでしょうか」

「あら。失礼ですが、どちら様でしょうか? それに、どうやって村の中へ?」

「失礼しました。俺はヘンリー=フォーサイスという者で、ルミちゃんに洞窟を案内してもらう約束をしていたんですが……」

「あぁ! 貴方が伝説の魔術士様なんですね!? 話はルミから聞いています。どうぞ、こちらへ」

「ちょっと、伝説の魔術士って何ですか!?」

「え? ロストマジック――時空魔法を使われるんですよね? しかも高等魔法である召喚魔法まで」


 いや、確かにアオイの力で時空魔法は使えるけれど、伝説の魔術士って。

 流石にその呼ばれ方は恥ずかしいのだが。

 しかし俺たち人間社会と違い、エルフの村では召喚魔法が高く評価されているらしい。

 高等魔法かー。こっちは自分の力で使えるから、ちょっと嬉しいかも。

 しかも、この女性は二十代前半といった感じで、出る所がしっかり出ているのに、身体は細い。

 胸を覆う布と、ミニスカートみたいに短い腰布だけで、お腹や太ももを露出しまくった……正直エロエルフさんなのだが、エルフの女性はみんなこういう格好なのだろうか。


『エルフは主に精霊魔法を使うから、服の面積が小さいんじゃないですか?』

(なるほど。うちの学校の実習服の話は、エルフでも同じなのか)

『まぁ精霊を介さない私には関係の無い話ですが』

(正直、それは本当に助かる。だって俺、あんな格好したくないし)


 エルフのお姉さんの太ももを見ながらついて行くと、小さな木の家に案内された。


「どうぞ。ルミはこちらに居ますよ」

「ありがとうございます」

「ルミー。お客様よー」


 このお姉さんはルミと知り合いだったらしく、扉を開け、ルミを呼び出してくれた。


「はーい。どなたーって、ママ! お兄ちゃんを連れてくるなら、先に言ってよー! もぉっ、髪の毛乱れてるしー」

「あらあら、ごめんなさいねー」


 いや、洞窟探索へ行くのに髪の毛とか関係ないと思うのだが……


「……って、ママ!? 今、ママって言った!?」

「うん。お兄ちゃんの隣に居るのはルミのママだけど?」

「な、なんだってー!」


 予想外のルミの言葉に、思わず硬直してしまった。

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