《 犯人像 》 1

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 八月八日 午前八時


 一ヶ月に及ぶ連続事件に、マスコミは連日、テレビのワイドショーで色々な角度から報道を続けていた。二日後には、相模原で起きた事件の一週間を迎えるため、少し加熱気味の報道が続いている。そんな中、犯人像を報道している番組があった。



 テレビ関東

「Wide・SHOWタイム」


 司会者

「この一ヶ月に四件の連続射殺事件が起きました。いままでお伝えしてきましたが、あと二日で、相模原で起きた事件から一週間になります。そこで緊急事態を避けるために、専門家にお越しいただいて、徹底検証を行います。」


 つづけて

「この事件の犯人像を犯罪分析の専門家である芦但大学犯罪心理学科・赤井教授に、お越しいただきました。早速、お聞きします。」


 司会者は

「犯人像の分析は、いかがでしょうか?」


 赤井教授は、こう答えた

「そうですね。この一ヶ月の各種報道と警察への取材を通して感じたことは、犯人は、男性ですね。」


「男性ですか?」

「そうです男性です。年齢は、35歳~45歳位までの独身男性です。」


「仕事は、どんな感じですか?」

「そうですね。いつも自動車を運転している人だと思われます。バスの運転手・トラックの運転手・タクシーの運転手・営業職で外回りを自動車でしている人・フリーランスの人でも仕事で車を使用する人もいますね。だから、仕事というか、自動車を頻繁に使う人だと思います。」


 司会者は、つづけて

「犯人の特徴というか性格は、どんな風に考えていますか?」


 赤井教授は、こう答えた

「性格については、正義感が強いというのと、曲がったことが嫌い。そして、人を許さない性格だと考えられます。」


「人を許さないとは。」

「自分に厳しいから、人にも同じ考えを要求してしまう。だから、人を許さない。そして今回は、交通ルールに対して厳しさが出たということだと思っています。」


「自分の意見を通すために、この事件が起きたということですか?」

「まぁ、それもあるかもしれませんが、そんな単純な行動ではないと思います。この犯人が起こした行動は、並大抵の技術ではなく、科学・工学・理工・光学等の専門分野が、多数使われています。ですので、単純な事件と考えるのは、違うと思っています。」


「それは、どういう意味ですか?」

「ものすごく、頭の切れる、そして知識が豊富です。言い方は、当てはまらないかもしれませんが。努力家で、相当量の勉学に通している人物だと考えられます。」


「大学の教授みたいに、ですか?」

「いえ、大学の教授っていうのは、ある一定の知識をより掘り下げて追及しながら、発表をしたり、後身の指導に当たっていますが。この犯人は、いくつもの知識を持ち、この犯行を成し遂げています。」


「その中には、銃の取扱いも含んでいますか?」

「銃の件もそうですが、自動車の改造も、ですね。一番注目をしなければならないことは、被害者の方と犯人が、お互いに動いているにもかかわらず、命中させていることです。」


「そうですね。」

「この命中させる行為は、ものすごく難しいんです。」


「そうなんですか?」

「前から歩いてきて、犯人も相手の前から歩いてくれば、だんだん近くになるし、同じ向きに向き合っていますから、一方向になります。狙う相手が、だんだん大きくなるので狙いやすくなります。」


「そうですね。」

「でも今回の犯行は、真向いで起きている訳ではなく、犯人は動いている自動車から、歩いてくる被害者、自転車に乗っている被害者とスピードも違います。その双方に命中させる行為は、いろいろな知識をもっていても簡単ではないと考えられます。それを成し遂げています。」


「具体的には、どんな人物なんでしょうね。」

と、司会者は、赤井教授に聞いた。


「そうですね。どんな人物なのかと考えていたのですが。都市部には住んでいない人物かと思われます。自動車の改造、銃の改造、そして銃の試射。自動車に関しても、相当の改造を含め、銃を搭載するとなると、作業の音も、大きくなる可能性があると考えられます。倉庫を持っているか、自宅の敷地の裏側が山とか、音が漏れても怪しまれない。そうですね、工場を持っていれば。24時間稼働していても、周辺は不思議にならないでしょうね。」

つづけて

「それから、自分以外の者が、作業場に入れないようにしている可能性が高いとしたら、都市部に工場があった場合、少し難しいと思ってしまいます。不審がる近隣住民も出てきてしまう。だから田舎に昔から住んでいて、親が健在で一緒に住んでいる可能性が高いと考えられます。」


「親と同居していると?」

「そうですね。田舎というのは隣組が、いまでもあります。単純に引っ越しをした新参者であった場合。隣近所が、何をしているのだろう。と、詮索したがるのが常です。でも、親が昔から住んでいれば、そのような詮索がありません。だから、音が少し大きくても怪しまれる可能性は低いと考えられます。」


「そうなると、都市部ではなく、昔から同じ場所に住んでいて、親とも同居している人物となるということですね。」

 と、司会者は、まとめてみた。



 司会者は、つづいて疑問を、聞いた

「ところで、男性という説はどこから出てきたんですか?」


 赤井教授は、こう答えた

「男性という説については、実は、警察発表もありません。」

「そうですね。男性か女性かの発表は聞いていませんね。」

「取材でも、明確な返事がありませんでした。」


「それでは、なぜ男性なんですか?」

 と、司会者は、食い下がった。

 赤井教授は、こう答えた

「ひとつに固執した時の行動は、男性特有のものです。今回の事件は、先に話をしました通り、交通ルールという社会性の高い問題です。その問題に対して、自動車や銃等を搭載する改造をする。そこまで固執した考えを実現する行動力は、男性にしかありません。ですから、男性と判断しました。また、35歳~45歳という年齢も、ひと通りの人生経験を積んだ年齢で、色々な角度から、考察できる年齢だということです。」


「女性には、ありませんか?」

「そうですね。女性にもある可能性はありますが。ただ女性の場合は、共感や関係性を重視しますので、個人で個々を攻撃するというような争いごとは避ける傾向があります。今回は、交通ルールという社会上の関係性がありますが。共感を重視する相手は、交通ルールを無視した相手ではなく、身近にいる、話し相手のため、このような行為を行うことはないと考えられます。」

 と、赤井教授は、こうまとめた。




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