第4話

その日はたまたまバイトがなかった5月某日、俺はどばちゃんに呼び出された。俺は大学の講義が終わるとすぐ、目的地へと向かった。向かった先は世田谷せたがや区の瀬田せたにあるどばちゃんの自宅。大学からは、電車で30分ほどかかった。二子玉川ふたごたまがわ駅に着くと、駅の改札で制服姿のどばちゃんが待っていた。高校の制服を着たどばちゃんは初めて見る。可愛い。




「制服姿だけど学校帰り?」


「うん」


「そういえば高校どこだっけ?」


目黒中央めぐろちゅうおう高校」


目中央めちゅうおうって芸能人御用達の学校じゃねぇか」


「うん。芸能活動で学校行けない時も融通が効くからね。それに目黒めぐろにあるから電車で行けるし」




俺とどばちゃんはこうして駅からどばちゃんの家に向かった。どばちゃんの話では、家は駅から徒歩5分ほどの場所にあるという。そして2人でしばらく歩いていると、どばちゃんの家に着いたのであった。2階建ての立派な家だ。


俺はどばちゃんから、「入っていいよ」と言われたので、家に入る。玄関はかなり広い。そしてリビングに入り、俺は「ところで、親御さんは?」とお菓子とジュースを用意し始めたどばちゃんに尋ねた。どばちゃんは「共働きだから、今日は夜まで帰ってこないかも」と言い、俺にお菓子とジュースを差し出してくれた。


それからほどなくして、どばちゃんの妹さんが帰ってきた。中学校の制服を着ている。




「始めまして。土橋綾どばしあやです。姉がお世話になっています」




綾ちゃんは早速、俺に挨拶をしてきた。礼儀正しそうで何よりだ。姉妹ということもあってか、外見がどばちゃんによく似ている。




「綾ちゃんって中学生だっけ?」


「はい。中2です」




俺はチラッと時計を確認する。まだ4時を回ったばかりだった。そして俺はどばちゃんにあることを訪ねた。




「そういえばお前、お兄さんもいたよな」


「うん。お兄ちゃんは今年から大学生。でも、京都の大学に通っているからここにはいない」


「そうなんだ。悪かったな」


「ううん。大丈夫」




・・・なるほどな。そして、俺はどばちゃんと綾ちゃんの3人で色々話すことになった。俺は綾ちゃんに「綾ちゃんもお姉ちゃんに似て可愛いね」と言った。すると、綾ちゃんは「いやいや。宮本さんも十分かっこいいじゃないですか。私、お姉ちゃんの彼氏がこういう素直な人で安心しました」と言ってきた。それに対し俺は「そんなことないよ。俺、生まれてからずっと彼女持ったことないし」と言ったし、どばちゃんは「彼氏じゃないよ!」と綾ちゃんに突っ込んできたが。そして夜になり、仕事を終えたどばちゃんの両親が同時に帰ってきた。




「君が宮本くんだね。土橋巌どばしいわおです。万里花から色々話は聞いてるよ」


土橋華どばしはなです。娘がお世話になっています」




2人がそれぞれ俺に挨拶をしてきた。確かどばちゃんのお父さんは警察官だったな。俺は「もう時間ですし、そろそろ帰ります」と言ったが、巌さんは「そんなこと言わず、ここで夕飯を食べなさい」と言ってきたので、俺は土橋家で夕飯を食べることになった。




「ところで、万里花とはどこまでいったんだ?AかBかCか?」




食事中、巌さんが俺にこんな話を吹っかけた。俺はむせた。どばちゃんも「お父さん!」と声を出す。そして、「たまたまイベントで知り合っただけだよ・・・」と口を漏らした。それに対して巌さんは、




「万里花、宮本くんのことが好きなんだろ?」




衝撃の一言を言ってきた!これにはさすがの俺も動揺する。心拍数が凄いことになっている。どばちゃんも顔を真っ赤だ。そして、




「だからまだ好きだなんて感情はないから!それに私、まだアイドル続けたいし、彼氏なんて今は・・・」




どばちゃんは巌さんにこう小言を漏らしていた。どばちゃんはかなり動揺をしている。そして俺は軽く凹む。どばちゃんが言った言葉に巌さんは、




「まあ、宮本くんならいつ万里花を嫁に出しても俺は構わないけどな。けどな、宮本くん。これだけは言っておきたい。くれぐれも万里花を泣かすんじゃないぞ。それにアイドルが付き合っていることがバレたらどうなるかも考えて欲しい」




と俺にこう言い放った。そして食事を済ませた俺は家族に一礼をし、どばちゃんの家を後にしたのだった。





そう、智花と智代から「直にぃ、ひょっとして、彼女と遊んでたでしょ?」とこの後、怒られることを知らずに・・・

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