第2話
思えば、あいつがここに来るようになったのはいつ頃だろうか。
俺は大学に入学してすぐこのコンビニでバイトを始めたので、ここでもう1年は働いている。多分その時にはもう来ていた。帽子・メガネ・マスクの3点セット込で。最初は花粉症なのかと思っていたのだけど、夏になってもその格好だった。しかしこの時は特に迷惑といえる行為はしてなかった。
迷惑行為が始まったのは秋になってからだ。最初は数百円の買い物なのに1万円札だけ出す行為から始まり、次は1円玉、10円玉ばかり出すという行為に及んだ。そして冬になり、年が変わった頃からは、週2〜3回くらいしか来てなかったのに、ほぼ毎日、ほぼ決まった時間にコンビニにやって来るのだ。それも俺がレジに出てる時間に狙ったかのように。そしていつもちんたらしては、出すお金は小銭ばかりなのであった。
午後10時すぎ。俺はバイトを終え、家に戻ろうとしていた。しかしあのガキまだいる。しかも今は店員用の出入口の前でスマホ触ってやがる。そして例の女はさっきと同様、帽子もメガネもマスクもしておらず、素顔を表にしていた。その素顔は、誰がどう見ても美少女だということがわかる。綺麗に整えられた長い黒髪に、雪のように白い肌。そして、俺が大好きで大好きでしょうがない、親の顔よりも見たアイドルであった。この美少女をこの目で2度も見たんだから間違えるはずがない。
そんな誰よりも可愛い、俺が大好きで大好きでしょうがないアイドルが、毎日のようにやって来る、コンビニの厄介客だったなんて・・・絶望もいいとこだわ!
「宮本くんだっけ?店員の名札見てるから名前はすぐわかったわ。あんたに話があるの」
どばちゃんは生意気な口調で俺にこう声をかけた。の対応とは全然違う。
「・・・失礼ですが、何の話でしょうか」
俺はどばちゃんにこう話をかけた。すると、
「あんた、私の顔見てピンときたよね?イベントでよく見るわ。高校時代、大阪から東京まで毎週のようにイベントに来てくれたこと、私の出ているテレビは全部チェックしていること、去年から東京の大学に通っていること、学部は法学部で弁護士を目指していること、バイトの収入はほとんど私に使っていること、みんな私に話してくれた」
と返してきた。これは全部事実。しかし、認知されていたのか。
「ああ、俺だよ」
俺はどばちゃんにそう告げた。そしてさあやんは、
「じゃあ、なんで私が毎日あんたに長い時間かけて買い物をしているのかわかる?」
と行ってきた。俺は、
「知りません、わかりません」
とどばちゃんに言う。すると、
「・・・バカ。鈍すぎ」
とどばちゃんは小声で言ってきた。・・・意味わからん。そして、
「・・・また明日も来るから」
と彼女はこう言い、俺のもとから去った。
◇ ◇ ◇
そして翌日午後9時前、俺がレジ打ちしている時に彼女はやって来た。マスク姿に帽子とメガネなのは相変わらずだ。そして俺がお会計を告げる前に、
「・・・もうやらない。私、あんたにやってきたことが迷惑行為だというはちゃんとわかっていたから」
と彼女は俺に告げ口をし、スマホのアプリで商品の支払いを済ませた。そして店を去る時、彼女は何かを言ったようだが、レジの仕事に集中していた俺にはその言った内容がよく聞き取れなかった。
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