第354話【殉死】

小林は自分のデスクから立ち上がった。


「少し出て来る」

「あ、 出かけるなら車出しましょうか?」


草佐々が気を効かせる。


「いや、 良い、 偶には運転したいんだ」

「そうですか」


小林は綺麗に身支度をしてからTDTの部屋を出た。

そして自販機でコーヒーを買った後に公安局の喫煙所で煙草に火を点けた。


「小林じゃん、 御疲れー」

「小野木か・・・」


同期のキャリア組の小野木がやって来た。


「お前、 良く分かんない部署に飛ばされたんだってな」

「そうだな・・・だがやりがいのある部署だよ」

「そうかぁ? まぁどっちでも良いけどな」

「俺達は国を守る為の仕事だって燃えながら公安に入ったよな」

「だな・・・青臭い餓鬼だったな互いに」

「いや、 そうじゃない」


小林がキッパリと言い切る。


「んあ?」

「国を守るのが青臭い餓鬼なら俺は今でも青臭い餓鬼だよ」

「カッコいいなぁ、 何だ? 何か有ったのか?」

「まぁ色々とな」


そう言って煙草を消してコーヒーを一気に飲む小林。


「じゃあな小野木、 今度、 呑みにでも行こう」

「良いぜ、 階級上だし奢るよ」

「ふっ、 奢るのは俺の方だ」


そう言って喫煙所から出る小林。


「何だアイツ・・・」


小野木は喫煙所で煙草を吸いながら愚痴った。

小林は地下駐車場に向かい車を出した。


「・・・・・」


向かう先は首相官邸、 公安からだとそれなりに近い。

しかし。


『GIGUYAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

「!!」


車の前に飛び出す猫科の怪人、 ハンドルを切って逃げようとする小林。


『GYAHAHAHAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

「っ!!」


逃げた小林の前に更に別の怪人が現れた。


「・・・・・!!」


フルスロットルで怪人に車で突っ込む小林。


『GIYUAAAAAAAAAAAAAAAA!!』


怪人は車のボンネットに上がって車の窓を叩き割った!!

そして小林の車はコントロールを失い街路樹に突っ込んだ!!


「・・・・・」


小林は車の中から外を見ると怪人の群れが車を取り囲んでいた。


「・・・・・最後に一本吸わせろ」


煙草を口に加え、 火を点ける小林の言葉に反応したのか

それとも無視したのか怪人達が小林に殺到したのだった。


後に残ったのは血だまりだった。

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