第173話【それでも生きていく】

海道は歩き続け一つの家の前にやって来た。


「ここだ」

「・・・・・ここか」


例に漏れずその家も他の家同様に酷い有様だった。

門は破壊され、 ドアも蹴破られ・・・

そんな有様でも海道は構わず中に入って行った。

夢宮と右片も後に続いた。


「お邪魔します・・・」


夢宮はぼそりと呟いた。


「・・・・・」


他人の家と言うのは不思議な感覚である。

他人の生活感がある環境と言うのは如何にもなれないのである。


「・・・・・親父・・・」


居間の椅子に座っている白骨化した死体を前に涙を流す海道。


「死んじまったのかよ・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」


黙祷を捧げる右片と夢宮。


「・・・・・・・海道、 これから如何する?

一旦ノギクボの支社に戻るか?」

「・・・・・少し待ってくれ」

「悪いが時間は無いと思う・・・急いでくれ」

「・・・・・」

「・・・海道さん・・・僕も怪人に両親を殺され

叔父を意識不明の重体にされました」

「そうだったのか・・・その悲しみから如何やって立ち直れたんだ?」

「・・・・・」


海道の問いに考える夢宮。

そして口を開く。


「・・・・・立ち直れてません、 今でも引き摺っています

多分死ぬまで引き摺り続けると思います」

「・・・・・そうか」

「俺も上官と戦友を殺されたよ」


右片も呟く。


「ついさっきの出来事だ、 良い奴等だったよ

だけどどんな事があっても生きている内は生きて行かなきゃならねぇ

悲劇に見舞われても、 それでも生きて行かなきゃならねぇ

それが生きている俺達に課せられた使命だと思っている」

「・・・・・そう、 ですね」

「そうだよ、 幸いにも俺には怪人を殺せる手段が有るし・・・それに」

「それに?」

「来たぜ」

「?」


海道と夢宮が耳を澄ませると輸送機の音が聞こえる、 如何やらC2号部隊がやって来た様だった。


「この街の怪人達もこれで一掃されるな・・・」





北国街を中心とした北のスタンピートはC2号部隊の新兵器と尽力により

15日で一応の落ち着きを取り戻したのだった。

これはスタンピート発生から終息までの記録としては最短記録で

システムC2の有用性が発揮された実例でも有るだろう。


だがしかしスタンピートの被害は

甚大で救出出来たのは北の住民の20%にも満たなかった。

それでも通常のスタンピートでの生存確率は1%以下なので

これでも驚異的な数字だった。

初めてのシステムC2の実用だった為、 不慣れな場面も有ったのか

C2号部隊でも十数名の犠牲者が出てしまったがこれもスタンピートの対処にしては

皆無と言って良い少ない数字だろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る