第94話【意地】

「ネック?」

「ヒントが少ないのよ」


大根の角切りが刺さったフォークをくるくるしながら問う与謝野。


「ヒント?」

「この被害者の通学、通勤経路の位置と被害者が発見された所

その場所のズレはきっとこの事件のカギになる筈・・・

だけど情報が二つでは少ない・・・」

「つまりもっと情報が有れば良いと?」

「でもそれだとさ、もっと犠牲者が出るって事じゃない

それは見過ごせないのよ」

「見過ごせない、か、正義感が強いんですね警官に成ったら如何です?」

「個人の方が向いて居るよ、私は・・・」


フォークに刺さった大根を食べる与謝野。


「兎に角これ以上犠牲者が出ない様に色々調べたんだ

でも被害者が女性でこの街の住んでいる位しか共通点が無い」

「調べた?」

「そう、持っている荷物から好きな食べ物の好み、交友関係とか色々」


ファイルを捲ると確かに色々な情報が載っていた、びっしりと。


「これは凄い・・・」

「でも大して役に立たなかった・・・残念ね」

「・・・・・」


しょんぼりする与謝野。


「・・・その熱意に二万円」

「ホント!?良いの!?」

「貴女は悪い人間じゃないですからね、話を聞いて分かりました」

「君も良い人間だよー!!」


にっこりと笑う与謝野。


「じゃあ僕はこれで」

「あ、ちょっと待って、私この街に来たばかりでホテルの場所が分からないの

一緒にホテルに行っても良い?」

「・・・部屋は別々ですよ」

「勿論!!お金は貰ったしね!!」


ファミレスを出た二人、外は暗くなっていた。


「最近は陽が落ちるのが早いねー」

「秋ですからね」

「君、結構若いけど年幾つ?」

「幾つに見えます?」

「質問返しー?このこのー」

「ははは、貴女も大概若く見えますけどね」

「私?32」

「32で美少女探偵ってヤベェな!!」

「冗談、本当は17☆」

「・・・嘘っぽく聞こえる」

「ふふふー女の子には秘密が一杯なのよ♪

更に探偵には守秘義務があるの」

「それは仕事上に大事な秘密じゃないんですか?」

「美少女探偵にとって年齢は仕事上大事な秘密なのよ」

「そうですか・・・」


テクテクと夜になった街を歩く二人。


「ねぇ、ホテルの道、こっちで合っているの?」

「えぇ、確かもうそろそろですよ」


・ ・ ・ 返事が返ってこない。

夢宮が振り返るとそこには誰も居なかった。

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