京都のごはん

【夢を見ました】


友人の家は、庭だらけである。家より庭のほうが立派で広い。

庭は通りに面していないので外から見ることはできないが、玄関を入ると薄暗い土間を通って中庭に抜けられる。

端っこの方は日当たりが悪く、苔むした岩の陰にハランが群生している。全体的に立派な感じで、植木は美しく刈り整えられ、石や岩がバランスよく配置されている


私は久しぶりに訪れたので、庭の美しさに改めて感動しはしたが、思っていること以上に多くの感想を求める友人なので、思いつく限りのお世辞を並べ立てる。

「苔の管理って大変でしょう、綺麗に整えられているね」

「庭木が落とす影も見事に調和して美しいね」

「ハランの色が他では見ないほど深いね」

「灯籠はどのくらい歴史があるの?」

「台杉と庭石の配置を見ていると、大自然を感じるね」

などなど・・・・・・・。


一緒に食事をすることにした。

薄暗い部屋で、低めのテーブルを囲んで正座した。

ご飯がやけに美味しい。

おかわりをもらった。すると、そのたびにお茶碗が変わる。さっきは小紋のような絵付けだったが、今回は大きな椿の絵柄になった。

楽しくなってますますご飯が進み、6回もおかわりをしてしまった。

しかしご飯以外のものは何もなかった。


夜になると、下の座敷の方で大きなエンジン音が聞こえ始めた。

階段から見ると、重厚な感じの座敷の真ん中に、よく磨かれたスポーツカーが据えられて、この家の誰かが何度も空ぶかしをしている。

大事な車は奥座敷のような場所から出発するのが習わしらしい。

「これから狭い山道でドリフト走行です」


私は台所で洗い物などを手伝ってから帰ることにした。

自分の小さな車に乗って街を抜けると、バイパスの大きな橋に上がって行った。なんだかほっとしてビューンと飛ばした。

目の前にきれいな青空が広がった。

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