「隣人」

 クズ女のあの顔ったらたまらないわ!

 隣に越してきましたって? はじめましてですって? 馬鹿じゃないの!

 あたしはあんたに酷いいじめを散々受けたこと一度だって忘れてないわ。……いえ、ようやく忘れられそうだった。

 でも、もういいの。当時は学生だけど、今は大人だもの。あたしの夫は外資系だけどあんたの旦那は冴えない学者。あたしの家は家政婦もいる豪邸だけどあんたの家はちっちゃい建売住宅。それに、

「ねえ、そんなに家ばっか見て楽しい?」

「ちっとも」

「じゃあ早く」

 まるで犬ね。尻尾が見えるわ。

 まだ詰襟を着た可愛い犬とあたしは寝室へ向かった。

「……ほんと、死ねばいいのにあの女」


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