母を殺害せしめたのは誰か

早藤尚

「妹」

 母の日だった。贈り物をしよう、と口にしたのは確か兄からで、私は母への初めての贈り物に内心どきどきと胸を高鳴らせながら、言われるがまま花を選んだ。

 綺麗な朱色の、大輪の花。

 庭に植える花があればいい、と母が言っていたそうだから。

 だからその庭木を選んだ。竹のような葉っぱのはっきりした青も、桃のかたちに似たかわいらしい花弁も、きっと新しい家の庭にぴったりだと思ったから。

 兄も賛同してくれた。良いものを選んだね、と私の頭を撫でてくれたのを、今でもはっきり覚えている。

 そう、覚えている。

 あの花を選んだのは私。

 私が、お母さんを殺した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る