第150話落ち込むが…

中学の頃、陽菜とカラオケに行くと歌わされた、Bruno M◯rsのLazy songが皆の前で流れると陽菜を睨み付けていた。

「洋楽歌えるの、歌ってよ。」

「花さん…歌えるわけないでしょ。」


一旦音楽を停止され、マイクを持たされ立たされていた。

「…虐めっすよ。」


瞳さんが「晴って洋楽歌うの?」と聞くと陽菜は「昔歌ってたけど、上手いよ」と教えて、晴斗が溜め息をつくと、花さんに言われた。

「早く歌ってよ。」

「…嫌です…てか‥虐めっすよ。」

「晴、久しぶりに歌ってよ。」

「…一回しか歌わないからな。」


Lazy songを歌い出そうとすると、陽菜が動画を撮り始めて背を向けて歌い終わった。

「…あぁ、もう嫌だ。」


晴斗はパーカーを脱いで、頭から被ると「上手い、英語も喋れるの」の聞かれ「喋れない」と教えた。

「嘘だよ、晴の叔母さん外国人じゃん、よく伯父さんと晴が言い合いになったら、叔母さんが英語で叔父さんに怒ると、晴も英語で怒ってたじゃん。」

「苛立ってるときに思い出させるな!…喋れないですからね。」


伯父さんを嫌ってることを思い出した陽菜は、晴斗から目を逸らした。

「これも歌える?」

「聞いてましたか?」

 

瞳さんは、楽しそうに隣に座って来ると、Charlie Put◯のLook At Me Nowをスマホから流して聞かされた。

…知ってるけどな。

「それ、Tik何とかいう、自分のダンスした姿とか配信するアプリですよね、学校で女子がダンスしてたから知ってますよ。」

「だから、晴は歌えるの。」

「…歌えるわけないでしょ。」


晴斗は陽菜を睨んで教えると、陽菜に「今の言い方嘘だよ」と教えられ、瞳さんは、Look At Me Nowを探して入れていた。

「瞳さん、歌えるんですか?」

「晴が歌うんだよ、陽菜に晴が歌う曲選んでもらうからね。」

「何で…俺に選ぶ権利が無いんですか?」

「後輩だから。」

「先輩の言うこと聞けって言うんすか?」

「そう…晴の歌、皆も聞きたいよね。」

「晴は洋楽だけ歌えよ、陽菜が選んで。」

…言うこと聞けとか‥嫌いだわぁ


竜二さんに言われ、晴斗は「洋楽‥妹の前でも歌わないのに、皆の前で歌わされるとか…虐めっすよ」と悲しそうに伝えた。

「晴、何で嫌がるの。」

「…歌ってたら、ポカーンと口開けて呆れてたじゃん…どんだけ俺の心が傷ついたか…」

「いやいや、晴が上手かったから聞き入れてたんだよ。」

「…嘘つくな‥お世辞で上手いなんて言われても、嬉しくねぇからな。」


陽菜に伝えると、皆から本当に上手かったと言われたが、晴斗はムッとしていた。Look At Me Nowが流れるとマイクを渡され、受け取ると立たされていた。


歌ってる最中に振り向くと、皆でスマホを向けていた、歌うのをやめると怒られ、晴斗は最後まで歌い終わると苛立っていた。

「…虐めっすよ‥いい加減キレますよ。」

「本当に上手いから聞き惚れてたんだよ。」

「…竜二さん…お世辞で言われても嬉しくないですよ、どうせ学校で笑い者にするんでしょ。」


また、皆に聞き惚れてた、上手かったよと言われたが、晴斗の心はぼろぼろになった。

「次も晴の番ね、マイク持って立ってね。」

「あぁー先輩達に歌ってやるよ、動画も撮って笑え、好きなだけ笑えや。」


晴斗がキレて陽菜を睨み付けると目を逸らされた、晴斗は何曲も歌わされ「…もう心も‥喉も限界」と言って椅子に座った。

「晴、本当に上手かったよ、また一緒に来て歌ってよ。」

「…二度と来ない、俺の心が折れて…妹が必要になってます。」


陽菜に頭を小突かれ「本当に昔から上手いよ、自信もって」と言われた。

「…ポカーンと口開けて見られる‥俺の気持ちが分かるか、分かんないだろ、今度から陽菜は変なこと言うな。」


晴斗は誰に何を言われても、パーカーを被って残りの小一時間黙り混んだ。


一時間後、カラオケから出て三人に手を降っていると、瞳さんから「一応聞くけど、動画って人に見せていい?」と聞かれた。

「…どうぞ、好きなだけ友達と笑ってください。」

「何度言ったら良いの、本当に上手かったよ。」

「…モデルの瞳さんから、お世辞貰えるなんて嬉しいです、またバイト先で会いましょう。」


晴斗はめんどくさそうに言って、ビルまで戻ると陽菜とバイクに股がった。

「晴は本当に上手いよ、自信もってね。」

「…もう持ってるよ、呆れられる自信をな。」

「笑ってる人が一人も居なかったよね。」

「…皆が呆れてたから笑う暇がなかったんだろうな。」

「……」


陽菜が喋ってたが、聞かずに晴斗は静かに運転を一時間程して、16時頃、陽菜の住むマンション前に来ていた。

「晴、上がっていく?」


晴斗は頭を横に振った。

「親戚の家に凜と従妹を迎えに行かないといけない。」

「そっか‥明日凜ちゃんと遊びに来て良いからね。」

「moonで優菜が1日店員するんだっけ?」

「半日だからね、晴も見に来てよ。」

「…興味ない、またな。」


直ぐに親戚の家にバイクを走らせた。家に着くとバイクの音を聞きつけた凜は玄関の扉を開けて飛び付いてきた。

「晴くん、おかえりなさい。」

「ただいま、凜。」


玄関で口付けをしたがぎこちなかったのか、凜に「嫌なことでもあったの」と直ぐに聞かれた。

「…久しぶりに大恥をかいて‥心が折れた。」

「一人で悩んだらダメだよ、何があったの。」

「またあとでな。」


先に晴斗がリビングに入ったが麻莉菜の姿がなかった、どうやら中学の頃の友達と遊びに行っていた。

…凜は美香さんと二人だったのか…悪いことしたな。


晴斗はソファーに座ってボーッとテレビを見ていた。

「晴くん。」

「……」

「晴くん…何度も呼んでるんだよ、ご飯だよ。」


気づくと、凜が目の前に立って何度も呼んでいたらしい、振り向くといつの間にか、皆はテーブルを囲んでいた。


晴斗は一言も喋らずに椅子に座った、皆はこっちを見ながら食べていたが、見られてることにも気づかずに食べ終わった。

「帰るか?」

「晴くん…ずっとボーッとしてるよ、危ないから泊まって帰ろ。」


大人二人も危ないから泊まって帰りなさいと言われた、晴斗は頷いてお風呂に向かった、入浴後、凜と入れ違いで晴斗はリビングに姿を見せた。

…19時か..

「早いですけど、疲れたので寝ます。」


麻莉菜は近寄って来ると心配そうだった。

「晴兄らしくない、ずっと静かで悲しそうで…見てるこっちが辛い‥どうしたの?」

…年下に心配されるなんて‥情けない。

「バイトで疲れただけ‥お休み。」


笑いながら麻莉菜の頭を擦って一言言った、悟さんと美香さんがどうしたのと聞いてきた。

「ちょっと色々ありまして‥疲れてるだけです…寝ます。」


寝室の布団で横になると同時に、凜も入ってきた。

「お風呂に入ったんじゃないのか?」

「急いで入ったの、晴くんが心配だったから。」

…今の姿がそんなに‥いつもと違うのかな。


凜も横になると抱き締められていた、晴斗も抱き締め返すと安心感で自分の体が震えていた。

「晴くん‥どうしたの?何があったの?」

「……」


凜に背中を擦られると、晴斗はバイト終わりにカラオケに行って、無理矢理歌わされ、動画も撮られて心が折れたと教えた。

「晴くんの歌声聞いたことあるけど、お下手じゃなかったよ。」

「…バカ優菜に歌わされたんだ…他の友達も上手いって言うくせに‥毎回口開けて呆れられ‥大恥かいた。」


晴斗は消え入りそうに教えた、凜は相槌を打っていた。

「晴くんから見ると呆れて見えてただけかもよ、本当に友達が褒めてたのかも知れないよ。」

「…どうだか。」

「何歌ったの?」

「…覚えてるけど‥思い出したくない。」


凜は背中を擦りながら「よしよし」と言ってきた。

「子供扱いしないでほしい。」

「晴くんは甘えることも頼ることも知らないで、一人で抱え込む癖があるでしょ…今だけ甘えて良いからね。」


恥ずかしそうに言われ、凜の目を見て「髪の匂いが気に入らない」と一言言った。

「シャンプーが違うんだから仕方ないでしょ。」

「服は凜の匂いだな。」

「…今日も泊まると思わなかったから‥着替えがないの。」

「同じ服なんだな、汗臭くないし髪よりいい匂い…落ち着く匂い。」

「…もう。」


恥ずかしそうに凜は自分の肩の位置を晴斗の視線まで体を動かした。

「何で上がるの?」

「…私の匂いで落ち着くんでしょ‥晴くんから抱き締めてよ。」


晴斗は抱き締めて「麻莉菜と遊びに行ってるかと思って‥寂しい思いさせて‥ごめん」と言って謝った。

「気にしないで…今幸せだもん。」

「良かった、明日はバイト休みだからな。」

「知ってるよ、晴くんも私も友達と遊ぶんだよ。」

「明日なのか、知らなかった。」

「声に元気が戻って‥嬉しい。」

「…誰かさんのせいで‥落ち着かない体質になってしまった‥‥らしいな。」


晴斗は恥ずかしそうに言っていた。

「私のせいなの?ずっと傍に居る約束したんだもん。」

「…う、うるせぇな…凜じゃないかもな。」

「照れなくても良いんだよ、晴くん子供だね。」

「…うっざ。」


クスクス笑われると、顔を凜の胸に当てて布団を被って隠していた。数分後に凜はモゾモゾ動き出した。

「トイレか?」

「違う‥晴くんばっかり甘えるなんて‥ずるい…」


布団を捲られていた。

「ごめんね、なにしたらいいの?」

「う~ん‥寂しかったからキス…帰ってきて一回だけもん。」

「はぁ、子供だな。」

「晴くんも子供でしょ、私が居ないと泣きそうだったんだから。」

「泣きそうじゃない、バイトで疲れてただけ。」

「本当かな?…そういうことにしとこうねぇ。」

「…今日の凜‥意地悪だな、素の性格が悪いのか。」

「悪くない、晴くんが子供ぽいから虐めたくなったの、晴くんが毎日してくるでしょ。」

「…うっ‥き、今日は麻莉菜と寝る。」

「今日の晴くん可愛い…年下に甘えるんだね。」

「…絶対麻莉菜と寝るからな。」


凜が口を押さえて笑い出すと、晴斗はリビングに向かった。麻莉菜はリビングで髪を乾かしていた。

「麻莉菜ぁ、凜が虐めてくる…一緒に寝よ。」

「な、何で私なの。」

「眠いからだな、ほら髪乾かしてやるからさ。」


ドライヤーを受け取り乾かし終わると、親の前でお姫様抱っこしたが、悟さんに「一つ聞きたい…娘に手を出したことないよね?」と眉間にシワを寄せて聞かれた。

「出すわけないでしょ、なぜ麻莉菜の前で聞くんですか。」

「娘に手を出すと責任が付いてくるよ、どっちか選ばないとね。」

「はぁい?」


晴斗は変な声を出して、チラっと麻莉菜を見ると耳まで真っ赤になって、こっちを見る目が泳いでいた。

「麻莉菜の父さん頭大丈夫か?」

「……」

「娘も晴斗くんが好きみたいだからね。」

「好かれてるってことですね。」


悟さんも美香さんも「あぁ」と呆れてたが、晴斗は麻莉菜をお姫様抱っこしたままだった。

「麻莉菜を襲ってまで手を出すことないからな、もう20時か…子供は一緒に寝ような。」

「……子供じゃない。」

「あっそ、お兄ちゃんと寝ような。」

「…晴兄は‥‥お兄ちゃんとして‥見れない。」

「悲しいが…血の繋がりが無いから‥仕方ないな。」


麻莉菜を見てると、真っ赤な顔でジーっと見つめられていた。

「顔が赤いぞ、まぁ風呂上がりだから仕方ないよな、一緒に寝よ。」

「……」

「無視してる?まさか襲うと思ってる?」

「…は、晴兄らしくなったね、さっきまで落ち込んでたから。」

「疲れてただけ、一緒に寝よ…恥ずかしいか?」

「は、晴兄は‥誰でも布団に誘うの?」

「それだと俺が変態じゃん、お馴染みと心を許した友達なら、泊まりに行くと男女関係なく抱き付いて寝てたよ、潜り込んだりしてたけど変なことしたことないぞ…多分な。」


晴斗は胸を張って教えると、凜も聞いてたのか、皆呆れて静寂が訪れた。

「皆どうした?…まぁ、今は凜が抱き枕だからな。」

「…は、晴くん‥変なこと言わないで。」

「何で? 寂しいときって抱き締めるられると安心するよね…凜が居ないとダメなんだ。」

「…晴くんのバカ。」


麻莉菜を下ろして、俯く凜に近づいて小声で話していた。

「…晴くん子供っぽい。」

「ごめんね、横になろっか。」

「うん…晴くんらしくなって嬉しいよ、落ち込まないでね。」

「わかったよ…よし、麻莉菜も祐希も四人で寝よ。」


晴斗は落ち込んでたのが嘘のように元気になり、振り向いて二人に聞いたが。

「晴兄と寝ないから。」

「晴斗みたいに子供じゃないんだ、一人で寝れる。」

「照れてんだな、ガキはどっちだよ、まぁ‥凜を抱き枕で寝るさ。」

「…凜姉ちゃんに変なことしないでよ。」

「しないよ…凜、眠たいから寝よ。」

「晴くんは、運転で疲れてたんだね、良いよ。」


晴斗は振り向いて祐希と麻莉菜に「未経験は子供だな」と吐き捨て、二人の真っ赤な顔を見て笑いながら凜に抱き付いて寝室に向かった。

「晴くん変なこと言わないでって言ったでしょ。」

「…だって‥一緒に寝ないって言うから…」

「普通‥恥ずかしいに決まってるでしょ。」

「俺が可笑しいのか?…もう考えるの疲れた‥寝よ。」

「私も晴くんが居ると‥安心して眠たくなっちゃった。」


寝る前に、凜に言った。

「昨日は麻莉菜が抱き締めて寝てくれて嬉しかったな。」

「…好きになったの?」

「アホか、心を許したってことかなって…嬉しかった。」

「……私が好き?」

「大好きだよ、凜は?」

「……言わなくても分かるでしょ!」

「…まあな‥おやすみ。」

「…晴くん、おやすみなさい」


寝室が静かになった…麻莉菜が入ってくる頃には、凜が晴斗の胸に頭を置いて抱きつかれた姿勢で眠っていた。麻莉菜は一人で布団を使って眠りについた。



















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