第133話晴斗の誕生日①
翌朝…晴斗は目を開けて隣を見ると凜の姿は無く、麻莉菜に抱き締められていた、一瞬回された手に力が入ったのを感じ、麻莉菜の顔を見ていた。
「起きてるよね。」
「……」
麻莉菜の口角が上がると晴斗は「寝たフリ止めないと、学校でからかいに行くぞ」と伝えると、パッと目を開け、ギュッと抱き締めてきたが、抱き締め返すことはなかった。
「何で抱き付いてんの。」
「…何でって……晴兄の誕生日だからかも。」
麻莉菜は目を閉じて頬が染まると、目を閉じていた。
「顔が赤いぞ、風邪引いてないか。」
「だ、大丈夫…誕生日おめでとう。」
晴斗は抱き締め返し「ありがとう」と伝えると「…うぅ」と変な声を麻莉菜は発したが、あえて触れなかった。
「麻莉菜は寝癖直して、準備しないとな。」
「…う、うん。」
晴斗は先に洗面台に向かうと歯を磨いてリビングに姿を見せた、朝食を食べ終わると、麻莉菜と凜はカップケーキの抹茶とチョコ味を渡してきた、昨日作ったと言われ『誕生日おめでとう』と二人は言ってきた。
「すごく嬉しいありがとう。」
晴斗はカップケーキを鞄に直して言った。
「学校で食べるからね。」
晴斗はまた歯を磨いていると、二人も来て一緒に歯を磨き終わり、時間が経つと…学校に来ていたが、晴斗は机に突っ伏していた。
…暇だ、相変わらず凜の周りに友達が集まるんだな。
チャイムが鳴り、朝のホームルームが始まった、晴斗は手を上げて「ここの席は暇です、席替えいつですか」と担任に聞くと、周りから「今日してください」と言われ続け、担任の島野先生は「席替えは自分達で話し合って決めてね、喧嘩したら中止します。」と言ってくれた。
直ぐにホームルームが席替えになると、周りは話し合って友達同士で固まろうとしたが、晴斗は机を頭上まで持ち上げ、クラスメートの間を抜け、先に凜の隣に机を置くと、小声で聞いた。
「凜の隣でも良いよね。」
「晴くんが隣で嬉しい。」
凜は笑みが溢れ、表情を見た周りの男子は凜を囲んでたが、女子に「邪魔」と言われ、前後の席を女子に占領された。凜の隣に体育で絡んできたクラスメートが晴斗の視界に入ると見ていた、絡んできた男子が凜に「月城さん、隣になったんだ、よろしく」と言って手を差しだすと、晴斗は直ぐに話し掛けた。
「凜、早くこっち向け。」
凜は手を差し出したが、直ぐに手を引っ込めて振り向いた。
「晴くん、どうしたの。」
「俺に絡んできた奴が凜の隣で、俺が凜を見る度に視界に入って胸糞悪い…俺の席と交代。」
「………」
晴斗が言うと、絡んで来た男子は「お前が勝手に決めるな、月城さんが困ってるだろ」と言ってきた。
「凜は俺が嫌なことしないよね、席変わってくれる。」
「晴くんの好きにして良いよ。」
「凜ありがとう。」
晴斗は自分の引き出しから全教科の教科書を取り出すと、凜の引き出しを覗いていた。
「空っぽだな、俺の席使ってね。」
「…うん。」
凜が晴斗の椅子に座ると鞄も動かした、絡んで来たクラスメートはまだうるさくて先生に怒られると静かになったが、先生が教室を出ると晴斗の胸ぐらを掴んでいた、周りから止めろと言われ、掴むだけで何も言わない姿を見て晴斗が口を開いた。
「俺に触るな。」
「お前なめてんのか。」
「お前みたいな奴を俺がいつベロベロ舐めた、被害妄想だろ。」
晴斗が鼻で笑うと「バカにしてんのか」と言われ「バカにされてると思うならしてると思うよ、されてないと思うならしてないと思うんだけど、言った本人聞かないとお前分かんないのか…哀れだな」と言って手を払い除け、凜を見て言った。
「横でうるさい人は凜が好きなんだよ、凜はこんな顔だけハンサムってタイプじゃないのにね、体育で言ったけど、こいつ俺が一人になったら月城さんに近付くなとか一年の時からたまに言ってくる…凜の兄にそんなこと言う人はタイプか。」
晴斗が絡まれて辛いと話したからか、凜は少し怒っていた。絡んでくるクラスメートに凜は言った。
「元々かっこいいと思わない、タイプでもない、晴くんの方がカッコいい。」
晴斗は何事もなかったように、抹茶のカップケーキを出して一口食べると隣から「変なの食ってるわ」とまた絡まれた。
「凜が作ったのに、横のうるさい田舎者が変なの食ってるってよ。」
「最低、晴くんが誕生日だから作ったのに…本当に最低。」
周りの女子からも「最低、小声で言って聞こえた」と色々言われ、言った本人は教室を出て行ったが、晴斗気にせずに食べていた。
…女子は女子の味方だな
「凜、味見したか。」
「してない…美味しくなかったの。」
「食べたらわかる。」
不満そうな顔を見て、晴斗はそのまま凜の口にカップケーキを近付け「早くぅー俺の腕がぁー」と笑いながら食べるのを待っていると、凜は恥ずかしそうに一口食べて、周りの女子からキャーと言われ、凜は真っ赤な顔で答えた。
「…ふ、普通だよ。」
「これが普通って凜の口はバカですか。」
直ぐに凜の友達の大島美月さんは「どんな味なの」と凜の隣の席から聞かれ、晴斗は…凜の友達なら良いかなと思い、渡さず手を伸ばして一口食べさせた。
「美味しいね。」
「大島さん分かってるね、凜が作ると美味しいんだよ、普通って言ったからバカかと思ったよ…愛情が入ってんのかなぁ。」
晴斗が後半笑いながら言うと、一年の時クラスメートだった男女からは「また言ってるよ」「凜ちゃん顔真っ赤だよ」「飯島くんが来てから、もっと月城さんが可愛く見えてくるんだけど」「二人は付き合ってるのか」と晴斗にも聞き取れない程周りから言われ、凜は怒っていた。
「晴くんふざけないでって言ったでしょ。」
「凜の怒った顔も可愛いね、大好きだよ。」
「…は、晴くん話し掛けないで。」
凜の机に突っ伏した姿を見て、晴斗は耳元で「隣の席になって嬉しくて…本当にごめん。」と言うと、晴斗は静かになった。
何度も晴斗は休憩時間に机に突っ伏すか、教室を出て散歩して少し絡まれていたが、無視して通りすぎていた。
…肩にぶつかってきたり、邪魔だな。
午前中の授業が終わって昼休みになった…凜から弁当箱を渡され「晴くんも皆と食べよ」と聞かれるが「ごめん、友達と食べて」と一言残して教室から出て行くと、晴斗は屋上で一人隠れて食べていた。
直ぐに食べ終わるとスマホをジーっと見つめていたが、直ぐに目を閉じて俯いていた。
チャイムが鳴る前に教室に戻ってくると、凜は友達と話していた、晴斗はまた机に突っ伏した。
放課後を迎えると、凜は友達と話していた、話終わると「友達と遊ぶけど、晴くんも行こ」と言われたが、断って一人で教室を出ようとして、凜に呼び止められると手を引かれ、空き教室に来ていた。
「晴くん、話し掛けないでって言ったから怒ってるの。」
「あれは、本当に俺が悪かったって思ってるから怒ってないよ。」
凜に抱き締められ、抱き締め返すと言ってきた。
「…晴くんから声掛けてくれないから、寂しかったんだよ」
「ごめん」
「…怒ってないなら一緒に行こ。」
「俺が居ると邪魔になる…まだ仲良くしたい気持ちにならない。」
「…お願い、晴くんも誘ってって言われてるの、仲良くしたいって。」
凜の困った表情を見て、晴斗は「行くよ」と答えた。
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