第88話聞くと嬉しい

晴斗はお風呂に入り、入浴後リビングに向かうと、凜の姿がなかった。

「凜ちゃんなら、麻莉菜の部屋に行ったわ。」


美香さんに言われて、二階に上がり麻莉菜の部屋に入ると、二人はベッドに座って話をしていた。

「凜は麻莉菜の部屋で寝るか。」

「…下で寝るよ。」

「分かった、先に寝るよ。」


晴斗はリビングに降りて、テレビを見ていると、21時半になり、寝室で凜の布団も敷いて横になっていた。


二階から足跡が聞こえ、寝室のドアが開くと寝たフリをしていると、そっと頬にキスをされて目を開けると、凜はニコニコしていた。

「凜、横においで。」

「…少しだけだよ。」


布団に入ってくると、お互いに抱き締めていた。

「少しだけとか言わせない‥このまま寝るからね。」

「…ダメ‥麻莉菜も一緒に寝るってよ。」

「一人で寝れないとか、麻莉菜は子供だなぁ。」

「…晴くんもでしょ。」

「…確かに‥凜が居ないと落ち着いて寝れない。」


凜にクスクスと笑われていた。

「…麻莉菜が来るから、自分の布団に戻るね。」

「駄目、一緒に寝るから。」

「…私も一緒に寝たいよ‥でも、麻莉菜が来るから離してね。」

「凜から離れてね。」

「…晴くんから手が離れないの‥もう少しだけ。」


麻莉菜が来るまで、キスをして抱き締めて話をしていると、入って来た。

「晴兄がまた抱き付いてる、断ってこないからってダメなんだよ。」

「凜‥このままでもいいよね。」


凜は見られて恥ずかしいが、離れたくなくて「このままでいいの」と麻莉菜に勇気を出して言っていた。

「凜姉ちゃん、私と寝るって言ったよね。」

「子供らしく、三人で寝たら良いでしょうが。」


晴斗は、麻莉菜の腕を引っ張り、凜の布団を近付けると二人の間に寝かせ、三人は本当の兄妹のように寝ようとしていた。

「…晴兄は強引だね。」

「親戚なんだし、気にするな。」


静かになると隣の麻莉菜から心臓の鼓動が聞こえていた。

「麻莉菜どうした、心臓の音が聞こえるよ。」

「…落ち着かない。」

「こっち向いて。」


晴斗は落ち着かせようと、振り向いた麻莉菜を抱き締めて、ずっと頭を擦っていた。

「静になったね。」

「目が冴えた。」

「何で。」

「…晴兄が‥抱き締めるから。」

「なら‥凜に抱き締めてもらってね。」

「子供じゃないから‥抱き締めなくていい。」


笑うと、麻莉菜は凜の後ろに移動して抱き締めていた。

「麻莉菜だけ凜を抱き締めて‥ずるいなぁ。」


晴斗は麻莉菜も入れて抱き締めると、凜も抱き締めてきた。

「何で、晴兄は凜姉ちゃんを抱き締めるの‥前泊まりに来た時も、抱き付いて寝てたよね。」

「兄妹だし、好きだから。」

「兄妹で抱き付いたりしないよ、私もお兄ちゃんに抱き付いたりしないよ。」

「麻莉菜と俺は考え方も、恥ずかしいと思うことも違う、まぁ‥おかしく感じるんだよ、気にするな。」

「…凜姉ちゃんが良いならいいよ。」


晴斗は豆電球の明かりで、麻莉菜を覗いて見つめると、真剣な顔で聞いていた。

「…麻莉菜から見て、俺って何‥親戚として、他人として‥どっちで見てる。」

「晴兄は親戚のお兄ちゃんだよ。」

…あぁ、本当に嬉しいこと言ってくれるなぁ。


聞くと嬉しくなり、移動して麻莉菜を抱き締めると、何度も言っていた。

「…麻莉菜‥ありがとう。」

「晴兄は女の人に抱き付く癖があるの。」

「無いよ、身内として見てくれてるのが、嬉しいんだよ。」

「…抱き付いて恥ずかしくないの。」

「全然恥ずかしくない、恥ずかしいのか。」

「…恥ずかしいよ。」

「子供だな。」


晴斗は抱き締めたまま、バレないように凜にキスして寝ようとしていた。

「晴兄が居ると寝れない‥あっち行って。」


また移動して、凜を抱き締め直すと「身内に見られて、良かったね」と言われて、すぐに眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る