第33話 猿が来た

(そう言えば皆のステータスって今どうなってるんだろう? プルンも結構一緒に戦ってるから上がってるとは思うけど)


 自分はリック達のステータスを鑑定してみた。


名前  『リック』    人族/17歳


ランサーLv9。


シャドームーン___:Lv8/10。


二段突き_________:Lv5/10。


突き落とし_______:Lv4/10。


連撃_____________:Lv3/10。


名前  『リッコ』    人族/17歳


ウイッチLv9。


ニードル____________:Lv8/10。


サンドウォール______:Lv8/10。


ファイヤーボール____:Lv5/10。


ファイヤーウォール__:Lv5/10。


名前  『リッケ』    人族/17歳


クレリックLv9。


ヒール________:Lv8/10。


ブレッシング__:Lv5/10。


速度増加______:Lv6/10。


ミラーバリア__:Lv5/10。


名前  『プルン』    獣人/16歳


モンク  Lv9。


連撃________:Lv8/10。


正拳突き____:Lv8/10。


旋風脚______:Lv3/10。


喉鳴らし____:LvMAX


 


 仲間を鑑定して見ると皆揃ってLv9になっていた。


(後1上がれば新しいジョブがでるね。そうだユイシス、皆のジョブが10になったら教えてもらうことってできる?)


《可能です》


(良かった。なら、上がったら教えてね。それにしても、皆レベル上げ頑張ったんだろうな)


 しかし、自分は全く気づいていなかった。リック達のLvが以前鑑定した時よりも上がっている理由を。以前、初めてリック達と出会って、緊急とは言え、パーティーを組んでオーガを倒した時、リック達にも十分な程の経験値が入り、そしてレベルを上げていた事を。


 まだその時はウッドランクだったリック達にとっては、脅威度アイアン以上のオーガの経験は十分以上の結果を出していたのだ。

 更には通常のオーガではなく亜種としてのオーガ。通常のオーガ一体分とは、得る経験は違った。

 プルンに関してはオーガの経験もだが、その後。数多くのキラービーの討伐経験が彼女の成長を伸ばしていた。


 洞窟を更に先に進むと、3匹の白い猿がこっちに向かってきているのが解った。


 3匹の猿は横一列に並ぶと、口を大きく開け、鋭い牙を見せながら威嚇をし始める。それは昔のRPG戦闘画面の様だ。例えるなら、○○が現れた見たいな感じだ


「おい! アレがきっとバルモンキーだぞ!」


「まぁ、モンキーって言うくらいだし猿の姿だよね」


『ウキッ! ウキキッキ!』


「うっ……何か嫌な視線感じるわ」


「そう言われると、何だか全身を見てる感じニャ」


「何だよ、相手はゴブリンじゃねーぞ! そんな視線っ!」


 リッコ達は背筋をゾクッとさせる視線に嫌悪感を感じていた。

 だが、それは女性だけではなく男性のリック達にも向けられている視線だ。


 ウキッキッキッ!


「何だか僕達も見られてませんか……」


「マジかよ……」


 バルモンキーは鳴き声の中に笑い声と受け取れるような声を上げている。


 だが自分は、異様な気配はスキルの効果で感じ取れるが、視線は全く感じ取れなかった。


(視線? 全然感じないけど? 鑑定して何かわかるかな)


 バルモンキー


Lv6。


投擲   Lv3。


強奪   Lv3。


電光石火 Lv2。


 バルモンキーを鑑定しスキルを確認すると皆が感じている視線が何なのかが解った。


「あっ! あの猿、皆の荷物見て笑ってるんだよ!」


「えっ!」


「本当です! 僕の武器を目で追ってますよ!」


 リッケが恐る恐る手に持つ武器を上に掲げ、左右に揺らしてみると、バルモンキーの視線もその武器を追っていた。


 例えるなら、猫や犬の目の前で、好きな玩具を見せている様に首を動かしているようにだ。


「あの猿、ミツには見向きもしてないわね」


「そう言えば……」


 リッケが自身と自分を見比べると、彼はハッと気づいた様に声を上げた。


「解りました! ミツ君は今何も持ってないからですよ」


 リック達は食料は持ってはいないが、腰から小さいバッグを下げている。その中には、緊急時に使用する為の回復薬と多少のお金。戦闘時邪魔にならない程度のポーチ程度の大きさだが、バルモンキーは皆のその荷物を見て不敵な視線を送っていたのだ。


 変わって自分は荷物らしい物は1つも持ってはいない。今は武器も含めて荷物は全てアイテムボックスの中へと入れている。皆の様に腰にポーチなど装備をしていないのだ。


 そのため、バルモンキーからは丸腰の自分に対しては、全く興味をもたれなかったのだ。


「皆、荷物は盗まれない様に気をつけて!」


「来るぞ!」


 バルモンキーの動きは予想以上の速さだった。


 すかさずリッコは足止めを試みたが、バルモンキーは高くジャンプし、洞窟の壁をよじ登り逃げ、更には天井から突き出している鍾乳石にぶら下がり上から皆を見下ろしていた。


「ちっ! コラ逃げんな! 正々堂々と戦え!」


「リック、モンスターに正々堂々って……」


「ここは遠距離攻撃かな」


「リッコ、アイツらの進む方に火壁出して落とせないか!」


「無茶言わないでよ! ファイヤーウォールもニードルもあんな遠くに出せないのよ!」


「じゃー、火玉飛ばしてアレを落としてくれ」


「はあ……。リック落ちついて下さいよ。洞窟の天井に魔法とか、皆で生き埋めになりたいんですか」


「これは厄介だね」


「ミツの弓で落とせないかニャ?」


「やってみようか」


 自分は〈ハイディング〉を使い、岩陰に隠れているバルモンキーの後ろに回り込み、ガラ空きの背中へと矢を放った。


 元々バルモンキーは自分には興味を持っていなかったし、しかも相手は武器も持たない丸腰相手。

 武器と獲物を持つ四人の方に意識が回りすぎたのだろう。


 バシュ


 ギャッギャ!


 自分の放った矢は、鍾乳石の岩陰に隠れたバルモンキーの足をあっさりと打ち抜き、そのまま下に落とす事ができた。


 ドサッと落ちるバルモンキー、それを確認する皆は一斉にトドメを刺すために攻撃をしかけた。


(よし、スティール)


《スキル〈強奪〉〈電光石火〉を習得しました、経験により〈投擲Lv2〉になりました》


強奪


・種別:アクティブ


攻撃と同時に相手のアイテムを奪う事ができる、レベルが上がると与えるダメージが増え、奪える確率が上がる。


電光石火


・種別:アクティブ


一定時間移動速度が大幅に上昇する、レベルが上がると効果時間が伸びる。


 キッキ! キッキ! キキキー!


「んっ? どうやら自分にも残りの猿が警戒し始めたな」


「うわ! スピードが上がりやがった!」


 バルモンキーは仲間がやられたことに、自分に対しても危機感を出したのか、鍾乳石にぶら下がる素振りは無くし、壁や別の岩陰に高速移動しながら弓での的を絞らせない程の速さを出している。


 あまりの速さと動きで皆の動きが止まってしまった。


 その隙をつかれたのはリッコだった。

 素早い動きでリッコの目の前に現れたバルモンキーは、攻撃を仕掛けながらもリッコの持つ荷物に手をかけていた。


「キャ!」


「リッコ! こいつ! 離れろ!」


 妹の悲鳴にいち早く反応したリック。

 バルモンキーの差し伸ばした腕に向って槍をひと突き。

 リッコが奪われそうになったポーチをバルモンキーが落とし、バルモンキーは素早くその場から逃げ、その場を離れて行った。


「リッコ! 大丈夫ニャ?!」


「あいたた。大丈夫、少し引っかかれただけよ」


 腕の傷を抑えながらも無事を伝えるが、鋭い爪はリッコの服ごと切り裂いていた。

 滲む服の血を見て、直ぐにリッケが回復に駆け寄る。


「リッコ、傷を見せて! ヒール!」


 ヒュン!


「危ねえ!」


 ガン!


 リッコの傷を治す為、リッケが駆け寄った瞬間、リッケに向かってバルモンキーが投擲をしかけた。


 距離が近かったのが幸いしたのか、ギリギリなんとかリックの持つ盾で防ぐ事ができた


「皆気をつけて! 敵は石を投擲してくるからね!」


「くそっ! ミツ! 射落としてくれ!」


「解った!」


 ウキッ、ウキッ、ウキキッキ!


 弓を構えた自分を見て、バルモンキーが的を絞らせないかの様に〈電光石火〉を使用したのだろう、右へ左へと素早い動きをしだした。


「動きが更に早くなったニャ!」


「なら遅くするまで! 速度減少! そこっ!」


 ウギャギャ!


(そんで スティール!)


《経験により〈投擲Lv3〉〈強奪Lv2〉〈電光石火Lv2〉となりました》


「良くもやってくれたわね! 〈ファイヤーボール〉!」


 バルモンキーの速度を低下させて放った矢が見事にヒット。落下と同時に、憂さ晴らしとリッコの火玉の餌食となったバルモンキー。


 ウホウホウホ! キャキャキャ! ウホウホ!


 残る1匹のバルモンキーが、何か鳴き声を変えて吠えて足を止めている。


 それをチャンスと、自分は岩壁に隠れたバルモンキーに矢を放つ。


「セイッ!」


 矢が命中し落下するバルモンキー。

 自分がスキルを取った後のトドメは、リックのショートランスの一突きと、プルンの正拳突きだった

(すかさず! スティール!)


《経験により〈投擲Lv4〉〈強奪Lv3〉〈電光石火Lv3〉となりました》


「ニャ!」


「おらっ!」


 ウギャーギャー!


 リックのひと突きで断末魔の雄叫びの声を上げ、そのまま朽ちていくバルモンキー


「ふー、焦ったぜ。あ〜あ、盾が凹んじまってる」


「ありがとうリック、お陰で助かりました」


「おう。まぁ、リッケが無事で良かったぜ」


「ちょっと! 妹の私も心配しなさいよ!」


「うるせえ! お前が油断したから攻撃されたんだろ!」


「何よそれ! アンタがボサッとしてるから私の所まで敵が来ちゃったんでしょ!」


「何を!」


「何よ!」


「ま〜ま〜」


 二人の喧嘩をなだめるのはリッケに任せるとして、自分は倒したバルモンキーを回収していた。


 そんな時また後方から人の気配を感じ後ろを見てみると、先程リティーナの側にいた冒険者がこちらを覗きながら観ている事に気づいた。


「んっ?  あっ……」


「終わったか?」


「よし、お嬢様に連絡を。戻るぞ」


 二人の冒険者はまた、スタスタと元来た方へと急ぎ足で戻っていった。


「……ん〜」


「ミツ、どうしたニャ?」


「いや、なんでもないよ。モンスターと思ったけど他の冒険者だったみたい」


(まぁ、狭い洞窟だし、たまたま前に自分達がいて偶然後ろを歩いてるだけかもしれないし)


「二人とも回収も終わったよ。いい加減進むからね」


「「フンッ!」」


「はぁ〜……、戦闘中は喧嘩はしないで下さいよ」


(まぁ、後数個フロアを抜ければ下に行けるし、あの人達は気にする程でもないかな……)


 ミツ達の進んだ後、人の歩く足音が聞こえて来る。その集団はリティーナのパーティーメンバーだった。


「お嬢様、この先の敵は片付けられました。もう進めますぜ」


「そう……。随分と早いわね」


「しかし、マムンさん、このやり方は冒険者としてどうかと思いますが……」


「何を言うダス! あの小僧共は無礼な態度をリティーナお嬢様に向って取ったダスよ! 普通ならあの場で切り捨てるところを、こうやって我々の為に使ってやってるんダス、命を救われただけでも感謝すべきダス」


「いや、それでも子供に先行させて道を作ると言うやり方は……」


「何ダス? お前達は俺の言う事が聞けないダスか!?」


「いえいえ、そんな事はありません! マムンさんの考えたこの知的な計画に、俺ら頭が上がらないだけですよ。なぁ!」


「あぁ、勿論ですよ! 流石です、子供をその場で殺さないと言う慈悲の心をお持ちだ」


「そうダスそうダス、お前らの様な冒険者でも理解できて良かったダス」


「ちっ……このクソブタ野郎が……」


「こっちはお前に従ってるわけじゃねえんだよ……」


「んっ? 何か言ったダスか?」


「「いえ! 何も言っておりません!」」


「……お嬢、お気づきですか」


「えぇ、いくら何でも私でも気づいたわよ。さっきの黒髪の子、強いわね」


「はい、先程の動きもそうですが、先程からモンスターとの戦闘スピードが早すぎます。恐らくあの坊やがメイン的に戦いをしてるのでしょう。いくら成り上がりのブロンズランク冒険者とは言え、この進行スピードはありえません。しかも洞窟内の道を完全に把握してる様で、彼らは未だに罠も発動してない状態」


「フンッ……。今となって惜しいことをしたわね……」


「あの坊やがこちらに牙を向けなかっただけでも救いだと思います」


 ゲイツは先程のミツとのやり取りを、少し身震いしながら話をしている。

 それは気のせいだと思っていた少年の力が目の前で現実に進行してるのだから。


「はっ、いくら何でも過剰評価しすぎよゲイツ。グラスランク冒険者の貴方以上の冒険者、それと同等かそれ以上がこの洞窟に居るかしら? 勿論このパーティーの中にも、貴方にに勝る冒険者はいませんけど」


「……」


 リティーナの言葉に沈黙で返すゲイツ。


「……まさかあの子に勝てないとでも?」


「解りません、俺はお嬢を守る事が仕事ですので……。あの少年と戦う為に来たわけじゃありません。それでも戦う事になったら……」


「フンッ! どうせブロンズランク冒険者。次の4階層には来ないでしょう。マムンのやり方は気に入らないけど、荷物持ちを早めに休めさせる事ができそうだし、これで先程の無礼はこれで無かったことにしてあげるわ」


 悟りの洞窟にはルールが決められていた。


 1つ、ウッドランク冒険者は入る事が出来ない。

 それが例え、高ランク冒険者が同伴であっても禁止とする。


 ※冒険者以外の者は高ランク冒険者が数名同伴が必要とする。


 2つ、洞窟内、4階層からはアイアンランク以上の冒険者を同伴としない者は進む事は許されない。


 3つ、盗賊行為を禁ずる。


 と、大きなルールはこれだけだ。


「フッ、お嬢がそういった性格で良かったですよ」


「何よ、仕方ないじゃない……。私だって洞窟は初めてなんですから、先程は少し気が高ぶってたのよ」


「まぁ、この階層はあの子達のお陰でこちらの荷物も被害無しで済みそうですが、次の階層からは気を引きしめて下さい」


「フンッ!」


「であるからして! 俺の作戦が一番ダス!」


「おぉ〜」


(話が長えよタヌキオヤジが)


「流石です!」


(こいつのご機嫌取りの方が面倒くせえぜ)


「は〜、マムン! さっさと行きますわよ!」


「はいダス、リティーナお嬢様。ほら、お前らもキビキビ動くダス!」


「「へい!」」


 ミツ達を先行させ、厄介な敵は処理させようとする、マムンからの作を実行中のリティーナパーティー。


 一見非人道的な作に思えるが、洞窟内での危険を避ける方法では冒険者内では普通に使われる作戦でもある。


 だが、先行に使われるのがミツ達の様に冒険者として浅い子供を使うことは無い。


 マムンの考えではミツ達が3階層のモンスターにやられそうな時、リティーナパーティーが助け出し、ミツ達に恩を着せようとする作戦だったのだ。


 しかし、そんな事は全く起こることも無く。


 罠を1つも発動させずに進むミツ達。

 逆にリティーナ達が残された罠に引っかかりそうになったりで、先へと進んで行くミツ達に付いていくのがやっとであった。


(スティール!)


《経験により〈投擲Lv7〉〈強奪Lv6〉〈電光石火Lv6となりました》


「よし! バルモンキーも先手を取らさせなければ大丈夫だな」


「当然よ! あんな猿なんか私の〈ニードル〉で足止めすれば只の的よ」


「バルモンキーは荷物を先に狙いますからね。その対策もできたのが良かったですよ」


「でも、不思議ニャ、絶対洞窟じゃ見ない光景だと思うニャ。誰も武器以外荷物持ってないニャんて」


「まぁ、獲物である冒険者が一人も荷物持ってないとモンスターも戸惑うよね」


「ハハッ。恐らく他の冒険者から見たら、俺達荷物が盗られたと勘違いされるだろうな」


 先に進むと、またバルモンキーと遭遇した自分達は先制の攻撃を仕掛けていた。


 また、バルモンキーからの〈強奪〉対策の為にこの階層だけ、皆は荷物を自分のアイテムボックスに預け完全に手ぶら状態にしている。


《ミツ、プルン達のレベルが次の戦闘で上がります。そしてあなたも、セカンドジョブのクレリックがLvMAXとなり転職が可能となります》


「おっ」


「どうしたミツ?」


「あっ、いや、何だか次の戦闘で皆のジョブがLvMAXになる様な気がしてね」


「本当ですか!」


「凄い、ミツはそんな事も解るの!?」


「ウチもニャ!? ウチもニャ!?」


「うん、皆だよ」


「んっ……皆って事は、ミツお前もか?」


「うん、そんな感じかな」


「いや……まぁ、喜ばしいことだから突っ込まねけどよ。お前、もうクレリック極めたのかよ……」


「ははっは……」


「僕の2年間が、ミツ君にとっては数日で終わるんですね……」


 ガックリと肩を落とす素振りを見せるリッケだが、自身も転職できる事を聞いてるので、それ程深くは落ち込んではいない様だ。


「リッケ、ミツと比べたら皆同じよ。いちいち気にしてたらハゲるわよ」


「なっ! リッコ! 僕はまだ17ですよ、そんな不吉なこと言わないでください!」


「でも、お父さんはもう前頭から来てるじゃない。息子のあんた達も同じ頭になる運命よ」


「クッ、親父め! 力はあるくせに何で毛はねえんだよ!」


「はぁ〜、僕はちゃんと髪の毛洗ってますからね、先にリックが父さんに似ますよ」


「俺も洗ってるよ!」


「ニャ……」


 身内話を三人がしていると、それを聞いてプルンの耳が垂れ、少し悲しそうな表情を浮かべていた。


 プルンが孤児なことは自分は聞いているが、あまりそう言った話を深くは聞く事はできてはいなかった。


「そうだね……プルンはエベラさんみたいな性格になりそうだね!」


「ニャ? ウチがエベラと同じニャ?」


「うん、娘は母親に似るって言うじゃん」


「……ニャ! ウチはエベラみたいに口うるさくならないニャ!」


「ハハハッ、いずれ似てくるよ」


「ニャハハハ」


「そうそう、娘は母親に似るって言うしな。リッコ、お前もお袋みたいにガミガミ言い出す……いや、既に似てるな」


「ですね」


「なんですって!」


「おいおい! 何火玉出してんだよ!」


「リッコ落ちついて下さい!」


 まさか、リッコが怒りで魔法を発動するとは思っていなかったリック達。


 自分も流石にそのツッコミは激しいと思ったが、リッコが魔法を発動させた後、リッコの視線が別の方を見ていることに気づき、理由が直ぐに理解できた。


「んっ、リッコそのまま撃って」


「勿論!」


「「ミツ!」」


 ギャッ!


 放たれた〈ファイヤーボール〉の火玉は二人の頭上を通り越し、後の岩陰に隠れていた一匹のバルモンキーに見事に命中させた。


「「猿?」」


「二人とも、戦闘だよ」


「クスクス、何ビビってんのよ。ダッサーイ」


「こいつ!」


「リック、後にするニャ!」


 仲間がやられた事にキーキーと怒りの声を上げるバルモンキー。


 更に奥から続々と猿がやって来るのが見えた。

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