第5話 第二の人生

「やはり、一番手っ取り早いのは土を掘って対象物にかぶせる方法だな」


 木の上から降りた俺は、独りブツブツ言ながら燃え盛るリザードマンのもとまで駆け寄った。


(……まわりの木々に燃え移らないうちに、さっさとこのビックリバーベキューを鎮火するか)


 傍から見ればあからさまに怪しい不審者のおっさんだが、今はそんな事を気にしている場合ではない。俺は足元で煌々と燃え盛るリザードマンを見下ろし、火消しの段取りを立てる。


(……水さえあれば、道着を濡らして上に被せればハイ終了なんだが)


 正直それは厳しかった。いつも俺が水場として使っている河川までの道のりはここからだと俺でも全力疾走で片道十五分。往復すると約三十分近くかかってしまう。というかそもそもここは異世界だ。いくら地理が瓜二つといっても俺の土地鑑なんぞあてになるわけがない。それならばと、俺は地面に横たわるリザードマンの真横にしゃがみ込んだ。


「土で消火だ」


 そして俺は野生動物のようにものすごい勢いで土を掘り始めた。自分で言うのもなんだが、怪しさが先程よりも1.5倍アップした。


「なんだアレ……犬型の亜人かなんかか?」


「多分違うのだよ。だって耳は人間と同じ形だし」


「ハーフ、ですかね?それにしても何というかその……まるで獣のようですわ」


 やはりというか、俺のあまりの野生っぷりに、近づいてきた例の少年達が呆気にとられている。好都合だ。俺は今のうちにと、キャンプファイヤー状態のリザードマンにどんどん土をかぶせていく。気のせいか体の調子がいつも以上に快調だ。穴を掘るスピードもかつてない速さを叩き出している気がする。いや、別によく地面に穴を掘っているわけでもないのだが。


「お、おい、そこのお前!」


 俺が穴を掘りながらアホなことを考えていると、若者グループの見た目美少女な男の娘リーダー淳君が、おっかなびっくりという感じでこちらに話しかけてきた。


「きゅ、急に出てきてなんなんだよ! お前は一体何者なんだよ!」


「……」


 男の娘リーダーは、突如自分達の前に現れた俺へ、これでもかと警戒心を示している。まあ当然の反応である。


「おお、俺たちが討伐したリザードマンを一体どうしようってんだよ⁉︎」


「うん。それはボクも訊きたいところなのだよ。まあ、ちゃんと言葉が通じるか謎だけど」


「兄様、ジュリさん。不用意に近づいては危険かもしれませんわ!」


 淳が言葉を発したのを皮切りに、彼の背後にいたジュリと弥生も臨戦態勢に入ってしまった模様だ。


「ちっ」


 俺は土掘り作業を継続したまま軽く舌を鳴らす。できればもう少しぼけっと突っ立っててほしかったのに。


「あ、いまこいつ舌打ちしたのだよ」


「な、なんで俺たちの方が煙たがられなくちゃいけないんだよ⁉︎」


「ですが、どうやらこちらの言葉は通じるようですわね……」


 ――あ。


 その瞬間、俺は咄嗟に作業の手を止めてしまった。弥生が発したそのセリフに、ある事を気づかされたからだ。


(……そうだよ。俺は何であいつらの言葉を理解できるんだ。そもそもどうしてあいつらは日本語を喋ってるんだよ)


 その一瞬で、数々の思考が俺の脳内を駆け巡る。


「まさか、今までの俺の推測は全部単なる勘違いだったのか?」


 思わず俺はそんなことを口走ってしまう。


「おいお前、何が単なる勘違いなんだよ!」


「兄様。初対面の方に初めからそのような喧嘩腰な態度はいけませんわ」


「まぁアイツが何者かどうかはさておき、ボクは淳が怒るのも無理ないと思うけどね〜」


「ジュリさんまで……」


「言っちゃなんだけどさ、あれじゃまるで火事場泥棒か何かなのだよ」


「……」


 実際その火事場にならんように対処してるんだが。そのような事を考えながら、俺は目の前に横たわるリザードマンを見る。異形の者を包んでいた業火はほぼ消えいた。これならもう山火事の心配はなさそうだな、と俺はゆっくり立ち上がった。


「おっ、おお」


 背後から少年達がさらに警戒心を強めた気配が伝わってきた。逆に俺は不思議と頭の中が冷静になっていくのを感じた。言葉が通じるうんぬんも含めて、今のところ分からないことだらけだが、だからといって確かめる術もない。こういう時こそ落ち着いて情報を集めなくてはならないと、俺はこれまでの人生で既に学び尽くしていた。


(……さしあたって、今俺がすべきことは一つだ)


 俺はとくに慌てるでもなく。背後の若者達と正面で向かい合うように、くるりとそちら振り返った。


「うおぉっ」

「うっ……」

「あぅ……」


 その俺の振る舞いがあまりにも堂々としていたためか、今の今まで強気な態度を見せていた淳とジュリ、そして彼等のフォローに回っていた弥生までもが、あからさまにこちらの圧力に屈して怯んでしまう。


「だだ、だからさっきから、おお、お前は俺たちが倒したリザードマンに、な、何をしてくれてんだよ!」


 それはきっと男の意地であろう。三人の中で淳君だけがなおも俺に噛みついた。無数の残像が生まれるほど足をガクガクさせているが、その姿勢は同じ男として評価したい。しかしそれでも、俺が圧倒的優勢な立場にあるのは火を見るよりも明らかだった。まあどちらにしろ、俺がやることは変わらないのだが。


「――君達、誠に申し訳なかった!」


 言いながら、俺は一も二もなく少年達に頭を下げた。


「な!」

「へ?」

「ええっと……」


 いきなり俺に深々と頭を下げられた若者三人組は、予想外の急展開に思考が追いつかないのか、ぽかんと口を開けて押し黙ってしまう。


 とにかく謝る。


 俺が最初にとった行動選択はその一択だった。


(……理由はどうあれ、俺が彼等の狩りの邪魔をしたのは紛れもない事実だからな。それについてはこちらの過失であり、俺はこいつらに謝罪せねばならん)


 男は知っていた、自然界での掟を。

 男は心得ていた、勝負での作法を。

 長い歳月を間弱肉強食の世界の中で生き抜いてきた男は、自分がそこに存在する数少ないルールやマナーを犯してしまったことを承知していた。


「本当にすまなかった!そこのお嬢さんが使っていた魔技というやつが、あまりの大火力だったもので」


「えっ、ボ、ボク⁉︎」


 話を振られたジュリはハッと我に返る。


「そうだ。君の技があまりにも凄まじかったので、咄嗟に山火事になるのではとパニックになってしまったんだ」


「へ、そ、そう?ボクの魔技、そんなにすごかった?」


 さりげなくジュリをおだてつつ、俺は真実と嘘を混合させながら弁明を述べる。するとジュリは予想通り満更でもない顔をした。やはりこの娘は見た目通りチョロい。


「隣にいる君と黒髪のお嬢さんも、驚かせてしまい申し訳なかった」


 そして俺は淳と弥生にも頭を下げながら謝意を述べた。


「決して君たちの獲物を横取りしようとしたわけではないんだ。どうか信じてほしい」


「え、あ、いや、それならいいけど」


「左様でございましたか。こちらの方こそ、初対面の方に対してとても乱暴な質疑応答をしてしまい、誠に申し訳ありませんでした」


 淳は心の底からホッとしたように肩の力を抜き、弥生は丁寧な姿勢でこちらに頭を下げ返してきた。


(……よし、なんとか誤魔化せたな)


 俺は深く下げていた頭を上げ、淳達に一度視線を送り、また軽く会釈で謝意を示した。


「君たちの寛大な心に深く感謝する」


 俺がそう言うと、目の前の少年たちの顔から明らかに俺への警戒心が薄れた。こういうとき変に偉ぶって印象を悪くするのは好ましくない。むしろこのようにへりくだって相手に合わせたほうが何かと物事が好転するものだ。


(……安いプライドを優先して無駄に傲慢な態度を見せても、良い事なんて何一つないからな)


 戦闘行為以外はわりと慎重派というのが俺のモットーである。まあ逆に高圧的な態度の奴には、あとでしっかり立場を分からせたりもするが。とにかく、今回は完全にこちらに非があるので、俺は彼等に頭を下げることに躊躇いを覚えなかった。


「オホン。まず初めに説明するけど、キミのその心配は取り越し苦労なのだよ」


 と、一通りの和解も済んだところで最初に口を開いたのは、すっかり調子を取り戻したジュリである。


「取り越し苦労というのは、さっきの炎の技では山火事にはならないという意味かな?」


「その通り」


 ジュリは腕を組んで頷きながら、あっさり俺の言葉を肯定した。


「まぁ、ボクのあのとてつもない威力の《烈火玉》を目の当たりにしちゃったら、一般人のキミがそんな風に勘違いしちゃうのも無理もないかもしれないけどね」


「はい。これは魔技の専門知識がないと理解し難いかと思われますわ」


「そ、そうか!だからさっき、お前は勘違いがどうとか言ってたんだな!」


 ジュリと弥生の言葉に、男の娘リーダー淳君が微妙に見当はずれの相槌を打ってくる。


「そうなんだ」


 俺はとりあえず頷いておいたが。


(……んなわけねえだろ。なんで今説明されたばかりのことを、さっきの時点で勘違いだとか気づけるんだよ)


 と、内心では淳君のかなり的外れな推理に呆れていた。しかし、それを口に出して否定するほど俺は愚かではない。


「火の勢いが急に弱まったから、おかしいとは思っていたんだ」


 などと顎を触りながら、俺は得心したとポーズを決めてみせる。


「や、やっぱりそういうことかよ。驚かせるなよなまったく! あははは」


「すまない」


 案の定、淳君の表情がまた一段階柔らかくなった。こういうタイプはひたすら話を合わせとけば勝手に安心してくれる。


「いいっていいって、素人は勘違いするから素人なんだしな」


「に、兄様」


 急に偉ぶる淳君。そのような兄の態度を気にしてか、弥生はおろおろと淳に顔を向けた後、謝罪するよう俺にペコリとお辞儀をした。


(……やはり若いな。もう警戒を解いてる)


 俺はすっかり警戒心を緩めた三人の若者たちを見て密かにほくそ笑む。


「ちょっと淳」


 俺のそういった心情を察したわけでもないだろうが。ジュリが不機嫌そうに眉をひそめた。


「まだ彼への説明が途中なのだよ。ちょっと邪魔しないでくれない?」


「むう。ほんとおだてられるとすぐ調子に乗るよな、お前は」


「そのセリフ、淳には言われたくないんだけど」


 ごもっとも。


「もしよければ、俺もその事について詳しく教えて頂きたい」


「お安い御用なのだよ!」


 心の中でジュリに相槌を打ちつつ、俺は彼女に説明の続きを聞かせてほしいと促した。するとジュリは自分の胸をポンと叩き、引き受けたのポーズをとってみせる。


「感謝する。ありがとう、お嬢さん」


「ハッハッハッ!キミは淳と違って実に素直な男だね!」


「くっ」


 俺達のやり取りを見て、まだ何か文句を言おうとしていた淳が渋々と引き下がった。


「では解説するのだよ。どうして火の魔技が草や木なんかの自然物には燃え移らないのかを」


「よろしく頼む」


「まあ、話せば単純な仕組みなんだけどね」


 真剣な面持ちで頷く俺に、ジュリは大したことじゃないよ、と逆に砕けた調子で手をヒラヒラさせた。


「そもそもボクが使うものに限らず、魔技は基本的に、大気中の魔素と人型とか特定の生物が持つ魔力にだけしか反応しないのだよ」


「なるほど……」


 俺はジュリの説明で何となくだがその仕組みを理解した。そして同時にやはりここが異世界だということを再認識した。こんな電波全開のコメントが普通の会話で出てくる時点で、ここは俺のいた世界ではないと断言できる。


「つまり、その魔素と魔力といやつが含まれてない、木や草といった自然界の物資には魔技で生成した火は着火しないと解釈すればいいんだな」


「ご名答!というか生成は知ってるんだね、キミ」


 ジュリは意外そうな目で俺を見る。

 俺は肩をすくめながら言った。


「実を言うと、君らがくる直前にあのリザードマンという奴が現れてね。慌てて木の上に登っていなくなるまでやり過ごそうと思っていたら……」


「そこへ俺たちがやって来たってわけだな」


 淳が得意げに言う。俺は頷いた。


「ああ。不謹慎な話だが、君らの勇姿を木の上から拝見させてもらったよ」


「勇姿とかよせって!照れるだろ。それに俺たち冒険士が一般人を助けるのは当然のことだからな!」


「はい!おっしゃる通りです兄様!」


「でもそれは置いといて、キミはもっとボクらに感謝してもいいのだよ? ハッハッハ!」


 俺に持ち上げられ、今度はジュリだけではなく淳と弥生も照れ笑いを浮かべる。本当にチョロい連中だな、と俺がそのような事を思っていると。


「ところで」


 おちゃらけた態度を一変させ、ジュリが鋭い目で俺を見た。


「今度はこっちが質問させてもらうけど……キミはなんでこんな山奥にいたんだい?」


 そのジュリからの問いかけに、俺は思考を挟まず即答する。


「山奥にいたというより、この山にもとから住んでたんだよ」


「「「住んでる⁉︎ 」」」


 三人は仲良く声を裏返して奇声を上げた。


「こんな辺境の土地で暮らしているのかい、キミは⁉︎ 」


「失礼ですよジュリさん。でも、私も本音を申し上げますと驚きましたわ」


「けど、それならさっきの猿みたいな身のこなしも説明がつくな」


 淳とジュリと弥生は色々と納得している様子だった。


「俺は幼い頃から、親父と二人でこの山奥に暮らしてるんだ」


 これはあながち嘘というわけでもないので、俺の舌のキレが損なわれることはなかった。


「人の言葉や一般常識はその親父にある程度叩き込まれているが、山から降りたことがあまりないから、先刻のように俗世には疎いところがあるんだ」


「ぞくせ?」


「世の中という意味ですわ、ジュリさん」


「い、言われなくてもわかってるのだよ!」


「いや、今のは絶対にわかってなかった」


「あー、淳うるさい!」


「ジュリさんも、人前ではもう少し落ち着いてくださいまし」


「なっ!元はといえば弥生がっ」


「……」


 この時俺はふとある疑問を持った。


(……こいつらは俺のことが怖くないのか?)


 何となしに、俺はこれまでの己の人生を振り返ってみた。……うん。ただひたすらに他人を怖がらせてばかりの人生だった。俺は腕を組みながらひとり頷く。大概の奴は俺と対峙しただけでビビる。八割方目も合わせようとしない。格闘王うんぬんの肩書きに加えて、こんな熊みたいな外見をしていたらそれも当然である。そしてそれが俺にとっての普通であり日常であった。


 まあ、さっきまでコイツらも気後れしていた部分はあったが、ぶっちゃけいつもはあんなもんじゃない。ワイワイと自分の眼前で戯れる少年達を眺めながら、俺はそんな事を思ったのだ。


「……それにしても、親父以外でタメ語を使われるのも久しぶりだな……」


 それは自然と口から零れ落ちたセリフだった。別段腹が立っているわけではない。むしろその逆だ。一体いつぶりだろうと、俺は闘争とはまた違った高揚感を味わっていた。その気持ちは言葉では表現しづらいが、俺にとってとても新鮮なものであった。


「ん? お前、俺らと同じぐらいの歳だろ?」


「…………え?」


 ただ俺のそのような心境も、美少女な美少年こと淳君の何気ない爆弾発言により、あっという間に木っ端微塵に消し飛んでしまう。


「それなのにタメ語が気に食わないのかよ」


「ねぇー、歳が近そうなのにタメ語NGって……キミって案外小さい奴なんだな」


「あ、いや、すまない。そういう意味じゃなくてだな」


 淳に続いてジュリもジト目でこちらを見ながら、とんでもないセリフを口走る。しかしながら、まずは思わず声に出してしまった失言を取り繕うのが先だ。俺は必死に平常心を保ちつつ、少年たちに申し訳ないと頭を掻きながら言った。


「実は親父以外と話すのがとても久しぶりだったんで、ついあんな言葉を口に出してしまったんだ。気を悪くさせてしまったならすまない。どうか許してほしい」


「兄様、ジュリさん。今しがたのこの方の口調は、とても穏やかなものでしたわ」


 俺の弁解に、淳の隣にいた弥生がすぐさまフォローを入れてくれた。


「少なくとも、私には嫌味や不平などの感情は一切感じられませんでした」


「……悪い。今のは俺の方が感じ悪かった」


「……ボクも小さい奴とか言ってゴメン」


「い、いや、全然気にしないでくれ」


 なに、このスクールライフ的な妙な展開?何やらスイッチが入ったようにしおらしくなった若者達を見て、俺は思わずたじろいでしまう。


「私はこの方から、どこか哀しみに近い感情を感じましたわ」


「……すまん。いつもすぐカッとなるのは俺の悪いクセだな」


「淳、それを言ったらボクもなのだよ……」


「あ、うん。もう気にしないでいいから。俺も全然気にしてないから」


 額からたらりと冷や汗が垂れる。


(……だから何これ? 半端なく居心地悪いんですけど⁉︎ 頼むからその青春の輪に俺を入れないでくんない⁉︎俺はお前らと違ってそんなに若くないんだって!三十過ぎたオッさんなんだってば!)


 淳達の青臭い雰囲気になんとも居たたまれなくなった俺は、


「そ、そういえば君たち!」


 なんとかこの空気を変えようと、さっきから気になっているある事を直接彼等に訊ねてみることにした。


「君たちに一つ訊ねたいんだが……俺ってトシいくつに見えるかな?」


「「「……」」」


 そうなのだ。俺が混乱していた原因はまさにそこにあった。いや今は違う意味でも杯一杯なのだが、まずはそれだ。


『俺らと同じぐらいの歳だろ?』


『歳が近そうなのに』


 先ほど淳とジュリが俺に言ったセリフだ。そしてこのコメントは絶対にありえないと俺は思った。異世界なのだから価値観や文化が違うのは当然だ。しかし、それでも、熊みたいな三十過ぎのおっさんを若さあふれる瑞々しい自分たちと同い年に見間違えたりはしないだろう。俺はそう思ったのだ。


「よければ答えてくれないか?出来れば忌憚のない意見を聞かせてほしい」


「「「……」」」


 突然の俺の問いかけに、淳とジュリと弥生はきょとんと顔を見合わせる。そしてすぐさま三人は頷き合い、次々と口を開いていく。


「体はデカイけど顔とか色々と若く見えるから、ボクは同い年の十六か、一つ上の十七ぐらいだと思うのだよ」


「私もジュリさんと同じ意見ですね。見たところ『エルフ種』ではないようですし。見たままの年齢なら、私たちと同年代かそれより少 し年上にしか見えませんわ」


「フッ、二人とも甘いな」


 先に答えた女性陣を鼻で笑いながら淳君はチッチッチと得意げに指を振ってみせた。


「弥生もジュリも、こいつが野生児だということを忘れてないか?だったらきっと見た目よりも若いに決まってるだろ!」


 そして淳はズバリと言った。


「お前は、この中で一番年下の十三歳だ!」


「……………………マジっすか?」


 かくして俺の第二の人生が始まったのだった。

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