第38話流転する運命〔前編〕

🔹「前の奥さんと離婚してから、ずっと議員宿舎さ。3年前からだな。 

 で、木ノ下は来週木曜日に教会日本本部がある、千葉に向かうレインボーブリッジに入るんだが、そこに絶好の狙撃チャンスがあるだ」


2人の話しを聞いて険しい表情にな彩。


「ちょっと待って、それだと標的の車は100キロはスピードを出しているわ。大丈夫なの?大体狙撃ポイントはどこ?」


「狙撃ポイントは今から見せるよ。霧ちゃんなら出来るよ。なっ、そうだろ?」


零士の顔を見る彩と氷室。


「ああ。ヘリからの狙撃は難しくはない。1キロ以上の長距離狙撃か。

だが、かなり騒ぎになるぞ。木ノ下のバックにいる労働平和党、教会、その下にいる実働部隊。クライアントは誰なのか、今回も教えてくれのか?」


「すまない。まぁ、政治絡みの時は、何時も通り察してくれ」


「解った」


「その後車に仕掛けた細工を使って事故らせる。そっちは俺がやるから心配しなくて良い」


「仕掛け?撃った後にか?」


「そうだ。一応周りには事故に見せかける必要があるからな。どんな仕掛けかは、その時までのお楽しみだ」


「何だか楽しそうね」


「ふふっ、まぁな。この時の為に色々手を廻したからな。でだ、霧ちゃんはヘリからの狙撃と思っているみたいだけど、違うよ」


「他に方法があるのか?」


「霧ちゃんが狙撃する場所はここだ」


氷室がスクリーンに写し出した映像に、零士と彩は言葉を失った。


「本気なの?」

————————————————————

 

零士達が氷室と合流する少し前。零士の知らない所で運命は動き始めていた。


都内を走るドイツ製の高級車内、その中に、日本に到着しクライアントとの打ち合わせ場所に向かうミハイル達傭兵部隊の姿があった。


窓の外を時折眺めるミハイル。


🟡「まさか日本まで来るとはね。人生分からないもんだな」


そのミハイルに話しかけるゴメス。


「しかし隊長、この国はどうなっているんですかね?


あれだけの重装備が、何のチェックも受けず首都である東京のど真ん中まで運び込めてしまうなんて。


俺は何かの罠なんじゃないかと疑ってるんですが」


ミハイルはフッと一瞬笑った後。


「ゴメスが心配するのも無理はないが、大丈夫だ。雇い主の裏はファーヤとターラスが調べてくれた。盗聴までしてな。


どうやら俺達を雇ったのは、この国の権力者みたいだ。しかも国家の中枢に居るような」


「えっ!?それこそ大丈夫なんですか?まさか日本のヤクザを攻撃すると見せかけて、邪魔者を消させ、俺達も始末するつもりなんじゃ……」


「ゴメスの心配ももっともだ。

 だが、彼等にそれだけの力はを持った実働部隊はない。


それもファーヤの隊が調べた。だが、自衛隊だったけか?それが出て来たら厄介だし、罠にめるつもりなら、一緒に始末するまでだ。


緊急の脱出手段も用意済み。だから心配ない。」


「流石隊長。アフガンでは新編成されてから初めて10人以上の犠牲者まで出しましたからね。


この国は見た目は確かに平和だが、内部で渦巻いているのは、ロシアと大して変わりませんからな」


「ああ、その通りだ。所で、ラリサは随分静かだな。飽きた~とか言って暴れるかと思ったが」


ミハイルはチラリと後部座席に左に座るラリサを見る。


そこにはスヤスヤと眠るラリサの姿があった。



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