第10話

カランカラン


 バーに着いて、扉を開いた。

 車いすの私でも開けやすくなっているその扉を。


 お茶といっていたのはわかっていたけど、私は叫んだ。


「 少しだけ、強めのお酒飲みたい!」


 いつもと違う様子の私を見て驚いていた。


「何があったの?だめだよ、なつはカクテルね」


 そこは、知り合いのバー。

 同級生の男子だけど女子のバーテン。

 実は元彼だったりする。

 よっちゃんとも仲良しだ。



 今は良き相談相手だ。

 名前はコウちゃん。バイセクシャルである。

 別れた後にカミングアウトを受けたが別に驚かなかった。

 なんとなくだけど、乙女な感じはしていたからだ。


 私の愚痴をいつも聞いてくれる安心できる存在。

 姉のような兄のような……


 そして、今まであった事を全て聞いてもらった。


「 でも、安西さんには悪いと思いながらもなんか少し気になるの。私っておかしいよね?」


「 それはね、恋じゃなくて、憧れなのよ。そのシチュエーションに 」


 なるほどね。


 会ったっていっても一瞬だし、恋なわけがない!


 モヤモヤしたものがとれた気がする。


 やっぱりよかった!

 ここにきて。


「やっぱりよかった!ありがとう!」


「変な子ね。」


 私はカクテルグラスを見つめながら

 肩をなでおろした。


 あ、メールがきている。


「なつ、手紙送ったからみてねー!」


 また彼氏の愚痴だ……


 私の話もたまには聞いてよと私は思った。


 私の悩みも聞いて欲しいと素直に言えればいいのに。人の悩みを聞いてばかりいる私もだめだよね。


 素直になりたい。もっと素直に。


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