第246話 二度目の気絶!

 この世界にも腐女子がいたのか。


 そんなこと考えながらユリウスと二人でシャノンを介抱する。


 鼻血を出しながら目がハートになっているのがすごい。あのユリウスが訳がわからず「?」となっているのが笑える。


「一体どうしたというのだ?突然倒れた割には、幸せそうな顔だが……」


 そ、そうだね。

 知らない方がいいと思うけど。


 ユリウスがシャノンをかかえるようにして顔を支える。俺は一瞬ティッシュを探したが、この部屋にある訳ないと考え直して、彼女のエプロンで顔をいてやる。(この村の女子はエプロン着用がデフォルトみたいだ)


 俺が顔に触れた為か、シャノンの目がパチッと開いた。


「大丈夫かい?」


 ユリウスが声をかける。そんなに優しい声を出したら……そんな笑顔で顔を近づけたら……。


 シャノンはユリウスと目を合わせて動きを止めた後、「はうッ!」と一声上げて再びとろけるように気を失った。もちろん鼻血付きだ。


「シャ、シャノン⁈」


 そりゃあ、そんなに間近でイケメンに声をかけられたら、そうなる女子もいるだろうよ。


 そこへ軽いノックの音がした。


 家主の代わりに俺が戸を開けると、コリンが立っている。どことなく青ざめている。


「……」


「どうした?何かあったのか?」


「カリン……ヒロキを、呼んでる……」


「ああ、そっか。村に入れないからな」


「……黒い霧、来てるって……」




 あっ!!!!




 そもそもその為にユリウスを呼びに来たのに、失念していた。


 慌てて転びそうになりながら、部屋の中に向かって声をかける。


「ユリウス!黒い霧がこっちへ向かって来ている!」


「なんだと⁈」


 勢いよく立ち上がる騎士。


 しかしかかえていたシャノンの頭を床に落としてしまった。鈍い音が部屋に響く。俺は恐る恐る彼女の顔を覗き込んだ。


 ハートの目がぐるぐるうず巻きの目に変わっていた。うん、まあ大丈夫だろう。俺はユリウスのベッドから毛布を一枚持ってきてかけてやった。




 そのあいだにユリウスは手早く鎧をつけ、腰には長剣を帯びる。


「行くよ」


 俺の呼び掛けに、彼は無言でうなずき返す。




 村の門の前に、カリンが立ちすくんでいる。様子が変だ。


「カリン?」


「あっ、ヒロキ!見てください、黒い霧が……」


 見れば先程まで彼方の山の麓に流れ出ていた黒いシミが、いつの間にかこちらの平地へと広がっていた。


 来るのか……⁈




 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る