第202話 春想う君!

 オットーさんのコンスタンティン商会と再び契約し、次も取り引きをしてもらえることとなった。


「次回も日曜日でいいですか?」


 俺が確認すると、大商人は首を振って否定した。


「実は今日の仕入れを神殿都市フォルトナベルグで売った後、南の方を回る事になっておりましてな。しばらくはこちらへは来れないのです」


 しかし、と彼は続ける。


「今日見せて頂いた『図鑑』は非常に面白いものです。ぜひこれをお譲り頂きたいですなぁ」


「では、次回は『図鑑』を」


 オットーさんは春にまた来ると言って、派手なシマシマ荷馬車を率いて去って行った。村の皆で見送りながら、俺とカリンとカールで次にオットーさんに会える春に想いを馳せる。


「春かぁ」


「今度の春には村はどうなっているかな?」


「きっと、麦の芽が緑の絨毯じゅうたんのように広がってますよ」


「豚は?増えてるかな?」


 俺がそう言うと2人に笑われる。


「まだ若い豚だから、もう少し大きくなってからだねー」


 そうか、俺はそう言うの詳しくないなぁ。


「一度に12頭生まれる事もあるんだぞ」


「えっ、マジで⁈」


 また、カリンとカールが笑い声を上げる。驚く俺が面白いらしい。


 まったくもう、と思いながら楽しそうなカリン達を見て嬉しくなる。


「それにしても、春までオットーさんがいないとなると、現金収入が減るな……今のうちに、保存食でも備蓄しときたいな」


 俺がそう言うと、2人とも真顔になる。


「もう少し穀物を増やしたいですね。あとお野菜も」


「オレは肉とチーズが欲しいなー。過越の祭り用に酒も買おうよ」


「そういえば過越の祭りって具体的に何する祭りなんだ?」


 年越しの祭りってのは以前聞いた。あと羊を食べるってのも。


 カリンは微笑みながら、教えてくれる。


「無事に一年を過ごしたお祝いと、新年を迎えるお祝いですね。普段と一番違うのは——」


「食事だよ!!」


 カールが元気よく付け足す。よっぽど楽しみなようだ。


 どんな物を食べるんだろう?



 つづく

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