第153話 フォリア様にお願い!


その夜——。


胸の中のものを吐き出して、カリンの話も聞いて、ちょっと手を握ったりして、なんかあったかい気持ちのまま布団に潜り込んだ。


そのまま俺なりの幸せにひたりながらゆっくりとまどろみに落ちて行った……。




「おい」


はい。


「お前あの者に手を出すなとあれほど言ったのに手を出したな」


ええっ?


はっと気がつくと、フォリアと会う時のあの暗い空間にいた。


「いや、いやいや。何もしてない」


両手を振って否定する。

否定するが、手を包まれた事を思い出してしまう。


「何をニヤけておる!」


「わぁ、すいません」


やばい、口元がゆるんでいた。それを抑えながらフォリアを見る。


「あ、今日は普通なんだ」


普通というのは、俺たちと同じくらいの年齢に見える姿のフォリアの事だ。


でも羽根のついた兜や肩当といういくさ装束しょうぞくはそのままだ。


「うむ。鎧はグロスデンゲイルと戦う為にな」


と、胸を張る。


ついでにジロリと俺を見下ろす。


「お前、あの者に手を出しても部屋に戻るたびに『新…」


「わかってるから、やめろよ」


女神様がそういう事を口にするな。


「そういえば、俺がこの世界で普通に歳をとるには、あの部屋に入らなければいいんだよな?」


もしも、みんなと一緒に過ごしていくならそうする必要があるだろうと思うのだ。


「まあな。部屋の外で死ななければ、そのまま年老いていくだろう」


ほう。やはりそうか。


「グロスデンゲイルを倒せば、それも叶うだろう。何にせよ戦いのない日々を手にせねばならぬ」


「よし!やるぞ!」


「おお、やる気じゃなヒロキ」


「と、いうわけで銀聖水を風呂桶ふろおけ一杯分用意して欲しい」


俺の頼みに女神様は「えっ」とつぶやく。


「そ、それはどのくらいの量なのだ?」


ああ、そうか。

普通の風呂が無いもんな。


確かお風呂一杯分は200リットルだったはずだから…。


「あのペットボトルで400本だな」


「ゔっっっ⁈」


フォリアが変な声を出す。


「よよよ、400本だと?」


「その他にも戦闘用にたくさん欲しいな」


心なしかフォリアが青ざめている。


「あ、悪りぃ。無理だったか」


「む、無理では無い!!」


やったろーじゃないかと袖まくりして女神様は姿を消した。



つづく

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