第92話 振り出し
「で?コレからの方針はどうなってんだよ?大将」
桜が桃に会いに行き、かれこれ二時間が経過した。
未だ返って来ない桜に八城は内心やきもきしながらも、平静を装っていた。
「とりあえずは泳がせる方針だろうな、一応東京中央に送り返すって案もあったにはあったんだが、却下した」
というのも、中央にいる柏木にこの事が知られた場合、桃が処断されてしまう可能性が有る。
それはこの場に居る誰の本意でもない。
「はぁ?じゃあその、プリクラの出所は分かってねえのかよ?」
「フレグラな、盛れる十代の写真機みたいな名前じゃないから。まぁそれに関しては怪しいっちゃ、怪しい……っていうのも、桃が持っていたフレグラは一通の手紙と一緒に、桃の着替えの隊服の中に入っていたらしいんだよ」
「おいおい、なんだよそりゃ?」
と言うのも、隊服の清掃は各自で行い、全員が出入り出来る屋上に干し、各自で取り込むのである。
「つまりそりゃ……」
時雨が言いかけた直後、サイコロを振った紬が不機嫌な表情を見せる。
「振り出しに戻る」
紬と一緒に双六をやっていた時雨と八城は止まり目を見て歓喜に包まれた。
「大将!これでこっちにも勝ちの目が出たってもんだぜ!」
「今日はまともな飯が食える!今日はまともな飯が食える!今日はまともな飯が食える!」
紬が引いた目は振り出しに戻る。
最も先を行っていた紬は渋々その目の指示に従い駒を振り出しに戻す。
最近は連日負け続けている八城の食卓は、日に日におかずを取られ、質素な食生活を送っている。此処で勝つ事が出来れば今日の食事は紬から晩のおかずを一品もぎ取る事が出来る。
「まだ勝負は終わっていない。私は持っている。二人は持ってない。この意味を今から教える」
負け惜しみを言う紬を勝ち誇った顔で見つめながら、時雨と八城が、意気揚々とサイコロを振り。
「マジかよ……」
「嘘だろ……」
「マジだし本当、現実は非情」
二人はサイコロを振り、出た目を進み指示に従い、振り出しに戻っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます