第26話



 テストは四日に分けて行われる。

 テストの一日目、高志はまずまずの手応えを感じていた。

 回答欄をすべて埋めることが出来、自己採点の点数も悪くなかった。

 テストが終わった教室では、皆テストの話しばかりしていた。

 この問題はどう答えたとか、この問題を間違えたなど、前のテストの回答の事ばかりを話していた。


「よお高志、テストどうだった?」


「まぁ、とりあえず一安心ってとこかな? 優一は?」


「俺は赤点さえなければそれで良いんだよ」


「相変わらずだな……泉君は?」


「僕はまぁまぁかな?」


「まぁ、泉は頭良いからな」


「そんな事無いよ、それよりも明日もテストだし、明日の教科の勉強しないと」


「それもそうだな……」


 テストの日は学校が早めに終わる。

 そのまま帰る生徒も居れば、教室に残って勉強をする生徒、図書室に行って勉強する生徒など色々だ。


「じゃあ、俺は先に帰るよ」


「おう、今日もバイトだっけ?」


「あぁ、じゃあまたな」


 高志は本日もバイトがあるため、足早に教室を後にする。

 

「なんか、今日は高志帰るの早いね」


「あぁ、泉は知らないのか……あいつ、彼女の為に頑張ってるんだよ」


「ん? ……あぁ、クリスマス……」


「あぁ、あいつは宮岡を溺愛してるからな……」


 高志が居なくなり、泉が優一に尋ねる。

 優一は欠伸をしながら優一に訳を説明する。


「いいよね、仲の良いカップルって」


「そうか? ただのバカップルだろ?」


「羨ましいよ……なんか……」


「……あぁ、そっか……お前は振られたんだもんな」


「うっ……い、痛いとこつくね……」


「事実だろ?」


「まぁ……そうだけど……」


「はぁ……まだ引きずってんのか?」


 優一はため息を吐きながら泉に尋ねる。

 最近、泉も由美華もなんだか様子がおかしい。

 優一はそのことに気がついており、そんな二人を気にしていた。


「ま、まぁ……ね」


「まぁ、御門は顔良いからな……」


「ぼ、僕は別にそれだけで好きになったわけじゃ……」


「ふーん、まぁ人の恋に口出す気はねーけど」


「十分出してるよ……」


 優一と泉がそんな話しをしていると、紗弥と由美華が二人に近づいて来た。


「ねぇ、二人とも」


「ん? 宮岡か……高志なら帰ったぞ」


「うん、知ってるけど……最近高志がなんか変なんだけど……何か知らない?」


 紗弥からそんな話しを聞き、優一はいつもの調子で答える。


「宮岡が知らないんだ、俺達が知るわけないだろ?」


「そう……」


 元気の無い紗弥を見て、優一は少し心配になる。


(あいつ……何も無いと良いけどな……)


 少し紗弥を放置しすぎでは無いかと思いながら、今度は由美華に話しを振る優一。


「御門、泉が勉強教えて欲しいってよ」


「え!?」


「え! あ……う、うん……良いよ」


「え!! えっと……じゃあ、図書館で……」


 優一の言葉に泉と由美華は驚いたが、二人ともまんざらでも無い感じで図書館に向かった。


「はぁ、あいつらもなんだかんだ言ってくっつくんだろうなぁー」


 優一はそんな事を思いながら、鞄を持って席を立つ。

「じゃあな宮岡、高志によろしく」


「うん、じゃあね」


 優一は紗弥にそう言って教室を後にする。

 靴を履き替え、さっさと帰ろうとする優一の背中に激しい衝撃が走る。


「いでっ!!」


「優一さん!!」


 衝撃の正体は芹那だった。

 優一の背中に芹那が抱きつき、優一はそんな芹那を引き剥がして尋ねる。


「何してやがる」


「一緒に帰りましょうよ!! いっつも私を置いていって!!」


「一緒に帰りたくないしな」


「もぉ~そんなに恥ずかしがらなくってもいいのにぃ~」


「ムカつくなお前……お前の家と俺の家は反対方向だろうが」


「あ、大丈夫です。優一さんの家に行くので」


「なんで、うちに来る気で居るんだよ」


「一緒に勉強しましょうよ!」


「お前が俺の家に鞭とロウソクを持ち込まないならな」


「あ、安心して下さい! 持ってきてませんよ、ほら!」


 そう言って芹那は自分の鞄の中を見せる。

 確かにいつも入っている、ロウソクと鞭は無い。


「珍しいな……まぁ、ロウソクと鞭が入ってるほうがおかしいんだが……」


「はい、持ってくるのはやめました! 変わりに優一さんの家に置いておくことにしました!」


「ちょっと待て、今なんて言った?」

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