第19話

 その日の夜、高志はなんだかソワソワしていた。

 

「高志」


「へ!? な、ななななんだ?」


「いや、それはこっちの台詞、なんでそわそわしてるの?」


「あ、あぁ……いや……あの……な、なんでも無いから気にしないで……」


 自分の部屋に寝間着姿の紗弥が居るのことが、高志にとっはては異常事態であり、落ち着いて居られるわけが無かった。

 時刻は夜の21時、寝るにはまだ早いので、高志と紗弥は二人で勉強をしていた。


「高志、そこ間違ってるよ」


「え? あ、あぁ……本当だ」


 紗弥に指摘され、高志は言われた問題を解き直す。

 風呂上がりの紗弥はなんだか妙に色っぽく、高志は勉強に集中できて居なかった。


「高志?」


「な、なんだ?」


「さっきからなんか私の方を見てない?」


「えっ!? い、いや……そ、そんな事無いよ……」


「ふ~ん……本当にぃ~?」


 紗弥に言われ、高志はドキッとする。

 高志は実際のところ、チラチラと紗弥を見ていた。

 髪をくくった紗弥が新鮮で高志は気になり、チラチラと紗弥の方に視線を移していた。


「ほ、本当だよ! そ、それよりもほら! 勉強しないと」


「ふ~ん」


 紗弥はそう言う高志を見ながら、ニヤリと笑い机の上に腕をつき、テーブルの下で足を伸ばす。


「ん? さ、紗弥?」


「何?」


「あの……何をしてるの?」


「なんにも~」


「いや……紗弥の足が……俺の膝に当たってるんだけど……」


「当たってるだけでしょ?」


 机の下では、紗弥が高志の膝を自分の足で撫で回していた。

 高志はそんな紗弥の足から逃れながら、勉強を続ける。

 しかし、そんな高志に対抗するかのように、更に足を伸ばして高志の膝を再び撫で回す。


「や、やめてよ」


「嫌って言ったら?」


 イタズラぽい笑みを浮かべながら、紗弥は高志にそう言うと、再び高志の膝を撫で回し始める。


「うっ……もう、なら仕方ない!!」


「え!? あ、ちょっと!!」


 高志は紗弥の足首を持ち、紗弥の足裏をくすぐり始める。


「アハハハ!! や、やめて!! お願い! くすぐったいぃ~!!」


「さっきのお返しだよ!」


「あ! や、やめって!! あっ!!」


 少しして高志はくすぐるのをやめる。

 気がつけば、紗弥はテーブルの下に完全に潜っており、息を荒くしていた。

 少しやり過ぎてしまったか?

 なんて事を高志は思いながら、テーブルをどかし紗弥の様子を見る。


「ご、ごめん……やり過ぎた……」


「はぁ……はぁ……」


 紗弥は顔を赤くしながら、息を荒げていた。

 妙なエロさを感じ、高志は顔を赤らめる。


「馬鹿……」


「さ、最初にやってきたのは紗弥だろ!」


 高志は顔を赤く染めながら、紗弥にそう言う。

 すると紗弥は両手を挙げ、高志に言う。


「起こして……」


「え? あ、あぁ良いよ」


 高志はそう言って紗弥の手を掴んで引っ張りあげようとする。

 しかし……。


「おわっ!!」


 高志が紗弥の手を掴んだ瞬間、紗弥が高志の手を思いっきり自分の方に引いて来る。


「んむ!」


 紗弥はそのまま高志の唇に自分の唇を重ねる。

 高志は紗弥に覆い被さる形に倒れ、ただ紗弥になされるがままだった。

 やがて紗弥は唇を離し、笑みを浮かべて高志に言う。

「お返し」


「あ、あぁ……そ、そっか……」


 高志は顔を赤くして紗弥の上から下りる。

 紗弥は崩れてしまった髪を直しながら起き上がり、高志の方を見つめる。


「そろそろ寝よっか」


「そ、そうだね! 明日も早いし!! じゃ、じゃあ布団敷くから少し待って……」


「一緒に寝ちゃだめ?」


「え? そ、それって……」


「そう、ベッドで一緒に」


 高志は紗弥のその発言に顔を赤く染める。


「い、いや……狭いし……」


「大丈夫、高志と私くらいなら寝れるよ」


 紗弥はそう言うと、勉強道具をさっさと仕舞って寝る準備を始める。

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