第7話 ファテマさん。やっぱり連合王国はひと味違うね!

 そして宿を探すこと数軒。若干ボロい宿屋で、さらにトリプルの部屋で四名分の金額を貰えるのなら貸し出すというところがあったのでそこにした。

「いやー、流石に祭りの時期の首都だね。物価も高くなってるし、ぼったくりも酷いよ。」

 比呂貴はボソッといった。

「まあ、良いじゃろうて。お金はまだまだあるんじゃ。それにせっかくの首都エンデルじゃぞ! しかもお祭りじゃぞ!

 こんなタイミングめったいに無いんじゃ。精いっぱい楽しまなきゃな!」

 ファテマは笑顔で答える。


「ファテマさん。確かにその通りだけど、ファテマさんみたいなのがたくさんいるからエンデルも強気なんだろうな………。」

 比呂貴はまだ不満そうに答える。

「ところでベット三つしかないけど、どうするの?」

 アイリスがみんなに尋ねる。すると間髪入れずにレイムが答える。


「ここはやっぱりですねえ、わたくしレイムとアイリスちゃんが一緒に寝るべきだと思うんですよね。」

「レイム、本当にマジもんで心の底からキモい!

 もう、ちゃんと受け答えしてあげてるだけありがたいと思いなさいよ。いい加減、このやり取りにも飽きてきたというか、もう疲れたわ。」

「うっそーん。アイリスちゃんが反抗期に!」


 いつもの漫才が終わった時に比呂貴が答える。

「まあ、大きいソファーがあるからオレはここで寝るよ。女子三人はベットで寝なよ。」

「いやいや、何を言っておるか?

 儂とアイリスが一緒に寝るから比呂貴もベットを使えばよかろう。それともロキとレイムが一緒に寝るか?」

 ファテマがニヤリとして答える。

「えええ、オレがレイムと寝たら単にベットが狭くなるだけじゃん。レイムは魔力を吸収できるかもしれんが、オレにメリットがぜんぜんないんだけど………。」

 比呂貴が嫌そうに答えるとレイムが反論らしきものをする。


「ちょっとロキ。それは本当に失礼ね!

 一応、サキュバスでこんなにも可愛いのに、私と一緒に寝たいっていう人族はいっぱいいるんだからね。それを………。

 もっとありがたいと思わないといけないんだからね!」


「うーん。確かにレイムは可愛いし、スタイルも抜群だけど、でもしょうがないじゃん。女の子としてタイプじゃないからな。こればっかりはしょうがない。」

「がーーーん。酷すぎじゃん。でも、一応可愛いとは思ってくれてるのね。なんか複雑だけど………。

 しかしロキにスルーされ、アイリスちゃんには邪険にされ、このパーティーで扱い雑過ぎないかしら?」


「アハハハハ!

 でも皆、レイムのことは大好きじゃぞ!」

 ファテマはまさに聖母のように言う。

「うん。それはわかってる。私もみんな大好きだよ。」

 レイムも応えた。

 ファテマのお陰で綺麗に収まり、そしてみんなは就寝する。ちなみにベットはファテマとアイリスがひとつのベットを使用することになった。



 ちょっと遅めの翌朝。チェックアウトを済ませて外に出る。

 外は祭りで一色であった。祭りの中心の城門へ続くメインストリートは城まで出店があった。人族も亜人やモンスターも多数いて賑わっていた。

 比呂貴たちは出店で朝ご飯を食べていた。

「で、どうするよ? せっかくだし、城の近くまで行ってみたいと思うんだけど?」

 比呂貴は出店で買ったものを食べながらみんなに提案する。


「うむ。儂もそれを思っていたところじゃ!

 せっかく千年王国に来たのじゃ。それの象徴たる城を見て回らないと始まらんじゃろうて!」

 ファテマは答える。嬉しさはマックスのようである。期待で尻尾のフワフワが大変なことになっている。

「うん。そうだね。最初はぜんぜん興味なかったけど、私もなんだかここに来てとても興味が沸いて来たよ。

 やっぱり実際に現物を見ちゃうとなんかテンション上がっちゃうね。」

 ファテマの言葉にアイリスも答えた。


 そして四人は、今は祭りのため恐らく歩行者天国になっているのだろうが、馬車道のところを歩いていた。

 たまに十字路になっているところもあり、街並みは碁盤の目になっているようだ。そんなメインストリートをゆっくりと城に向かって歩く。

「おおぉ、ロキよ。だいぶ城がはっきり見えるようになってきたぞ! おおおぉ、デカいのう。立派じゃのう!

 それに城の奥に塔が建っておるぞ? 真っ白な塔が!」

 ファテマはテンション高くロキに言う。


「そうだね。昨日は暗くて良く見えなかったけど、城も立派で塔もめちゃ高い。城はまさに中世ヨーロッパ風の城だな。塔もゆうに百メートルは超えているよな。いや、二百メートルクラスかもしれん。

 うーん、技術力の高さに感服だ。一般的に高層の建物は威厳を掛けて建設されるけど、まさにベアーテ・エンデル連合王国の威厳もばっちり感じるな。あと、やっぱり首都だし他の諸侯たちに対しての威厳もあるんだろうなあ。

 うわー。なんか感動だわ。来てよかったよ。想像以上に収穫あった!」

 比呂貴もファテマに負けないくらい首都エンデルを満喫していた。


「ロキよ。なかなか良いことを言うではないか!

 小さい頃によく本で読んだエンデルじゃぞ。ここまで街が大きくなるのにも時間がかかるじゃよ。

 逆に人族以外では国を作るという発想はあっても、街をここまで大きく豊かにするという発想はないのじゃ。

 ホントに人族は凄いと感心するぞ!」

 ファテマが感慨深く言う。


 一方、レイムとアイリスはというと、

「お姉ちゃんってホントに人族クサいっていうか、確かに人族の国は、こんな街なんかもあって凄いなあって思っても、別にそれに対して感動は無いよね。」

 アイリスはボソッとだが、みんなに聞こえるように言う。それに対してレイムも反応する。

「そうそう、それ! 私もアイリスちゃんと同じこと考えた。私、魔族でぶっちゃけ奪うのが本分って感じだしね。

 でも逆にそんな風に思える二人はちょっと尊いよね。不思議な気持ちになる。」


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