第5話 さてさていよいよ連合王国へ行きますかね
何だかんだでダンの宿屋に戻ってきた三人。そしてファテマの村や温泉に入ってきたことを比呂貴に言った。
「えええ? うっそぉぉん! オレもファテマの村に行きたかったあああ!
それに何で勝手に温泉回をやってんのよ。オレが居ないのに。男の居ない温泉回なんて、そんなの温泉回じゃなああああい。これはクレームだよ。クレーム!」
比呂貴は子供のように駄々をこねる。
「す、すまぬなあ。
まさかロキがここまで怒るとは思わんかったよ。今度はロキもちゃんと連れて行くからな。」
ファテマは子供をあやすようになだめる。かなり困っている。
「もう、思い付きで行ったんだからしょうがないじゃない。いい加減に諦めなさいよ!」
アイリスはそんな比呂貴に怒り気味で言う。
レイムはというと………、移動の疲れからか消えかかっている。
「そっ、そんなことよりもお主はどうなんじゃ。勉強は捗って(はかどって)おるのか?」
なんとか話題を逸らそうとするファテマ。若干ぐずりながらも観念してきた比呂貴は答える。
「うーん。だいぶわかってきたけどまだまだだねぇ。でもまあ、あとは慣れだよ。」
「そっか、それは良かった。」
「そういや、レイムは例の公爵とは鉢合わせにならなかったの?」
灰になりかけていたレイムだったが、比呂貴の言葉でこっちの世界に戻ってきた。
「え? あ、うん。大丈夫だった。それよりもあれだよ!
ちょっとロキに謝らないといけないことがある。ファテマさんの運転死んじゃうかと思った。もっとロキの言うことをちゃんと聞いておけばと反省した。」
「ハハハ。でしょうでしょう。そうでしょう?」
レイムの言葉に比呂貴は『ほれみたことか』と言わんばかりである。
「もう、なんじゃ? 二人して情けないのう。アイリはピンピンしておるというのに。」
「そうだよ。私は逆にオコだよ!
レイムに合わせてたお陰でぜんぜん中途半端だったんだからね。せっかく久しぶりにユニコーンのお姉ちゃんに乗れるって思ってたのに。
もう、レイムとは一緒に乗らないからね。」
「そんなあ。アイリスちゃんキビシス………。
あ、でもファテマさんに乗るのはもう勘弁して下さいです。命がいくつあっても足りません。ホントにもう死んでから完全に魂が浄化されてそこからさらに消滅するんじゃないかって思った。」
そんなやりとりをしながらも、その後比呂貴は話題を変える。
「で、連合王国にはいつ行くよ?」
「そうじゃな。今はちょうどお祭りの時期みたいじゃし、せっかくじゃからお祭りを楽しみたいと思うのじゃが?」
ファテマが答える。その後、アイリスが続く。
「うーん、人混みは嫌だと思いつつも、祭りだったらいろんな種族がいるだろうし逆にそっちのほうが良いのかもね。
良いと思うよ!」
最後にレイムが言う。
「えっと、とりあえず明日は一日休養で明後日から出発しましょう。」
「まあ、確かにこの調子のレイムじゃポンコツどころか普通に邪魔だもんな。オレもそれでいいと思う。
祭りはまだ始まったばっかりだよね? 半月くらいやってるんだよね?」
比呂貴が答える。
「そうじゃな。祭りは始まったばっかりじゃし急ぐこともあるまい。」
フワフワ尻尾に元気がなく、多少残念そうなファテマだが同意してくれた。
そして連合王国への出発の日。
「え? お姉ちゃんい乗っていくんじゃないの?」
「いや、流石に三人が儂に乗るのは危険じゃて。スピードもそれなりにあるしのう。」
「た、確かにそうかも知れないけど、でも馬車か………。」
アイリスとファテマがやり取りをしていた。そこにレイムが入ってきた。
「なんなら、私がずっと抱っこしていてあげようか?」
「そんなの却下に決まってんじゃん。ってか、レイムって相変わらずへこたれないというか………。」
「ゲへへへ。そんなことはないんだけど。ってこともないけどね!」
「いや、ぜんぜん誉めてないんだけど。今日もキモいよ。気持ち悪さは平常運転ね。」
そして馬車で移動すること丸一日ベアーテ・エンデル連合王国の首都エンデルの城門まで来た。
夜だというのにものすごく人やモンスターが多くて活気がある。城門の向こう側も明かりが見える。まさに祭りの真っ最中といったところであった。
首都へ入るための長蛇の列があり、まだ受付をしているようである。その人をターゲットにしているであろう出店も多数ある。
「これを並ぶのか。いやー、これはコミケもびっくりだなあ。しかも夜だし。これは徹夜になっちゃうのか?」
比呂貴が呟く。それにレイムが答える。
「いや、この城門は夜中やってなかったと思うんだけどな。前に来た時は入れて貰えなかったもん。門番の人に明日来てねって言われちゃったし。。
でも、祭りだし、深夜も入門できるのかしらね? さすがに祭りには来たことがないからわからないわ。」
「万が一、営業終了になっちゃったらこの列はどうなるんだ? って普通に待機列になるんだろうなあ。
ライブのグッズ待ちが時間切れになったときの入場待機列だな。ハハハ。懐かしい。」
一方、ファテマさんはキョロキョロとしている。ワクワクが止まらないのか?
『でも確かにファテマさんがキョロキョロする気持ちはわかるな。明らかにドルクマンとは雰囲気が違う。
連合王国の領土に入ってからは小さい村がいくつもあったし、この首都への城壁や城門にしてもただの壁では無くて装飾も立派に施されていて品格があるからな。』
比呂貴はそんなことを思いながらファテマたちを見ていたり周りを見ていた。
結局、祭り期間中が関係しているかわからないが、入門自体は夜通しでやっているようだ。少しずつ列が捌かれていた。
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