第4話 腹が減ってはなんとやら。とりあえず飯①
ファテマの言う通り比較的大きな川があった。流れの勢いはそこそこある。辺りはすっかりと暗くなっており月のような衛星の光とその他の星々の明かりで川の水を反射している。周りはほぼ暗闇なのだがキラキラと地上にも星がきらめいているようであった。
河原に着いた二人。その後ファテマはユニコーンの姿になった。純粋紛うことなき真っ白な馬体。これぞまさに純白。たてがみ、尻尾の毛並みまで美しい白。そして天に向かって伸びる角。
その姿に比呂貴は思わず言葉が漏れてしまう。
「うっ、美しい。かっこいいよ。ファテマ!!!」
「え? なんじゃ急に!? ああ、この姿か? まあ、我もドラゴンほどでは無いが、そこそこ伝説級じゃからな!」
素直に褒めてくれた比呂貴対してファテマは照れつつもドヤッとしていた。
そして軽く宙に浮き、川のほうへ向かった。一呼吸つき雷を川に向かって放つ。おそらく眠っていた魚たちであろうか、びっくりして川から跳ね上がる。そのタイミングをのがさずにすかさず風を起こして魚たちを河原へ吹き飛ばす。こうして数十匹の魚が川岸でぴちぴち跳ねていた。
「ふぁ、ファテマすげぇ! そんなスキル持ってるんかよ!」
「ふふん! そうじゃろうて! もっと儂を褒め称えんか! さてロキよ。サッサと魚を集めんか!」
人の姿に戻ったファテマはふんぞり返り比呂貴に命令する。
一通り集め終わった魚に対してファテマは早速一尾を手に取り、一気にバリボリと喰らい付く。そしてあっという間に平らげてしまった。
「ほれ、ロキも食わんか。せっかくの魚じゃぞ?」
「えっ、いや、いきなり生で魚をがっつくファテマにフリーズしてしまった。ファテマさんとっても可愛いなりをしているのに意外とワイルドなんですね。」
「なっ、ロキよ。また儂を馬鹿にしておるな!」
「あ、いや、獲れたてだし生でもうまいと思うけど、それでも川魚だから絶対に焼いた方が美味いと思うんだよなあ。
ってか、流石に生と言ってもオレはそのままがっつけないよ。刺身にしないとね。」
「ああ、確かに人族は色々と料理という工程を踏むよな。めんどくさくはないのか? 逆にこちらが馬鹿にしてやりたいところじゃわ!」
「なっ! ファテマさん。料理はもちろん、切ったり焼いたりで人間として食べられるようにするのはもちろんのことだけど、もうひと手間を掛けてより美味しく頂こうとする行為だよ。オレは大学の時に飲食店とケーキ屋さんでバイトしてたことあるからね。この魚だって焼くだけでも脂が良い感じに美味しくなるんだから!
ファテマって人間の時は味覚も人間になるんでしょ?」
「ほう。そんなもんかのう。まあ、確かに味覚は人族と同じものになる。」
「ってことでファテマは魔法で火は起こせないの? ってかその前に牧を集めないとね。」
「火の魔法は使えんが、牧に火を付けることくらいは造作もないぞ。ほれ、とっとと牧を集めてこんか。」
そして牧を並べ、魚も串刺しになっている状態になった。そしてファテマは雷の魔法を器用に操り放ち牧を燃やしていく。そうこうしているうちに牧に火が付いた。
「おおお! ファテマさん。とっても器用だね。雷でそんなことができるんだ。」
「ふふん! 我を誰じゃと思っておる。と言いつつも、これは雷を操る初歩的な練習で散々やらされるでのう。
で、魚はいつ食べられるのじゃ?」
「って、なんだかんだで興味深々じゃないですかあ。もうファテマさんったら。でもまだですよ。焼き始めたばっかだからね。
お魚はちょっと置いといて、色々と聞きたいことはいっぱいあるんだけど、まずはドラゴンだね。確かにあれを何とかしないとせっかくの異世界ライフも瞬殺で終わっちゃいそうだから。
で、ドラゴンだけどなんか弱点は無いの? レッドドラゴンだし水が弱点とか?」
「うーーーーん。そもそもドラゴンはこの世界で最強の生物のひとつじゃからのう。弱点と言われても微妙じゃが………。
確かに水を嫌う様子はあるようじゃがそれもどこまでかは不明じゃよ。ブルードラゴンとレッドドラゴンは属性的にも逆で相性も最悪みたいじゃが、それは激しい戦いになるみたいじゃ。いっそ、ここにブルードラゴンでも召喚出来れば良いかもしれんが。まあ、そんなことは儂にはできんのじゃがな。」
「なるほど。やっぱり真っ向勝負でやっつけるのは無理か………。
あと、ファテマは他になんの魔法が使えるの? 水系の魔法は使えたりするの?」
「水は………、種族的に苦手じゃぞ。ただ、妹は得意じゃがのう。あいつは光と闇も含めてすべての属性を備えておる特異なやつじゃからな。って、今は妹の話をしてもしょうがないか。
儂は先ほどからも披露しているように雷と風の魔法が得意じゃ! 属性的には風と空と地じゃ。雷の応用で火を扱うこともできるが火の魔法そのものは使えん。そもそもとして属性がないからな!」
「ファテマさん。それびみょー!」
「ええい! 五月蝿いわ! 3つも属性を持っているなんてかなり凄いんだからな。お主なんて魔法が使えんのじゃろう?」
「いや、使えるかどうかはわからんってだけだよ。まだこっちに来たばっかで何ができるとか確認していかなきゃね!
って、いったんこの話はここまでにしようか。魚が良い感じに焼けてきた。いい匂いさせてるよ!」
そう言って比呂貴は焼き上がった魚をひとつファテマに渡す。自分もひとつ取り、次に準備していた魚を焼き始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます