第28話 アップルとパンジャ

「私の行為は、神様が行う行為も同然。私の神の裁きを受けるがいい。」

 クイーンの神の使徒マーチの神の裁きが始まる。

「こいつ、完全に頭がおかしいんですけど。」

「とても神様が作ったようには見えない。」

 アップルとジュライは、マーチの異様さに気づく。

「直ぐに食べ殺してもいいのですが、私とナイトのあなたたちとの戦闘力の差を比べれば、私の勝ちは、ほぼ、決まりです。それでは、面白くありません。」

「助けてくれるの?」

「いいえ。」

「ケチッ。」

「アップルったら。」

 どんな時でもアップルはアップルであった。

「そこで、どうすれば出来損ないのあなたたちが苦しむのかを考えました。」

 マーチはにっこりと笑う。

「先にあなたたちの故郷、パンジャ国を滅ぼしてしまおうと。」

「なんですって!?」

「ナイチャやアリコは、神様の言いつけ通り人口を減らしたのに、パンジャは1000万人位しか減っていませんね。いけませんよ。神様の言いつけは守らないと。」

 パンジャは、アップルと神の使徒ジュライが分かり合うことができたので被害が少なかった。

「感謝しなさい。出来損ないが失敗した神の仕事を私が行ってあげるんですからね。」

「やめなさい! パンジャの人々に罪はないわ!」

「そうだよ。パンジャは平和な国なんだから。」

 アップルとジュライは、マーチの前に立ち塞がる。

「黙れ! 出来損ないども!」

 マーチは、そんなアップルとジュライを一喝する。

「神様は、世界を滅ぼす邪悪な人間を滅ぼせと仰ったのだ! だれも人間を生かすために神の使徒を派遣されたのではない! 人間なんて食われればいいんだ!」

 そういうとマーチは、クイーンの機動力を生かして、アップルとジュライの横を抜けてパンジャに向けて発信した。

「しまった!? 反応できなかった!?」

「こうも易々と抜かれるなんて!?」

 アップルとジュライは、性能で勝るであろうマーチに、あっさりと抜かれてしまった。

「ワッハッハー! 人間なんて滅びればいいんだ! 私が食べ尽くしてくれるわ! ワッハッハー!」

 マーチは、笑いながらパンジャを目指す。

「ジュライ! 私たちもマーチの後を追うわよ!」

「おお! 絶対にパンジャを守るんだ!」

「無事にアップル2のノアの箱舟がパンジャについているといいんだけど。」

 アップルとジュライもマーチの後を追いかける。


「もうすぐパンジャですよ。」

「おお!」

 キングの神の使徒ジャニュアリーこと、アップル2の出したノアの箱舟で、パンジャの兵士と、滅びた国アリコから多くの難民を乗せて、パンジャ国を目指していた。

「我々は助かるぞ!」

「ありがたや! ありがたや!」

「お母さん、アップル様は大丈夫かな?」

「きっと大丈夫よ。だって女王様だもの。」

 救助されたアリコの人々も、自分たちの命は助かったと安堵していた。

「それにしても、次から次へと化け物ばかりだ。」

「いったい、この世界はどうなっているんだ?」

「大砲も、レーザーも、魔法も効かない。どうしろというんだ。」

「アップル様も空を飛ぶし、この世は摩訶不思議ばかりだ。」

 パンジャ国の家臣のグアバ、キウイ、クリ、キワノたちも頭を抱えていた。

「神の使徒です。」

 そこにアップル2が現れた。

「神の使徒?」

「はい。皆さんが悪魔の捕食者やデビル・プレデターといっている化け物の正体は、神の使徒です。」

「な、何を言っているのですか?」

「これだけ人間を殺して、世界を破壊しまくっているのに、そんな連中が神の使徒だなんて?」

 家臣たちは、アップル2の話を信じられなかった。

「何を隠そう、私も神の使徒です。」

「なに!?」

 アップル2の告白に、家臣たちに緊張が走る。それもそのはず、これだけ多くの人間に危害が加えられているのだから、自分の命も危ないと感じ、戦闘態勢に入るのも当然である。

「おまえも人を殺すのか!?」

「え?」

「まさか!? 俺たちを救うフリをして、皆殺しにするつもりか!?」

「え?」

「おかしいと思ったんだ!? どこからこんな大きな船が出せたのか不思議だったんだ!?」

「え?」

「人食い船だ!? 私たちを食べ尽くす気だな!? ああ!? 私たちは死ぬんだ!? もう、おしまいだ!?」

 普通の人間が、いきなり神の使徒と聞いても信じられるはずがなかった。人とは、自分の弱い脳みそで理解できないことは、怖いのである。

「なんですか? この変わりようは? これが人間?」

 アップル2は、人間という生き物が理解できなくなる。ついさっきまで仲良くしていたのに、一つの出来事で全ての揺らいでしまう。


「クソッ!? ナイトじゃ、直進移動のクイーンに追いつけない!?」

 アップルとジュライは、海面を蹴って飛翔するを繰り返している。しかし先行するマーチには追いつけなかった。

「でも、マーチの気持ちも分からなくはないな。」

「ええー!? ジュライ!? あなた、あんな自己中の奴の気持ちが分かるの!?」

「僕は、アップルと出会えたから、人間と神の使徒が分かり合える、こういう人生もありかなって思えるんだ。」

「そうね。私も食べられたのが、ジュライじゃなかったら、今頃、神の使徒の胃液で溶かされて、大腸からお尻の穴へ運ばれて、トイレで流されている頃よ。」

「アップルは女性なんだから、もっと言葉を選びなよ。」

「アッハッハッハ。それだけジュライを信頼しているということよ。」

「ありがとう。アップル。」

 愛の力は、人種の壁を超える。

「私にも見えてきたわ。本来、純粋に神様の言いつけを守る神の使徒のマーチが暴走している理由が。」

 アップルは、マーチと同じ神の使徒のジュライとの会話からヒントを得て、マーチの正体に気づく。

 つづく。

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