第72話 怒号と謎男
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ケイトとシャルルにアスカからの着信があってから数日後の第6区中央ギルド。
「なんでダメなんっすか!人探しぐらい協力してくれてもいいじゃないっすか!」
ギルド内にメグの怒号が鳴り響く。
「ですから、何度も申し上げたように、第6区にある当ギルドに対して依頼を出すことができるのは、住民はともかく、国選の方であれば初級以上の方々のみ、となっております。ご理解ください。」
「だから私たちは国選パーティになったんだって言ってるじゃないすかぁ!初級って1番下でしょ?」
「それは…大変申し上げにくいのですが…貴方がたは初級以前の問題というか…」
バカにされたと思ったメグは視線を強めて受付嬢を睨みつける。
「ひぃ!申し訳ございません。き、規則ですので!」
すると、後ろから肩を叩かれた。
「まあまあ、そんなカッカしなさんな。可愛い顔が台無しだ。」
メグは振り向き、『邪魔するな』とばかりに話しかけてきた男を睨みつける。
「おー怖い怖い。」
両手を上げてそう言いながらも余裕を漂わせている男は20代ぐらいで便箋のマークがついた帽子を被っていた。
「あんたがメグって娘だろ?アスカってやつからあんた方宛に手紙を預かってるぜ。」
「!!」
ものすごい勢いで男に迫り、手紙を奪い取ろうとするメグ。
「おいおい、そんなに慌てなくても渡すから。ほら。」
受け取った手紙を読んで表情筋が一気に弛緩して安堵を表すメグ。
「アスカって奴は幸せものだなぁ。こんなに多くのやつに愛されてるんだからよ。
あんたの仲間にも同じ手紙を渡してきたが、ただ事じゃないみたいだな。
よかったら話、聞かせてくれねえか?」
「…何が目的っすか。」
警戒心を露わにするメグに心外だ、と言わんばかりに両手を上げ、男は真面目な顔になって応える。
「俺はな。手紙を通して人の人生を聞くのが好きなんだ。100人の人生を知れば、100の物語を聞ける。
そこら辺のちんけな小説なんかよりよっぽどリアルで新鮮なんだ。」
「………」
「んーじゃあ、話してくれたら、あんたがなんで初級にもなれないかを教えてやるよ。」
「なんで?聞いてたんすか!」
「ちょっとな。いいじゃねえか、そんぐらい。」
「んー、分かったっす。約束っすよ。」
「りょーかい♪」
そして、ギルド内の酒場の席で、メグは自分でもよく分かっていないが、転移のときのあの黒い魔物のようなオーラを放つ光が原因でアスカたちがいなくなった流れを大まかに話した。
「ふーん、魔物みたいな、ねえー。」
少し話を聞いただけで全てが分かったかのような顔をする男にメグは若干不機嫌になる。
「何か知ってるんすか?」
「知ってるっていうかなんというか……そのアスカって子は話で聞く通り腕利きなのかい?」
「あんさんは、世界で1番強いっすよ。なめないでください。」
「ふふっ世界で1番ね。そりゃあすごい。なら彼のいう通り探しに行かない方がいい。まあまず、どう頑張っても、何があってもあんたらはそこは見つけられないだろうけどね。」
「なんでっすか?あんさんがどこにいるか知ってるんすか!なら、教えてくださいよ。」
男はやれやれ、といった顔をして言った。
「あんたはアスカを信じてるんだろ?なら何故彼の言葉を信じてやらない?彼の言葉を尊重してやらない?
あんたがすべきことは彼が帰ってくるまでの1年間、彼を守れるほど強くなって待つことだけだ。
これは断言できるよ。
まあ、それまでに十分な力をつけられたら彼の居場所を教えてあげてもいいけd…」
「言いましたね!力でもなんでもつけてやりますよ。
さあ、約束っすよ。早く初級になる方法、教えてください。」
ザ・食い気味というような早口なメグに詰め寄られ、男はまたやれやれ、といった顔をして、
「はぁーーーー。せっかちな娘だな。
いいよ、約束だしな。
あんた、“マナの可視化”って知ってるか?」
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