異世界トラックは突然に。
冬野ゆな
プロローグ いざ、異世界転移!
噂を聞いたのは、少し前のことだった。
準備は万端!
思いつく限りの物はリュックに入れてきた。これでいつでもオーケーだ。
……なんの噂かって?
もちろん、異世界に行けるって噂!
赤いナンバープレートのトラックに轢かれると異世界に行ける、という噂は、既に有名なものだった。俺が知った時にはウェブ小説好きの間では笑い話として流れていたけど、誰かに作られたわけじゃなく、実際に存在しているらしい。
何しろそのトラックに轢かれた人間は、その場からそっくりいなくなってしまうらしいのだ。
つまり、転生じゃなくて転移。
よくあるウェブ小説じゃ、トラックに轢かれて死んだあとに転生ってのが多いけど、そのままいなくなってしまうなら、転移に近いんだろう。
そこを間違えると大変なことになる。
スマホも充電器も万端だ。充電器は災害時でも利用できる手回し式だし、現代の農業や医療チート用に活用できる本が一冊。その名も「異世界でチートするための現代知識」! 最近じゃ異世界でチートするための現代知識本が売ってるのがものすっごくありがたい!
有名通販サイトのレビューじゃ、「チート用じゃなくても基本が書かれていて便利」と言われていたので大丈夫だろう。
万が一異世界に行けなくても、本気にしたなんて思われなくて済むようなものばかりだ。
う~ん、できれば赤ちゃんあたりから新規にやり直してみたかったけど、そうなると先にいろいろと知識も仕入れておかないといけないし。
自分が動けるようになるまで時間がかかることを考えると、俺は断然、転移派だ。
名前もしっくりこない名前だと最悪だからな。俺はコウキだから、コウとかが呼びやすいかな? この際いっそレオンハルトとか名乗ってもいいんだけど~!
あとは仲間は女の子を中心にすればハーレム形成ができる。
奴隷制度があるならそこでも出会える確率は高いかも……。
ま、駄女神あたりにチート能力でももらえれば一番!
もちろん自分の中の冷静な自分が、そんなことはあるわけないと首を振っている。
もしかしたらそんな世界観じゃなく、チートもハーレムも無いかもしれない。
それでも魔物を倒すにはどうすればいいかとか、言葉の通じない現地の人間とどうコミュニケーションを取ろうかとか、シミュレーションだけはこれでもかとしてきた。
これで準備が万端じゃないなんて言わせない!
わくわくしないわけがないじゃないか。
そうやって今日もこうして交差点であたりを見ながら待ってるってわけ。
スマホを操作してるふりをして、わざと交差点を渡らずにじっと耐える。そういう人はたまにいるし、他に歩いている人たちもそれほど他人のことを気にしてない。
に、しても。
今日も駄目かなあ。
いくら都市伝説っていったって、そうそう都合良くは……。
そう思って、不意に目を上げた時。
向こうから走ってくるトラックのナンバープレートが、赤くきらりと輝いた。
……きたああああーー!!
ホントに赤いナンバープレートのトラックだっ!
運転席にいる人はよく見えないが、慌ててスマホをリュックにしまい、衝撃を吸収してもらうためにしっかりと背負った。
そうして飛び込むように歩道へと駆ける。
いつでも来いっ、夢の異世界ライフぅぅーーーー!!
――そして衝撃と閃光が俺を襲った。
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