第7話 雨の中、影。

空の向こうへ憎悪を吐き出すと、雨が降った。

それも、豪雨だ。

傘を持っていない僕は、ずぶ濡れになる他なかった。

傘を差し出してくれた人がいた。

見たことのある、けど知らないその人は、何も言わず、僕にその傘を差し出すと、すぐに何処かへ消えた。


その優しさに、僕は体が震え、涙が出そうになった。


僕は愛情というものを知った。

その傘は、僕が昔持っていた傘とよく似ていた。

気づいたら、雨は止み、空には綺麗な虹が架かっていた。

水溜まりには、微笑んだ顔の僕が映る。




あの人は誰だったのだろう。


僕は気づいていないかもしれないが、

僕はその人を知っている。

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