第4話 幻聴と半分こ

生きる事がこんなにもくだらないとは、幼い頃の僕は知らなかった。


発泡酒の空き缶、ヒビの入った灰皿、薄汚れている換気扇。

現実から目を背けてきた僕には、こんなくそったれな今がお似合いらしい。


僕の今の救いは、天井に提げている茶色のロープだ。

これで、いつでも楽に死ねる。




"こんな人生なら自ら終わらせるに相応しい"


誰かが云った。



本当にそうか。

本当に楽に死ねるのか。

否、僕は本当に死にたいのか。

現実から逃げたいだけじゃないのか。

今もそうやって逃げているだけじゃないか。




"早くお前みたいな人間は

消えてなくなってしまえばいい"



誰かが、また云った。



確かに僕の人生はつまらないもんだ。

でもそれは誰の所為なんだ。

自分から進んで物事に取り組もうとしない自分自身の所為じゃないのか。

もっと、もっと、やれる事がある気がする。



"お前みたいな人間、早く死んでしまえ"





うるさい。



これは、僕の声だ。


みるみると見えない影は見えなくなり、僕の体には新しい息が吹き込まれた。




僕はもう少しだけ、生きることにした。

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