65、意図せぬ再会

「……何の話かな? 僕、犯罪者クズにお友達はいないんだけど」

「あんたは忘れてるかもしれねぇけど、俺は覚えてるんだよ!」


 言いながら黒頭巾を取る。ヴェネはメガネの奥で目を細めた。


「もしかして、この間のナンパの時にいた人かな」

「そう、そうだ! あんたが強いって事は分かってる!」

「なるほど……リーダーの子から連絡がつかなくなったから探してくれって頼まれてたんだけど、君の事だろうね。生きてて良かった、と言っていいのかな」


 柔らかな物言いに反し、一言一言が冷ややかに聞こえる。同じ事を感じたのか、男は鼻白みながらも訥々と言葉を紡いだ。


「お、俺だってこんな事になるなんて思わなかったんだよ。気が付いたらあいつらの言う事を聞くしか無くなってて……」

「興味深いね。詳しく話して」


 ウェレイがヴェネの手を借りてふらつきながらも立ち上がる中、男は続けた。


「……最初は、薬のモニターを募集してる、って儲け話だった。超能を一時的に使えるようになるから、どれだけ個人差が出るのかを調べたいって」

「個人差、か。って事は他にも人が集められてたわけだね」


「ああ。社外秘の貴重な薬だから、実験の間は用意した部屋の中でのみ暮らしてもらうって。少しヤバそうかなと思ったけど、金払いも良かったから一応リーダーに連絡してからそいつらに付いて行ったんだ」

「なるほど。で、半軟禁状態にされた、って感じかな」


 ヴェネの言葉に頷く男。


「でもまぁメシも貰えるし、特に不自由は無かった。けど、外と連絡する手段を奪われ、外の情報について知る事も全くできなくなったあたりから、すげぇ不安になった」

「で、今回ようやく出る事を許され模倣犯として動く事になった、と。〝力〟に目覚めて酔っちゃったのかな? 君と一緒に動いていた彼も随分と楽しそうだしね」

「違う! あいつは元々あんな奴じゃなかった!」


 クモの巣に絡まる男を指差し、語気を強める。ヴェネが黙って先を促した。

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