1B-魔法

「先程魔法と申されたが、それは小生達も扱えるのでござるか?」


そういえばそんな事を言っていたな。さっきは興奮してそれどころじゃなかったが。


「勿論使える。その者の性質により、様々な属性に分かれるが、魔力は誰しもが有しておる。


ゆえに全ての者が訓練次第で自在に魔法を扱えるようになる。


そなたも見るにギターを扱うようであるから、この者と同じく冒険者の道を目指すのがよかろう。


どれ、折角であるから、今ここで4人の魔力鑑定を行うとしよう。


鑑定士を連れて参れ。」


国王が指示すると、奥からローブを着た人物が4人現れた。


もし俺が本当に音楽の道を歩めないのであれば、魔力は今後俺が生きる上での死活問題となりそうだ。

せめて魔法だけでも有利なものを得たい。


ローブの人物が俺達に手をかざすと、何やら呪文を唱え始めた。

すると程なくして、体に異変が現れ始めた。


オタクの体には、バチバチと電気が走っている。


美女の体には、メラメラと炎が燃えている。


小太りの体には……おいおいどんだけ汗かきなんだ!?

さっきドラムを叩いてから随分時間が経つが、さっきとは比にならないくらい汗が吹き出しているぞ!?


そして俺の体には……なんだ? 妙に寒気がするぞ?


「どれ。鑑定結果を知らせよ。」


「はっ!ええと……まずは、一番右の者ですが……」


「そういえばまだそなたらの名前を聞いておらぬな。まず右の者から順番に名乗られよ。」


ここに来て自己紹介かよ。まあ実際名前を知らないのも不便だしな。

というより本来は国王が名乗った時に、俺達も名乗るべきだったが、状況を理解するのに精一杯で名乗っている余裕も無かったしな。

とはいってもまだ殆ど状況は掴めていないのだが、とりあえず普通に名乗ることにする。


「小生は岩片 金重(いわかた かねしげ)でござる。姓が岩片で、名が金重でござる。」


「えっと、私は氷室 響子(ひむろ きょうこ)と申します。姓が氷室で、名が響子です。」


「僕は蒼井 律動(あおい りつどう)と言います。姓が蒼井で、名が律動です。」


「俺は石巻 奏太(いしまき そうた)。姓が石巻で、名が奏太だ。」


4人は順に名乗り終えた。


「うむ。では順に鑑定結果を伝えよう。いかかであった?」


国王が鑑定士に尋ねる。


「はっ。金重殿の属性は雷です。」


さっき金重の体に電気が走っていたが、あれが雷属性か。


「続いて、響子殿の属性は火、律動殿の属性は水です。」


律動が大量に汗をかいているように見えたが、あれはどうやら水魔法によるものらしい。

流石にあの量の汗をかいていたら干からびちまうか。


「そして最後に、奏太殿の属性は精霊です。」


精霊?

なんか俺だけ元素っぽくない魔法だな。

さっき寒気がしたのは、精霊によるものなのか?


「この魔法というのはどのように扱うのですか?」


律動が国王に訊ねると、


「それぞれの持つ魔法の属性を思い浮かべ、


自身の体から放出するよう念じると、その通りに魔法が繰り出されます。


威力はその者の持つ魔力と、念じる強さに依存します。」


と、鑑定士が答えた。


なるほど。要するに魔法をイメージするだけで良いのか。

だが俺の精霊魔法は一体何をイメージすれば良いんだ?


「奏太殿の精霊魔法は、妖精を呼び寄せたり、霊魂を憑依する魔法となりますので、呼び寄せる精霊や霊魂をイメージします。」


妖精や霊魂を使って戦うということか?

妖精といってもどんなものだ?

それに霊魂って、死んだ人なら誰でも良いんだろうか。

例えば____


「ただし注意して頂きたいのは、精霊魔法は鍛練しない限り、一度使うと……」


フ○ディ・マーキュリーとか。


ん? 今何か言っ___


俺がフ○ディ・マーキュリーを頭に思い浮かべた瞬間、俺の体はモクモクと謎の白い霧に包まれた___

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