ココロのために

 あーよく寝た。

 せっかくの休日の午後。目を覚まして、しまった昼寝してしまった!!と思うのではなく、「たった今、昼寝を完了しました。」と思った方がいい。まるで、やることリストにもともと書いてあったみたいに。

 その方が、次につながる気がするから。


 それに、よし本気出すぞ!と思ったはずなのに、あれ?全然本気出してないやん……と気づいてガッカリするのではなく、「一体、自分はあと何回、本気を残しているのだろうか……」とワクワクした方がいい。強さがインフレする少年漫画みたいに。その方が絶対良い。

 だって、落ち込んでる暇はないはずだから。


 思い悩むと、心に悪い。

 休日はまたやって来るのだし。

 労働あっての休日。労働、あっての、休日。

 休日は逃げない。逃げるのはいつも自分。

 遠くで聞こえる、蝉の声。


 蒸し暑さに目を覚ますと、いつもの布団。計画通り、昼寝は完了したようだ。洗濯機の中で、干されるべきズボンやパンツがグネグネに絡まってそのままなのを想像すると、なんだか愉快だった。あー干したい。そう思った。というか、ズボンやパンツってどっちもパンツやん。なんてことも一瞬だけ思った。

 本気を出す。と言ったのはつい先週のこと。その前に言ったのはたしか先月だったか。先々月も三カ月前もきっと心の奥では思っていたはず。おいおい、一体僕はあと何回、本気を出したら気が済むんですか?

 あの、すいません。マジであと何回ですか?聞いてるんですけど?あの、あと何回っすか?……、だんまりかいっ!!そーですか。はいはい。……で? で、あと何回??

 なんど聞いても、湿ってグネグネのズボンは答えてはくれず、それどころか「干してくれ」と妙なことを言うので、僕は仕方なく干した。西日が射し込むワンルーム。生き甲斐のサマージャンボが本棚に寄りかかっている。


 ポジティブな思考は、人をどこへも行けなくする呪いではないか。

 楽観してると訳も分からず毎日が早い。

 濃いシワを付けたズボンがカーテンレールで揺れて。ちょっと泣いた。



 ご清聴ありがとうございました。

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