第60話 イヤイヤ期の子供
もうね、イヤイヤ期の子供ってのが面白いんです。二歳から三歳にかけてですかね。
ご近所にいるんです、イヤイヤ期真っ盛りの子。それも大勢いる。お母さんが本当に大変そう。
イヤイヤ期ってのは、それまで親の言うことをそのまま受け入れていた子が、自分の意思を主張し始める時なんですよね。だから成長には必要な時期なんです。
必要だとわかっていても、これ、親的にはムカつきますね。
挨拶代わりに「イヤ」、返事代わりに「イヤ」、否定も肯定も「イヤ」、こうなるとやりたいのかやりたくないのかわからない。
「ご飯食べようね」
「イヤ」
「じゃあ後にしようね」
「イヤ」
「じゃあ食べなくていいよ」
「イヤ」
かと言ってここでお母さんは「どうしたいんじゃ、ワレ! はっきりせんかい!」なんて言いません。
***
今、リアルタイムでお隣さんから「いやや」が聞こえてきます。大阪なので「いやだ」じゃないんです、「いやや」なんです。
これが関東だと「いやだ」の『や』にアクセントが来るんですが、関西は『い』にアクセント。きっちりアタマに強拍が来ます。
お隣さんの子、今、もの考えてないですね。
「いーやーや!」「いーやーや!」を連発してます。何に対して嫌なのかすらわかってないと思われます。
なぜこれを『クラシックファン』で取り上げたかって? これからですぜ。
「いーやーや! いーやーや!」が変わって来たんです。
「嫌や嫌や嫌や嫌や……」
『い』にアクセントなんで、3連符連打になってきました。
いややいややいややいややいやや……
もう如月爆笑。ごめんね、お母さん。
でもそれだけじゃ終わらない。彼は自分が「嫌や」と言ってることを忘れて惰性で喚いているので、既に「嫌や」じゃなくて「いやや」という意味を持たない音の並びを発してるんですね。
その証拠に「や」の数がだんだん怪しくなってきた。
いややいややいやややいややいややや……
四拍子の場所あるで~ってツッコミ入れたい。
しかし、ツッコむ前に完璧な修正が入ってしまった!
いやややいやややいやややいやややいややや……
いやもうフツーに四拍子だよ。てか「いややや」ってなんだよ、意味不明だよ。
かれこれ十五分「いややや」やってます。親も大変だけど、本人は疲れないのかな。凄い大声で喚いてるんですよ、意味のない言葉を。子供をやるってのはエネルギーが要りますね。
で、如月のようなド変態はこの十五分続く「いややや」を聴いていると、伴奏つけちゃうんですよね。いや、フツーつけないだろ。
でも頭にアクセントついてるんですよ? ほら、何かに聞こえてきたでしょう?
ベートーヴェンのトルコ行進曲に!
手がね、エアートライアングル持っちゃいますからね。チーンチーンってね。
子供のイヤイヤ期にうんざりしているお父さんお母さんに教えてあげてください。最悪の場合殴られますが、運が良ければ彼らも心地よく過ごせます、はい。
だってクラシックファンなんだもん!
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