第46話 ああ、勘違い(1)

 第45話でちょっと触れましたカンツォーネ『帰れソレントへ』、中学の音楽の授業で歌いましたよね? あれ? これって年齢バレる発言?


 あれもね、アマルフィ海岸の美しさを歌ったものだけにしときゃー良かったのにね、彼女にフラれた男の歌にしちゃったからね。如月も子供心に「そんな女々しい事言ってるから女に捨てられるんだろ、みっともねえ男だな」とか思ってました。可愛げのないクソガキですね。


 で、まあ、カノジョが『僕』を置いてどっか行っちゃうんですね。多分都会に出たんでしょうね、ナポリあたりでしょうか。

 潮騒を耳にしては彼女の声を思い出し、近くのオレンジ畑から流れて来る甘酸っぱい香りを感じては彼女の笑顔を思い出す……『僕』はいつまでも彼女が忘れられないんですね。

 歌の最後、「帰れソレントへ、帰れよ」と彼女に訴えるわけです。もちろん直接彼女に言っているわけではなく、『僕』の心の叫びなのでしょう、どこまでも女々しい野郎です。


 この歌詞の流れをちゃんと見ていれば「ああ~、これはフラれるわなぁ」ってフツーに納得できるんですが、流れを見ずにその行その行しか見ていないととんでもない勘違いを起こすことになります。


 友人が「失礼なやつだなコイツ」というんですよ、この『僕』のことです。

「帰れソレントへ、帰れよ」ここの部分、嫌いなやつがついて来たんでムカついたから「お前ソレントへ帰れよ! ついてくんなよ!」みたいな歌詞と捉えたんですね。しかもダメ押しの「帰れよ!」までついてる。酷ぇ野郎だ。


 私の「こいつは嫌われるよなぁ」ってのと、友人の「確かにこいつは嫌われるよな」は『嫌われる』という意味では一致してるんですが、途中経過が全く違うという……。

 結論が同じなんで問題は起こらなかったわけですが、なんかこう納得いきませんね。



 だってクラシックファンなんだもん!

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