第39話 メロディそれだけ?

 世の中にはびっくりするような曲がフツーに存在しておりまして。

 みなさんよくご存じの『ボレロ』(ラヴェル)。フィギュアスケートや東急ジルベスターコンサートのカウントダウンでもお馴染みのこの曲ですが……メロディパターンがたったの二つしかないことにお気づきでしょうか。


 パッヘルベルの『カノン』も、たった一つのコード進行で最初から最後まで通すという荒行を成しておりますが、この『ボレロ』も負けていませんよ。

 フルートでスタートするAメロディ、ファゴットでスタートするBメロディ、あとはひたすらスネアのリズム。これだけで構成されてるんだからすごい。


 大体ねー、フツーはcresc.(だんだん大きく)したりdim.(だんだん小さく)したり、accel.(だんだん速く)があったり、G.P.(完全無音)があったりするわけじゃないですか。緩急があってメリハリがあっての音楽じゃないですか。

 この『ボレロ』って曲は最初っから最後までずーっとpoco a poco cresc.(ちょっとずつ大きくしてね!)という指示があるだけ。

 冒頭の一発目から最後の一発までずーっと叩き続けてるスネアドラムの緊張感たるや!

 レスピーギの『ローマ三部作』でお馴染み『ローマの松』第4曲「アッピア街道の松」もね、poco a poco cresc.なんだけどね、クライマックスの辺りで一旦抑え気味にしてそこから一挙に大解放!……てなことをするわけで、『ボレロ』ほど徹底しているわけではないのね。


 それでも聴衆に凄まじい緊張感を持たせて最後までガッツリ聴かせるんだら、ラヴェル只者じゃない。

 まー、おかげさまでスネア叩きは胃炎になるほど追い詰められるんですけどね。


 いいのよいいのよ、どれだけ緊張感があろうとも、聴いていて楽しければそれでいいの。音を楽しむと書いて音楽なんだからさ。



 だってクラシックファンなんだもん!

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