パラサイトの見解

生まれてから、僕のそばにはいつだって

僕の味方で生かしてくれる大きな大きな守護者がいた。


僕の守護者は、大きな愛がある分、僕に求める見返りもすごく大きい。だから、僕は色々な自分の興味を手放して委ねる代わりに、愛を食べてきた。


でも、僕が大人になる今、守護者はその役目を終えようとしている。


これはまずい。


このままでは、僕を優しく守ってくれる存在がいなくなってしまう。今までそんな状況で生きたこともないのに、どうやって生きていけって言うんだ。


誰か、僕をその身に匿って、守ってくれる人はいませんか。

愛のオブラートで包んで、人生の終わりまで運んでくれる人はいませんか。


僕は寄生虫パラサイト


…でも、周りを見ると、皆、僕と同じで、愛を求めるばかり。

需要と供給が一致してない。


だから、求め合うだけの男女の関係は上手くいかないのだろう。

…なんて僕が偉そうに言えたことじゃないか。


______________________________


そう思って、でもやっぱり次の寄生対象が欲しくて生きてた僕だけど、ある時、恐ろしいものと出会った。


何が恐ろしいって、彼の人生。


小さい頃から、守護者に可愛いとも偉いとも褒められず、ただ愛の押し付けの対象として育った子供。それが彼だった。


そんな彼は、自分の進みたい未来を見据えて、冷たく思い雪の下で、こっそりと芽吹きの準備をする種みたいに硬い外面とグダグダな内面を持った不思議な奴だった。


僕は、そんな彼の人生を恐れ、彼を尊敬している。愛を糧とする僕達子供にとって、それを与えられない、間違った方法で強要されることがどんなに辛いのか。どんなに痛いのか。


飢えてるのに、吐き気がするような、感覚。


そんな感覚の中で彼は、息を潜め、現状に失望して生きていたのだ。それなのに、彼は、自分で作れる未来があるということを失念せず、虎視眈々とそれを狙って準備をしているのだ。

どうして、彼に同情できよう。どうして、彼を尊敬せずにいられよう。


僕は、震えた。彼の生き様を考えて、吐き気がした。

次に僕が覚えたのは、圧倒的尊敬と、劣等感。

自分の中で、

「僕に愛を与えて生かしていたのは親で、それは間違ってないし、僕も親も悪くない。」

「その愛をのうのうと甘受していたのはどこのどいつだ。」

と、2つの感情がせめぎ合う。


それから、僕も自分の守護者のことを話した。そうすると、彼は眉尻を下げて言った。

曰く、愛を盾に子供を縛り付けている、と。

曰く、それは愛を不当に押し付けているのと同じだ、と。

曰く、親のエゴというレールを無理やり歩かされているのだ、そこを歩く必要は無いのだ、と。


それを聞いて、僕は思った。

僕の守護者は間違った方法でも与えたが、正しい方法でも、僕に愛をくれた。

だから、僕はやっぱりその分の恩返しを、レールの上を歩くという形で果たさなければならないのだ、と。


そして、僕はこうも思った。

僕が今まで食べてきた愛の分、僕は尊敬すべき友人に愛を差し出そう、と。


僕は、自ら守護者になろうと決めた。

いや、いつでも守護できるように、見守ろうと決めた。彼が、僕の愛に潰されないように、添えておくのだ。

そして、僕が愛の代わりに彼に求める見返りは、

彼が幸せに生きること。


…1つ欲があるとすれば、僕と彼が異性だったなら、需要と供給を一致させてずっと1番でいられたのにってこと。

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