第3話 希望
何分だっただろうか......秋咲は覚悟を決めたような表情で、また白いロープの前に立った。そしてまた首にロープをかけようと──
「待てよ。」
自分で思ったよりも冷たい声が出て一瞬、秋咲がビクッと震えた。
「な、何よ。あんたみたいなやつにこんな顔見られて、もう死ぬしかないの、止めないで。」
澄ました顔で言っているが手が震えている。
「ならどんなやつにならその顔を見せられるんだ?」
「は?あんた何言って───」
「どんなやつにならその泣きっ面を見せてもいいんだって聞いてるんだよ。」
さっきよりもさらに冷たく言い放った。
驚いた顔でこちらを見た後、不満そうな顔をして秋咲は言った。
「そんなの...美少年でお金があって、私よりも運動と勉強が出来て、物事を柔軟に考えられる人に決まってるじゃない。」
決まってるのか..........そんなやつ俺以外にいるのか?
...........?今、え?って思った?まぁ見てなって.....。
「ほう。俺はその条件を満たしてると思うんだがな。」
「は?そんなわけないでしょ。」
「いいやそんなことある。お前来週の模試受けるか?」
「受けるけど、それが何?」
「じゃあその模試の合計点で俺と勝負な。あとお前って確かテニス部だよな。」
「何言ってんの?そんなのあなたが勝てるわけないでしょ!?この前の模試だって──」
「うるせえよ。お前テニス部か?」
遮るようにこう言うと、秋咲はもう何を言っても無駄だとわかったようで呆れた表情で答えた。
「そうよ.....。」
「なら模試の結果発表の日に俺とテニスで勝負な。」
「なんでそんな無駄なことしないといけないの?」
ここで俺は秋咲に条件を突きつけた。
「もしお前が模試とテニスどっちも俺に勝ったらお前の親父の話は俺がなんとかする。俺に勝てなかったら俺と仲良くなれるよう一生努力するんだな。」
「やるわ。」
秋咲の目に希望の光が戻った。
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