第27話 遊園地デート4 パレード

僕が行きたいパレード、難しいです。

これで多分僕が、皆が行きたいところでって言ったら、睨まれる感じですよね。

ここの遊園地は初めて。なので僕は江菜さん達に「検索しても良いかな?」と聞きました。

江菜さん、雪、鈴共に勿論の言葉が来ました。


そして、僕は今スマホを遊園地のサイトに入りパレード欄を閲覧しているところです。


「蓮地さん決まりませんか?」


どのくらい見ていたのか、江菜さんは中々決まらない僕を見兼ねて声をかけてくれました。


「はい、何処のパレードも良さそうなんですよね」


「蓮、それなら今回は皆で決める?」


「うん。そうしようかな。ありがとう、雪」


「うん、どういたしまして」


雪はニコッと嬉しそうにして言いました。


今度、僕が行きたい場所を求められたらちゃんと応えられるようにしよう。


「雪さん何気に好感度上げてきましたね」


「そんなつもり無いよ。蓮、困ってるから最終手段を取っただけ」


「そうですか。ちょっとだけ言いたい事言える雪さんの性格が今羨ましく思いますよ」


「まあそのせいで蓮に対しての気持ちも諦めてたから余り良いとは今は思わないかな」


「でも、その性格のお陰で今蓮地さんを好きな気持ちをもう一度出せているのも事実じゃないかしら。良い時も悪いときもあるけれど雪の性格は良いものだと私も思うわ」


違うよ雪。

雪にそう思わせてしまったのは僕。今となってはどうしようもない事。でも、雪がまた僕に対しての恋心をぶつけるまでに至れたのは江菜さんがいたから。


江菜さんが来てから僕らの周りの歯車が回りだしたんだ。

そして、良くするか悪くするかは僕次第。

頑張らないと。

と、ほんの少し離れた所で会話を聞いていると、


「お兄ちゃん」


鈴が左隣に立って声を掛けました


「どうしたの鈴?」


「ううん。お兄ちゃん自分を責めるような顔してたから、でも大丈夫みたいでよかった」


「顔…出てた」


「うん確りと。江菜さんと雪さんは話してて見えてなかったみたいだけど。私は…ほら妹だから」


「流石僕の妹兼恋愛助っ人だね。心配してくれてありがとう」


ポンと僕は鈴の頭に手を置いて撫でました。

鈴は嬉しそうにしています。昔から鈴は撫でられるのが好きなんですよね。


「助っ人じゃなくて私ももう一度」


「何か言った?」


「え?何も言ってないよ」


気のせいか空耳かな?


「そうだ。何処の行きたいか決まったよ」


「何処お兄ちゃん!」


と、鈴が聞いた後、会話が耳に入ったようで江菜さんと雪もほんの少しの距離を詰め寄りました。


「何処ですか」


「教えて教えて」


「エントランスエリアのパレードに行こうかなって」


「蓮、参考に理由聞いてもいい?」


「大した理由じゃないよ」


「ええ教えてよ」


「そうですよ」


「そうだよ、お兄ちゃん」


「……えっと、新しくスタートを改めてしようかなって……思ったんだ」


「なら、私も江菜にもう一回宣言する。絶対負けない。蓮の恋心は私が掴むから」


「望むところです」


「お兄ちゃんは私のお兄ちゃん!」


と言って鈴は腕に抱きつくと江菜さんと雪が羨ましそうに見て、空いている片腕を取り合って言い争いを始めました。


すると、遊園地でもそんな小競り合いを気に止める周囲の人達が集まってきます。


ここからだとエントランスは遠いから急いで行かないと良い場所取れないのに。


「お兄ちゃん行こ行こ」


と言って鈴は僕を引っ張って行きます。


「鈴、二人が」


「止めてたら埓があかないよ」


「そうだけど。置いていくのは……」


「気持ち分からなくもないけど、パレード見たいなら場所取りしておいて後で連絡すれば良いんじゃ?」


「それもそうか」


「なら、善は急げだよお兄ちゃん」


納得してしまい、僕は鈴に引っ張っていかれながらエントランスエリアに向かいました。

とりあえず、『先に場所取りしておきます』と江菜さんの方にメッセージを送りましたけど、見ててくれてる事を願ってます。


これは、彼氏失格だ。


◇◇◇


お二人がこの場から離れて見えなくなった所で雪が訊ねました。


「行った?」


「…はい、行かれました。そうですか雪も同じ事考えていたんですね」


「私達だけ良い思いをして、鈴奈だけってのは」


「心苦しいですよね……進展しませんよね?」


そういった予感はないのですが、今ではなく先に起きるような、そんな胸騒ぎが。


「まさか、異性見てても鈴奈は本当に妹なんだから」


「ですよね」


〜〜♪

スマホを確認すると画面に『先に場所取りしておきます』と蓮地さんからメッセージが送られてきました。


「蓮地さんが先に取りに行きます、だそうです」


「蓮らしい…それでどうする?」


行きたいのは山々ですが、遠くからでも、見れますし、エントランスエリアでしたら、確かお土産コーナーが豊富にありましたよね。


「終わるまで家族へのお土産を選ぶというのは?」


「良いかも。蓮と鈴奈のも買っておく?」


「リストアップだけして選んで貰った方が良いと思いますよ」


「それもそっか、じゃあ私達も行こっか」


「そうですね」


蓮地さんと鈴奈ちゃんに会わないようにしながら雪とエントランスエリアに向かうことにしました。


「そういえば江菜、口調」


「ゆっくりで」


「それが可愛いのに」


「雪って本当に蓮地さんが好きなんですよね」


「当たり前」


◇◇◇


「お兄ちゃん、これ場所取り難しそうだね」


「だね」


エントランスエリアに着いた僕と鈴の前には既にパレードの場所取りを完了している人で一杯になってました。

鈴の言うとおり難しそうです。

それから暫く鈴と探して、ギリギリ空いているところがありました。でも、


「二人分だね」


「どうしようか」


「もう少し探すって言っても、殆ど探したよ」


そうなんですよね。現状もう殆ど探し終わってるです。

それにもうすぐ始まる時間。


このまま鈴と二人で見るか。二人と合流して遠くから見るか。


その二択を選ぶなら僕は


「鈴「お兄ちゃんこのまま二人じゃ駄目…かな」…」


言葉を遮るように鈴は提案しました。それは僕が選ばなかった方でした。


「合流するのが良いのは私も思う。でも遊園地なんて二人で来るなんて今後あるか分からないし…」


鈴は眉をしかめて、思い悩んだ顔をしていました。

さっきまで僕が言うのはちょっと恥ずかしいですけど、僕絡みで争ったりしてたのに、何だかんだ仲の良いですよね三人。

それでも、僕と二人きりを選んだのはやっぱりまだ…。


「……良いよ。でも、後で江菜さん達に謝ろ」


「うん!」


僕はメッセージを送ってパレードが始まるのを待っていると音楽が流れてきました。


「お兄ちゃん始まったみたい」


「うん」


暫くしてコースに添ってやって来たパレードはまだ日のある時間でスタッフとマスコットキャラ達が豪快で迫力のあるダンスが披露されました。


移動していくと見ていた大勢の人も移動を開始しました。

見る暇なく勢いに添って鈴と僕は押されていく。逆らうとはぐれる可能性があるからです。


「鈴!大丈夫」


「うん、確り握ってるよ」


互いに確り手を握って離れないように流れるまま進んでいくと、入場ゲートの方に出てきました。


「熱ーい」


「はい、水」


「ありがとうお兄ちゃん」


鈴は水を受け取り少しずつ飲んでいきながら飲み干した。


そして、エントランスエリアが落ち着いた頃に戻って江菜さんと雪を探しに戻りました。

それからまた十分、途中メッセージを送ると『エントランスエリアと入場ゲートの間にある最初のお土産コーナーに避難しております』と返ってきて、少し距離が離れていて合流出来たののは人混みもあって5分後でした。あと、何処のエリアも、この遊園地は広いです。そして、僕と鈴は直ぐに頭を下げました


「「すいません!」」


「別に良いよね」


「はい、私達も確保できなくてお土産を見てたくらいですから」


そう言う江菜さんと雪の片手には買ったとされる紙袋がありました。

僕と鈴も母さん達への土産を二人がリストアップしてくれたものを参考にしながら買いに見に行きました。

その中から母さんには定番のクッキーと父さんにはメモ帳を買いました。


「お兄ちゃん、江菜さん、雪さん帰りましょう!」


「帰るのは良いですが、どうしてまだ腕にしがみつかれているのですか」


「はぐれると危ないので…そんな事を言ってる江菜さんも腕にしがみついてますよね」


「両手に華ですなぁ蓮」


「あのぉ動き難いんですけど」


僕は右腕に鈴、左腕に江菜さん、背中に雪、これじゃあ華というより華束。

そして、ずっと無視してきた視線を受けながら駅に向かい、電車に乗りました。


電車に乗って座席に座ると疲れたようで雪と鈴は寝てしまいました。


「寝てしまわれましたね」


「はい…江菜さんすいません。彼氏なのに場所取り優先して」


「まだ気に病んでるのですか?」


「だって…」


「彼氏失格…なんて思ってないですよね」


僕は言い当てられ黙ってしまいました。


「沈黙は是なりです…蓮地さんそれならまた来たときは二人で見ましょ」


「はい」


「ふふ、このままだと約束増える一方ですね」


「頑張ります」


「では、どうぞ」


江菜さんは閉じて座る自分の足をぽんぽんと叩く。

これって膝枕お貸ししますってことでしよな。どうしよ流石に動揺する。

でも何でいきなり。


「どうしてって顔してますね」


「はい」


「頑張ろうとする蓮地さんに癒しを…という訳でどうぞ。あ、周囲の方々を気にするのは無しで」


と、逃げ場を閉ざされ僕は江菜さんの膝に頭を預けました。

膝はとても柔らかくて、それでひんやりとしてて遊園地の中にいて熱かった僕にはとても気持ち良かった……です。

そして、起きた時には目的の駅に着く前でした。


「おはようございます。ぐっすりでしたね」


「はい、とても居心地良かったです」


「そ、そうですか、私も眼福でした。可愛いかったです、蓮地さんの寝顔」


顔が熱い。きっと赤くなってる。


「ふ、二人を早く起こしましょう」


「ふふ、はい」


二人を起こし、駅に到着して僕と鈴と雪は江菜さんと駅で別れる事になりました。


「それでは明日」


「はい、明日」


「明日学校で」


「はい、また」


こうして僕達の遊園地デートが終わりました。

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