第87話 むにゅっとムニュムニュ

 ……目覚ましの音がする。俺はいつもよりも早めのタイマーをセットしていた。


 手に柔らかい感触がある。フワフワしている。寝ぼけながら俺はむにゅむにゅと触りまくる。


 段々と目が覚めてきた。部屋はまだ暗い。手の柔らかい感触には身に覚えがある。そう考えながらもムニュムニュが止まらない。


 しばらくムニュムニュを堪能した。名残惜しいがやめて、頭の近くにある目覚まし時計を探しアラームを止めた。そして目覚まし時計の近くにある照明のリモコンを探し見つけて電気をつけた。


 俺の手の柔らかい感触の正体……それはルナの胸だった。隣には可愛いピンク色のパジャマを着た彼女が寝ていた。


 ん? なぜルナが隣に寝ているんだ? ……ムニュムニュの最中に何となく分かっていたけどさっ。今は夢の中か?


 俺は時計を見た。時刻は五時。目がはっきりと覚めコレは夢ではないと認識した。


 ルナはスヤスヤと寝ている。寝顔が可愛い。


 俺はルナの寝顔に見とれていたが、彼女の体をゆすった。パジャマを着ていても分かる。ルナのたわわなおっぱいがプルンプルン揺れた。


 先程の感触で俺は知っている。ルナは下着をしていない。


「ルナ。おーい、ルナさーん」


「……ん……あと五ふゅんだけ……寝かせてくらさい……」


 ルナはそう言い残してまたスヤスヤと眠った……


 いやいや。五分とか何言ってるの? 不法侵入だよ。何処から入ったの? ……ちっ、寝顔がクッソ可愛い。


 ルナの寝顔の可愛さについつい顔がにやけてしまう。この可愛い寝顔を見たら全てを許せてしまう。


「ルナ、起きて。お願い。今日も学校だから」


「……がっこう……しょれはやしゅんで……わたしとラブラブし……」


 ルナは言いかけて寝てしまった。寝起きが悪いのか?


 ルナをどうやって起こそうか考えていると、彼女は唐突に上半身を起こした。


「……拓海君……おはよう」


 ルナは目を擦りながら俺に挨拶をしてきた。仕草がいちいち可愛い。しかも今はツインテールではない。何故かドキドキする。


「ルナ、おはよう——って、何故俺のベッドにいるんだ? そして何処から入って来た?」


「拓海君と一緒に寝たいなって思って窓から入ったよ」


 ルナは窓を指差した。


 窓⁉︎ 今、ルナは窓って言ったよな? ココは二階だぞ。よじ登ったのか? お前はくノ一か!


「ま、まぁ、気持ちは嬉しいけど、危ないから窓から入らないように。それと一緒に寝たいからって不法侵入しないようにお願いします」


「分かった。拓海君に嫌われたくないから、言われた通りにする」


 そう言ってルナはアヒル口にして俺にアピールしてきた。俺はルナの頭を優しく撫でた。


「ルナ、不法侵入さんにはチューは無し。自分の家に帰りなさい」


「ぶー、ぶー。拓海君のケチ。分かりました。帰りますよーだ」


 ルナは俺に向かってあっかんべーをした。そして何故か窓の方へ向かった。


「拓海君。まったねー」


 そう言ってルナは窓を開けて出て行った。俺は慌てて窓へ駆け寄った。


 俺は体を乗り出し下を見た。ルナの姿がない。外は暗いが全く見えない訳ではない。下を見てルナを探していると、隣の家の二階の部屋に明かりが灯った。そこにはルナが居た。


 は? ルナがもう部屋にいる? 早すぎるだろ? 窓から出て部屋の明かりが付くまでは、ほぼ一瞬だぞ? アイツはマジシャンか!


 俺は不思議な光景に出会ってしまった。でも恐怖は感じなかった。ルナがコチラを見て手を振っている姿を見たからだ。


 どうしてルナはあんなに可愛いんだ? ルナを見ていると全てがどうでも良くなるな。可愛いは無敵だな……


 俺はルナに手を振りその場を離れて制服に着替えて一階に降りた。父さんと母さんはまだ帰ってきていない。


 朝ご飯の支度をして食べ終え、後片付けや身支度も済ませて、テレビを見て少しのんびりした。


 登校時間にはまだ早いが、やる事が無いので家を出て学校へ向かった。


 外は明るくなっている。小雨がパラついている。傘を差して通学路を通った。何事もなく無事に学校に到着した。


 通学路は何事もなかった。だけど校門を過ぎて下駄箱へ向かう途中に凄い光景に出会ってしまった。


 後ろ姿で分かってしまう。俺の前を歩いているのは同じクラスの花澤葵ちゃんだ。ずっと好きだった子だ。


 その花澤葵ちゃんは傘の中にいる。でも一人で傘の中にはいない。隣に学校の制服を着た背の高い男がいる。男子高校生の憧れ、相合い傘の真っ最中だ!


 花澤葵ちゃんの隣にいる人物……そう、完全無欠の最強生徒会長だ。何か話をしている。横顔がチラッと見え生徒会長と分かった。イケメンだ!


 昨日までの俺なら目の前の二人の光景を見て、ショックで引き返していただろう。


 でも今日の俺はひと味もふた味も違う。モテモテの拓海君だ! 二人の事を生暖かい目で見れる。


 いやー。あの二人、初々しいねぇ。青春だねぇ。可愛いねぇ。って、俺はバカか? なに上から目線なんだよ……


 ごめんなさい。上から目線になっちゃいます……てへっ。










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