第57話 決戦終了。そして天使の元へ

 俺は今、自分の部屋のベッドに寝ている。ルナは……


「……拓海君。もう一回……しよ」


 俺にまたがりお腹の上に座っている。リンは俺の横に寝ていたが、体を起こしてベッドの上に女の子座りで座った。


「ルナ、そろそろ終わらないとな。拓海も——こっ、こら、拓海。もう終わりだ。そこを……んっ、さ、触るのは、ダメ……だ」


 リンはベッドから降りて俺から逃げた。


「たしかにリンの言うように終わらないとな。ルナ、降りてくれないか?」


「えー。すっごく気持ち良かったから、もう一回したいけど……仕方ないね」


 ルナも俺から離れてベッドから降りた。俺はベッドの上に座った。


「うー。拓海君の体液で体がベトベトだよ」


「私もだ。拓海はすごいな。何回も出せるとはな」


「初めてだったからかな? 自分でもビックリだよ。まぁ、神々の奇跡の《浄化》を使うと奇麗になるから問題ないよな?」


 ルナとリンは俺の目の前に立っている。俺はルナとリン、二人を相手に、とうとう卒業することができた。俺は幸せな気持ちで満たされている。


「「浄化」」


「俺も、浄化っと」


 俺とルナとリンの体が一瞬光る。体のいろいろなベトベトがなくなる。浄化は髪などの体の表面の不純物を全て取り除き、清潔にしてくれる。


「浄化って便利だよなぁ」


「そうだね。お風呂に入った以上の清潔感に満たされるよね」


「ほほう。拓海も浄化を使えたのだな」


 三人とも汚れ一つもない奇麗な体になった。ベッドはまだ汚れているけど。


「ベッドも凄いことになってるなぁ。ベッドにも浄化っと」


「えっ! 拓海君、英雄王の浄化って、物にも使えるの?」


「そうだよ。物だけではなく、人物にも使えるんだよね」


「それは便利だな。私たちは自分しか浄化できないからな。次からは拓海に浄化してもらおう」


 俺と話をしながら、ルナとリンは床に脱ぎ捨てた自分の服を着ている。俺もベッドから降りて、クローゼットを開けて普段着を出し着替えた。


「拓海君、そのアニメのポスターは何?」


 ルナは、クローゼットに飾っているポスターに気づいたらしく、俺に聞いてきた。


「ん? ああ、これは俺が中二の頃に、レイナさんにサインを書いてもらったポスターだ」


「姉上のサインか。拓海は姉上のファンだったのか」


「そうだよ。昔から、今でもレイナさんのファンだけどね」


 俺はクローゼットを閉めた。慌てずに自然にゆっくりと。


 R十五のエッチな本は処分しないとなぁ。英雄王の奇跡に、武器破壊の《消滅の波動》があるから、それで消そう。


 薄い本だけど丸めたり角を使うと、立派な武器になるから消滅の波動も反応するはず。


 俺の両親は、俺がエッチな本を所持していることは知っている。それでもエッチな本を処分するのは意外と大変。


 俺は英雄王になって良かったと、心底思った。


「それにしても、父上達は遅いな。拓海に手土産を買うのに時間が掛かっているのか?」


 俺は部屋の掛け時計を見た。時刻はお昼の十二時半を過ぎていた。


「俺に手土産?」


「うん。ここの近くの商店街の黒毛和牛ステーキ弁当を買って来るんだって」


「マジか、マジか、マジか! 日曜日限定の十二時からの販売で、大人気だから凄く行列できるぞ。買うの大変なんだけど。それで遅いのか」


 商店街の黒毛和牛ステーキ弁当は最高ランクA5の黒毛和牛サーロインを三百グラム使った高級弁当。値段は税込み四千円。弁当としてはかなり高いが、その値段では他所では絶対に買えない。


「それでパパたちは遅いんだね。でもそのおかげで、拓海君が私の初めてになったから、良かったよぉ」


「私もだ。拓海は優しかったからな。心地良かったぞ」


 ルナとリンとの距離がグッと縮まった気がする。体を重ねたからかな?


 三人とも着替えを終え、俺は閉めていたカーテンを開けた。隣の家が見えるが、カーテンも家具もない空き家になってる。


「そういえば、鈴木さんと斎藤さん。両隣は引っ越したな。もしかして、ルナたちと関係あるとか?」


「うん。関係はあるよ。空いた両隣には、私たちがそれぞれ住む予定だよ」


「私も知らなかったが、拓海の両隣はこちら側の人物で、拓海とご両親を護衛していたらしい」


 気さくでいつも優しい鈴木さん斎藤さんの家族が、ずっと護衛をしていたのか。感謝だな。今度会えたらお礼を言いたいな。


「ところで拓海。終わった直後に言うのもなんだが、ソラのことはどうするつもりだ?」


「どうって?」


「拓海はソラを愛しているな? ソラはお前の愛の告白を待っている。ソラの所へ行け」


「はっ? えっ? なに突然⁉︎ イキナリ過ぎない? それにルナたちの父親が来るんだろ?」


「ソラと父上。拓海はどちらが大事だ?」


 ルナとリンは俺を真剣な表情で見ている。


「えっと、とりあえず座ろうな。それから話そう」


 ルナとリンは床に座った。俺も床に座る。


「拓海、私が言わなくても分かると思うが、ソラはお前のことが——」


「ちょっと待てリン。それは本人が言うことだよな」


「——そうだったな。すまない」


 リンが切ない顔になった。


「いやいや。リンはソラのことを思って言おうとしたんだよな? リンは悪くないからっ、な」


「フフッ。拓海に励まされるとはな」


 ちょ、俺って頼りないのか? まぁ、リンが笑顔になるなら良いか。


「拓海君。私はソラちゃんから相談はされていないけど、ずっと辛かったと思うよ」


「辛かった? どうして?」


「だってソラちゃんは女の子だけど、拓海君の前では男の子の姿だよ……分かるよね?」


 ソラが俺のことを好きなのは、リンとのやり取りで分かってしまった。ルナの言いたいことも、なんとなく分かる。なんとなくだけど。


「……分かった。ソラの所へ行ってくる」


「父上達は待たせて構わない。それに、私の体やコンのこと、拓海が英雄王になったことを説明しておく」


「拓海君。ソラちゃんをゲットしてきなさい。そして拓海君の最後のお嫁さん、第三夫人にしてあげてね」


 俺はルナの言葉に頷いた。クローゼットにある予備の靴を出し、それを履いた。


「ソラは隣町のどこにいるんだ? そういえばスマホは一階のリビングの机に置いたままだったな」


「ソラちゃんは“ホテル古代神の湯”で打ち合わせ中だよ」


「スマホは転移で取りに行くといい。そして転移でさっさとソラの元へ行ってこい!」


 転移で行けって……行けるか分からないはずなのに、リンは勘で言っているな。まぁ、英雄王の転移は、行ったことのない所にも行けるけどさっ。


「じゃあ、行ってくるよ。二人の父親のことは任せた」


 俺は英雄王の奇跡、《隠密》を発動してから転移を使い、部屋からリビング、そして隣町に瞬間移動をした。

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