101話.一触即発?
「お待たせしました、クロムさん。
ダイン王の準備が整いましたので、謁見の間までご案内します」
仲間たちと談笑をしながら待っているクロムの元にタケルがやってきた。
タケルの表情から疲労の色が見えていることに気がついたクロムであったが、この場ではあえてそのことに触れないでいた。
「意外と早かったね、ダイン王がもうちょっと渋るかと思ってたよ」
クロムにとっては悪意のない言葉であったが、タケルには耳の痛い言葉であった。
なぜなら事実ダイン王はクロムに会うことを渋っていたからである。
タケルには理解できない感覚なのであるが、ダイン王はクロムに対して苦手意識をもっているようであった。
タケルはその動揺をクロムに悟られないように注意しながら謁見の間へと案内した。
「悪魔どもへの対応感謝するぞ、クロム」
「それは別にいいさ、俺が望んで行ったことだしな」
「色々と報告を聞きたいところじゃが……
まずは初見の3名の紹介を願おうか」
ダインは表情を曇らせつつも初見である3名の紹介をクロムに迫った。
クロムは自分の仲間としてカルロとルーナを紹介したあと一呼吸置いた、なぜならクロムにもバロンを紹介したときのダイン王の行動は予想できないからであった。
「3人目はバロン。
…… ダイン王よ、とりあえず最後まで話を聞くことを約束してくれ」
「なんじゃ、急に。
その男がワシを怒らせる存在とでもいうのか?」
「可能性は十分にある」
一言だけ前置きしたクロムはバロンこそがミレストンを襲撃した張本人の悪魔であること、クロムとの戦闘の末にクロムの配下になっていることを伝えた。
バロンの正体が悪魔であることを告げた瞬間にこの場は極度の緊張に包まれたが、現在はクロムの配下であると告げたことによりカルロとルーナの緊張が解けたのであった。
バロンの正体に動揺しつつも冷静にその話と状況を見ていたダイン王はそのことを不審に思うのであった。
なぜこの者たちから警戒心や動揺が消えたのかと。
「……クロムよ、一つ質問に答えよ」
「なんだ?」
「そこの2人、カルロとルーナであったか?
なぜその二人はバロンが今はクロムの配下であると聞いた瞬間に緊張が解けたのじゃ?」
「よくそんなところに気づいたな、さすがは獣王様ってところなのかね。
それに関しては俺の秘密に直結する部分でもあるんだが……
今からの交渉の内容を考えたら……
先行投資として先に俺が秘密の一部を教えることとしようか」
クロムは含みのありそうな笑みを浮かべつつ話し始めるのであった、自分の仲間(配下)になるには必ず一つの条件があると。
そしてその条件とはクロムと従属契約を結ぶことであり、その契約は神の恩恵による力を使った契約であることを告げるのだった。
「一度配下になったら、裏切ることは不可能ということか……
えげつないことを強要しよるんじゃな」
軽蔑の感情を隠そうとしないダインに対してクロムは反論した、強制ではないと。
「勘違いするなよ? これは強制じゃないぞ。
仲間になるには必須だけど拒否して仲間にならないことを選んだ場合のデメリットも特にない、しいていうなら俺の仲間になれないことが唯一のデメリットさ」
「断れる状況なのかによる気はするが……
まぁそれはこの場では良いわ。
つまりはその契約がある以上バロンは安全な存在であるという意味なのじゃな?」
「発言失礼します、正確にはクロム殿の仲間にとっては…… ということになるかと思います。
クロム殿の敵対者に私が遠慮する必要は何もありませんからね」
先ほどまで沈黙を続けていたバロンが急に話し始めた内容は過激であった。
自分はクロムの軍門に下ったのであって、人族やこの大陸の生物にとっての友好的な存在になったわけではないということを。
その発言によりこの場を極度の緊張感が再び支配し始め、ダインも徐々に殺気を隠そうとしなくなり始めていた。
「はぁ…… バロン、必要のない挑発はやめてくれ。
ダイン王も落ち着いてくれ、殺気が漏れすぎだぞ」
「そうですよ!
ダイン王もバロン殿も一度落ち着いてください!!
この場は決闘の場ではなく、話し合いの場であるはずです!!」
クロムとタケルの言葉によって、一応の落ち着きをみせることにはなった。
クロムは今の空気が本題を切り出すのに最適なのかどうか
「さて、ダイン王。
そろそろ本題に移っていいか?」
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