65話.新たな力

 カイリが再度展開させた死霊軍団を今度こそ撃破するために、クロムは仲間たちに指示を出した。


 まずはゴランをリーダーとするフォーマンセルを指示する。

ゴラン・ソーマの鬼ペアは特攻隊として先陣を切ること。

ソイソはその二人を追尾して、遊撃隊として二人を補佐すること。

そして後方にビネガが待機して、遠距離攻撃をすること。

 そして残りの4人であるカルロ、ソイソ、アキナ、クロムもフォーマンセルで行動し、カルロ、ソイソを前衛・アキナを中衛・クロムを後衛とした。


 クロムはこのように仲間たちを2組に分けて一気に死霊軍団の殲滅を目指すこととしたのである。

そしてビネガからの質問を契機に作戦が決定していくのであった。


「主、死霊を殲滅させることには同意なのですが……

 あの娘が召喚を続ける限りキリがないのではありませんか?」


「あぁ、その通りだな。

 だから、ゴランたちは1匹でも多くの死霊を消し去ることに集中してくれ。

 俺たちはカイリの元に向かって、あいつを倒す」


 クロムたちの作戦が決まりかけた頃、カイリより声がかかった。


「クロムくん、そろそろ作戦は決まったかな??

 あたし待ちくたびれちゃったよ……」


「そりゃ悪かったな!

 みんなさっきの作戦でいくぞ!!!!」


 クロムの号令によって、まずはゴランたちが飛び出した。

死霊たちは前衛に騎士死霊、中衛に弓死霊、後衛に魔術師死霊という構成である。


 ゴランとソーマが騎士死霊たちと接触するタイミングで二人を弓矢が襲うことになったが、先ほどと完全に同じ展開であるためにこの展開を読み切っていたクロムの風魔術にて弓矢は四散された。

そして、逆にカウンターとしてビネガの炎の嵐が弓死霊たちを襲うこととなる。


 ゴランとソーマが得意の格闘術にて次々と騎士死霊たちをなぎ倒してゆき、その際に生まれる死角をソイソが埋めるという見事な連携にて騎士死霊たちの数を徐々に減らしていった。

そしてその騎士死霊の背後で魔力を溜め込んでいた魔術師死霊は貯めた魔力を放つことなく氷像へと姿を変えていた。

クロムが頃合いを見計らい、火球を放たれる前に氷漬けにしたのである。


 順調にすすんでゆく死霊討伐。

しかしカイリの召喚速度が速すぎるため、死霊の総数が中々減らず、互いに決め手に欠ける膠着状態に入っていた。


そんな中……


 突如、カイリの背後にクロムが姿を現したのである。

突然の出来事に驚いているカイリは、驚いた表情の氷像へとその姿を変貌させることとなった。

そして、魔力供給の絶たれた死霊たちは消滅した。


「え!?

 クロム????

 どういうこと???」


 基本的に近くで行動していたはずのクロムの姿が見えなくなったと思った途端に起きたこの展開にアキナは困惑していた。

そして、疑問に感じたことをクロムに尋ねてみることにしたのだった。


「つい数分前にナビが急に教えてくれたんだけどさ、新しい空間術が使えるようになったらしいんだわ。

 戦闘の真っ最中に受けた説明の上に、結構厳しめの制約がある空間術だったけど、無事に成功してよかったよ」


 呆気にとられた表情を浮かべる仲間たちをよそに、クロムは新しい空間術についての説明を始めるのであった。

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